最近、人間の意志なんて当てにならないなぁ……と思うことが増えてきた。
いや、ざっくり「人間」といってしまうと、強い意志をもって大きなことを成し遂げた人たちに失礼かもしれない。
でもわたしのように、意志が弱くてすぐ楽なほうに流されてしまう人は多いんじゃないだろうか。
意志の弱い人間が意識を変えたって、どうにもならない。
変えるべきは、まず行動なのだ。
「タイマーをオンにすれば、モチベ関係なくやらなきゃって気分になるよ」
少し前から、夫が「毎日30分家事をする」というマイルールを自分に課している。
残業した日でも変わらずに、ちゃんと30分家事をするのだ(主に掃除)。
「もう3か月くらい続いてるよね」と言ったところ、「大事なのはとにかく行動することだから」だと言う。
「今日はどこを片づけよう?と考えずに、タイマーをオンにして目についたものを片づけていく。モチベーションがどうであれ、タイマーを回したら人間『なにかしなきゃ』って気になるから、そうすれば続くよ」と。
なるほど、たしかにそういうものかもしれない。
でもその「続ける」というのが、一番むずかしいんじゃないか?
そう思ったものの、よく考えたら、やらなきゃいけないことをやるのに強い意志は必要ないことに気づいた。
毎朝それなりの時間になったら起きるし、なんやかんや仕事するし、適当にご飯を作る。
モチベに関係なく、「やらなきゃいけない」と認識したら、人間ちゃんとやるものなのだ。
やらない、すぐやめてしまうっていうのは結局のところ、「やらなくてもいい」と思っているからなのだろう。
「やらなくてもいい」という甘えがあるからこそ、その甘えを遠ざけるために、「行動するもっともらしい理由」を求めるわけで。
夫のように、理由づけをせず意志に頼らなければ、「やるべきことだから」と案外かんたんに続くのかもしれない。
意識が変わるのを待っていたらいつまでも行動しない
なにか行動に移すとき、まず思うのは「意識を変えよう」だ。
「『これをやるべき』という強い意志を持ってやり遂げよう」と。
わたしもそう思ってたんだよね、「意識を変えたら行動が変わる」って。
いや、正確にいうと、「行動するためには意識を変えないといけない」だろうか。
そのためにそれっぽい目標を立ててみたり、自分へのご褒美を設定してみたり、習慣化するようにスケジュールを組んでみたり……。
でも結局うまくいかず、投げ出してしまっていた。
きっとそれは、順番が逆だったからなんだ。
「意識を変えたら行動が変わる」のではなく、まず行動を変えるべきだった。
……ということを書いている本があるので、紹介したい。
意識を変えて行動するのではなく、行動を変えることによって意識が変わるのです。
行動をしてみたら変化が起きたことを自覚し、「行動を起こすことに価値がある」という意識に変わるのです。
出典:AI分析でわかった トップ5%社員の習慣AI分析でわかった トップ5%社員の習慣 トップ5%シリーズ
- 越川慎司
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本書では働き方改革に触れており、「組織全員が『働き方改革が必要』と意識が変わるまで待っていたら何年もかかります」と断ったうえで、「半ば強制的に行動の一部だけを変えて、内省によって学びを得」ることがよいとしている。
いやはや、まったくもってそのとおりだ。
意識が変わるのを待っていたら、いつまでたっても現状のまま。まず行動すれば、それによって、しぜんと意識は変わっていく。
「やるべき理由」より「やらなくていい理由」のほうが魅力的
そもそも「意識を変える」とは、それらしい理由を並べて自分を納得させるということだ。
家事の例で言えば、「家が片付いていたほうが居心地がいい」だとか、「着替えが必要だから今日洗濯しなきゃいけない」だとか、「清潔な家だと健康的に生活できる」だとか、そういう理由を並べて「だから掃除しなきゃいけないんだ」と考える。
「こういう理由があるからやるぞ」とモチベを高め、強い意志をもって、行動に移すわけだ。
でもそれって、裏を返せば「今日はそんなに散らかってない」「あしたは休みだし着替えはいらないや」「アレルギーなんてないから平気でしょ」のように、それらしい反論ができてしまう。
わたしのように自分に激甘な人間は、「やるべき理由」で自分を納得させる前に、「やらなくていい理由」を見つけて飛びついちゃうのだ。「じゃあ今日やらなくてもいいよね」と。
やるべき理由を並べて自分を納得させるより、やらなくていい理由を見つけて安心してサボるほうが、圧倒的に楽だから。
だから「意識から変える」なんてのは、強い意志を持って行動できる人のみに許される方法なんだよ。
自分に甘っちょろい人間の意識が変わるのを待ってたら、いつまで経っても、なにもはじまらない。
サボる理由なんていくらでも見つかってしまう
話は変わるが、実は最近、わたしはドイツ語の勉強を再開した。
10年前ドイツに留学していたときは必死に勉強していたのに、大学卒業後移住してフリーライターになってからというもの、まったく勉強しなくなってしまった。
「日常生活でたいして困ってないし、もうドイツ語を勉強する必要ないしなぁ~」と、なんやかんやもう5年以上まったく勉強していなかったのだ。
でも最近ドイツ語能力の著しい低下を感じ、「これはいかん!」と一念発起。
