仕事における「成果」って、なんですか?

今日この記事を通じてみなさんに聞きたいのは、この質問の答えだ。

 

年功序列や終身雇用といった日本ならではの働き方が「古い」と言われ、「結果を出した人が評価される成果主義こそ正義」かのような主張が目立つ今日この頃。

 

あえてわたしは、こう問いたい。

仕事における「成果」って、なんですか?

 

ライターの成果は「記事が読まれた回数」なのか

goo辞書によると、成果とは「あることをして得られたよい結果」という意味らしい。

なんともざっくりとした言葉だ。

 

自分のした行いによってプラスをもたらすこと。仕事でいえば、「利益を生む」という言葉に言い換えられるだろうか。

でもわたしは、いまいち「成果」の実態が掴めないでいる。

「成果主義」といわれてもピンとこないし、「結果を求める」というのもなんだか腹に落ちない。

 

たとえば、ライターであるわたしにとって、「成果」とはなんだろう?

一番に思いつくのは、「どれだけ多くの人に記事を読まれたか」だ。

書く記事が毎回めちゃくちゃ拡散され、ネットニュースで話題となり、SNSのフォロワーもたくさんいる……なんて人は、まぎれもなく売れっ子ライターだろう。

 

でも、「炎上させてたくさんの人に読まれればそれでいいのか?」といえば、そうではないはずだ。

PV(ページビュー、読まれた回数)のために予定通り炎上したとして、それはライターの「成果」として誇っていいものか……。

 

では、「多くの人に共感されること」が、ライターにとっての成果なんだろうか。

たしかに共感される記事はよく読まれる傾向にあるけど、反論を含めたくさんの意見が集まり議論されるような記事だって、高い価値がある。

逆に、あまり拡散されなくともメディアのブランディングに繋がったり、特定の読者のニッチなニーズに応えたりするのであれば、それも「いい記事」だよね。

 

……じゃあ、ライターの「成果」って、なにで測ればいいんだろう?

 

数字では測れない貢献は、なかなか評価されない

わたしのなかでこの疑問が大きくなったのは、フリートライアルでとあるゲームをやったときのことだ。

そのゲームは対人で、相手をたくさんキルしたほうが勝ちという、ありがちなもの。

 

わたしは対人ゲームに不慣れだし、ゲーム内とはいえ相手プレイヤーをキルするのにちょっと抵抗があるから、後方支援にまわることにした。

味方がガンガン攻められるように、アイテムを補給したり回復したり自陣を守ったり、ときには罠を仕掛けたり……。

が、ゲーム終了後の画面では、キル数は当然「0」か、もしくはそれに近い数字が表示される。そりゃそうだよね、敵を倒してないもの。

 

でも、できることは一生懸命やったつもりだ。

多少なりとも勝利に貢献したと思ってるし、少なくとも手を抜いて棒立ちしていたわけではない。

 

それでも数字上は、後方支援でフィールドを駆けずり回ろうが、棒立ちしてようが、「キル0」という結果は同じ。

で、キル数を稼いだ人は「大活躍」したように見える。

 

そこで思ったのだ、「成果ってなんだろう」って。

 

わたしはヘタだから後方支援にいったけど、状況に応じて臨機応変に後方支援にまわるめちゃくちゃうまいプレイヤーだっているよね。

自分でもキルできるけど、チーム全体のためにあえて戦線離脱してアイテムを補充しておく、みたいな人。

 

でも、たとえその人のおかげで勝てたとしても、その人の「キル0」という結果は変わらない。

 

そこで目に見える「キル数」、たとえばライターでいう「PV(ページビュー、何回読まれたか)」のようなものだけが「成果」じゃないよな、と思ったのだ。

もちろんそれだって「成果」ではあるけど、数字では測れない「貢献」って、実はすごく多いんじゃないかなって。

 

損失を出しても「成果」といえる場合もある

わたしが書いた記事がたくさんの人に読まれれば、それはわたしの「成果」といえる。

 

でも、そもそもそのメディア自体にファンがついていたり、有能編集者が目を引くタイトルをつけてくれたりしたからこその数字なわけで。

なんかこう、代表者として「わたしの数字」になったからといって、手柄を独り占め、全部自分のちからで成し遂げた!って顔をするのはちがうよなぁ、と思う。

 

たとえば取引先の人が来社し、重い空気が漂う長い長い会議の末、大きな契約を結べたとする。

それは、契約を勝ち取ったあなたのまぎれもない「成果」だ。

 

でもその契約につながったのは、見やすい資料をつくった後輩や過去のデータをまとめてくれた先輩のアシストのおかげかもしれない。

空気が悪くなったとき全員に暖かいお茶を配り雰囲気を和らげた人のおかげで、議論が破綻せず続いたのかもしれない。

もっといえば、愛想よく会議室に案内した受付係や通りすがりの楽しそうに仕事をしている社員などを見て、取引先の人がその会社に好印象を抱いていたから……なんて可能性もある。

 

ではその人たちの「貢献」は、いったいどうやって「成果」に換算されるのだろう?

だれが、どうやって評価するのだろう?

 

数字で測れる「成果」は目立つけど、その成果につながる「貢献」をした人は、きっと想像以上に多い。

そしてその「貢献」は、きっと想像以上に軽視されている。

……なんて考えはじめたら、「成果ってなんだろう?」という沼にハマってしまったわけ!

 

「成果」を定義するのは、むずかしい。

だから、なんの疑問も持たずに「成果主義」を謡っている人たちを見て、首をかしげてしまうのだ。

 

「成果」を求めるなら、まずその「定義」を考えたい

本の帯やビジネスマン(?)のツイッタープロフィールで、「成果」という言葉をよく見かけるけど、それって具体的になにを指しているんだろう。

 

自分の年収? 会社にもたらした利益?

でもそれっていろんな人の「貢献」があったからこそだよね。それなのに自分だけの手柄かのようにやたらと誇示するのって、どうなんだろう?

 

そうやって他人の「貢献」を軽視して数字をアピールすることが、成果主義なんだろうか?

 

世の中、数字で把握できるものもあれば、そうじゃないものもある。

というか、そうじゃないもののほうが多いと思う。

 

だからこそ査定する側は、日々ウンウンとうなりながらどうにかそれを数値化し、公平に評価しようと試行錯誤するのだろう。

「契約数」「売り上げ」といったものであればすぐに優劣をつけられるが、「部下のマネージメント」「ミスのカバー力」「取引先との関係性構築」などを数値化するのは、とてもむずかしいから。

 

でもそういった「貢献」を評価しないと、だれも「成果にならない作業」をやらなくなってしまう。

だから、「貢献」もちゃんと「成果の一部」として評価しなきゃいけないわけで。

 

ああ、むずかしい!

 

「成果主義」において、「成果」を求めるのは当然だ。

でもそれを求めている人たちは、自分が追いかけている「成果」の正体を、ちゃんと把握しているのだろうか。

自分が成果を出すために多大な「貢献」をしてくれている人たちを、ちゃんと評価しているのだろうか。

 

だから、「成果主義」を謳い「結果を出したものが正義だ」と嘯く人たちに、ぜひこの問いをぶつけてみたい。

仕事における、「成果」とはなんですか?

 

 

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武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 教授
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【著者プロフィール】

名前:雨宮紫苑

91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&写真撮影もやってます。

ハロプロとアニメが好きだけど、オタクっぽい呟きをするとフォロワーが減るのが最近の悩みです。

著書:『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)

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