……したのだが、いかんせん腰が重い。
単語帳を開いても、「ほんとにこんな単語使うかなぁ」と思ったり、リスニングのためにニュースを聞いていても、「日本語のニュース見ればわかるしなぁ」と興味をなくしてしまったり。
で、気づいたら「今日は犬の散歩ですごく疲れたから」だとか、「仕事いっぱいしたから」だとか、なにかしら理由を見つけてサボろうとする。
「ドイツにいるならドイツ語をもっと勉強するべき」「将来役に立つときが来る」なんてもっともらしい理由があっても、「でも今日はいいや」が勝ってしまうのだ。
頭で考えて納得してから行動しようとすると、その過程で「やらなくていい理由」を見つけ、それを盾に投げ出してしまう。
怠惰で意志の弱い人間の思考回路なんて、所詮その程度。
だから、夫の言うことが正しいのだ。
「行動する理由を考える必要なんてないんだよ。やればいいんだよ、やればさ」と。
行動すればそれに合わせて考え方も変わっていく
それを夫に言われたとき、
「いやだから、その行動を起こすまでに強い意志が必要なの!」
と反論したくなったが、それ自体がそもそもまちがっているのだ。
行動を起こすのに理由が必要な人は、あれこれ考えてやらなくていい理由を見つけ、結局やらなくなる。現に、わたしがそうだ。
でも、やらなきゃいけないものに対しては、そうじゃない。
いくら眠くても、面倒くさくても、上司がウザくても、だからといって「仕事をやらなくていい」とはならない。
「やらなきゃいけないから」と、モチベや意志にかかわらずにちゃんとやる。
ほら、待ち合わせにしょっちゅう遅刻してくる人でも、大事な会議なら朝早く来るじゃない? それと同じ。
「そういうもの」だと思えば、人間ちゃんとやるんだよね。だいたいは。
だから、ドイツ語の勉強を、することにした。
「この時間にこれくらいの長さでこれをする!」といった学習計画は立てず、「とりあえず毎日なにかしらドイツ語の勉強をする」。
YouTubeでドイツ人ストリーマーの配信を見るのでもいいし、単語帳に3つ単語を書き込むだけでもいい。
仕事の合間にやってもいいし、寝る前にやってもいい。
悪魔が耳元で「今日やらなくたっていいじゃないか」とささやいても、「まぁ単語帳パラ読みくらいはしよう」と、なにかしらの行動で、その誘惑に抗う。意志で抗おうとしてもムダだ、わたしの意志は弱い。
するとどうだろう。
意識がどんどん変わっていくではないか!
日常生活で聞きなれない単語があればメモしておいて、あとで意味を調べよう。
日本で気になったニュースがドイツでどう報道されているか、比較してみよう。
そうやって、考え方がしぜんと「ドイツ語を勉強すること」を前提に変わっていった。
そうすると、勉強もどんどん楽しくなるし、なにもしないと落ち着かなくなってくる。
意識を変えたら行動が変わるんじゃない、行動を変えたら意識が変わるのだ。
行動する理由を考えるな、まず手を動かせ
行動に移すために強い意志が必要だと思ったけど、そうじゃなかった。
「やるべきこと」だと思えば、強い意志なんてなくともちゃんと行動するもの。
だから、理由とかモチベとか関係なく「これをやる」と決めて、それをやればいいだけ。
「行動に移すその第一歩に強い意志が必要」というのは、自分の意志を信用しすぎだ。
それらしい理由が存在すれば、自分がちゃんとやる人間だと思っているんでしょ?
いやいや、そんなことはないよ、残念ながら。
「やるべき立派な理由」より「やらなくてもいい免罪符」を見つけてサボるからね、どうせ。
知ってるんだ、わたしは。だって自分がそうだから。
自分に甘い人間は、四の五の言わずにやれ。
考える前に、手を動かせ。そのあと考えろ。
わたし自身が何度も何度も投げ出してきたから、わかるんだよ。
自分の意志なんてこれっぽっちも信用できないってこと。
「やるべき理由」より「やらなくていい理由」を先に見つけて、言い訳に使うってこと。
ジョギングするって決めたはずなのに、ちょっと雨が降ってるだとか、ジョギング用の靴を持っていないだとか、あした早く起きなきゃ行けないからとか、そうやって後回しにする。
5分でいいから、ちょっと一回り走るだけで、すべてが変わるのに。
だから、とにかく行動せよ。意識は後からついてくる。
行動する理由を考えるな。そうすべきだと思ったら、それはやるべきなんだ。
というわけで今日もドイツ語の勉強、がんばります!
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
【著者プロフィール】
名前:雨宮紫苑
91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&
ハロプロとアニメが好きだけど、
著書:『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)
日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち (新潮新書)
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ブログ:『雨宮の迷走ニュース』
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