この記事で書きたいことは、大体以下のようなことです。
・育児において、「安価で、安心して子どもを遊ばせられる屋内児童施設」は大変貴重であり、育児のし易さにも直結します
・ところが、コロナ禍の影響もあり、昨今屋内型の公共児童施設が数を減らしています。特に大型児童施設の閉鎖が残念です
・「遊び場」特に「屋内の遊び場」という要素は、その重要性の割に、少子化対策の中でも二の次三の次にされがちな印象を受けます
・新型コロナウィルスの影響が低減しつつある昨今、屋内遊び場の拡充についてもうちょっとご検討いただけないでしょうか
以上です。よろしくお願いします。
さて、書きたいことは最初に全部書いてしまったので、後はざっくばらんにいきましょう。
皆さん、昔渋谷にあった「東京都児童会館」ってご存知ですか?
地上5階・地下1階、アスレチックから人体を模した迷路から図書コーナーから、一輪車で遊べる屋上広場やら楽器が触れる音楽スタジオまで、とにかく子どもが目いっぱい楽しめる施設がたっぷり詰まった、ものすごーーく楽しく、かつありがたい施設だったんです。長男が小さい頃は相当通いつめました。
特に巨大人体迷路が超絶よく出来ていまして、寝転がった人間を模した木製の迷路なんですけど、隠れるトンネルもあれば口や喉を模した滑り台なんかもあり、幼かった長男がキャッキャ大喜びして、うっかりすると数時間平気でかじりついてたんですよ。アスレチックも音楽スタジオも超楽しくって、マジで一日中遊んでました。
こういう屋内型児童施設って、親にとっても様々なメリットがありまして、
・目を離せる訳ではないとはいえ、多少気を抜いてもある程度安全に幼児を遊ばせることが出来る
・天候を選ばず、大雨でも雪でも猛暑でも子どもを連れていける
・熱中症や虫刺されなどの心配も比較的少ない
・基本的に育児利用者と施設関係者しかいないので、周囲に気を遣う必要が比較的少ない
この辺はただの「公園」にはない強みだと思うのですよね。
育児ご経験者ならお分かりかと思うんですが、「公園で遊ばせる」って結構親にとっても大変なことではあるんですよ。
子どもは楽しんでいるとガチで周囲に気を使わない、KOFの暴走庵みたいな存在になるので、どこで何をし始めるか分からず、マジで注意を怠ることが出来ません。
ほっとくと公園の外に飛び出すかも知れないし、砂場の砂を食べ始めるかも知れませんし、周囲数メートルに水飲み場の水を撒き始めるかも知れません。
あずまやの屋根や公衆トイレの屋根の上に登って飛び降り始めることもないとはいえません(全部しんざき自身の幼少時代の経験による)
もちろん屋内遊戯施設だって「危ない箇所」が存在しない訳ではないですし、他の子どもと衝突することだってあり得るので目を離せるわけでもないのですが、少なくとも「子どもが遊ぶ為」に最適化された空間ではあるので、一歩踏み出せば車がビュンビュン走っている道路が控えている公園よりは、だいぶ注意力を割かれないんですよ。
熱中症の心配が(屋外よりは)少ない、というだけでも正直めっっっちゃ助かりますもん。
また、公園って元より誰でも入れる公共スペースですから、もちろん色々ご迷惑をかけないようにも気を遣うし、不審者がいないかどうかとかもやっぱ気にかかるわけです。
「安心して遊ばせられるインフラ」の存在って、親にとってものすごーーーく大きいんですよ。
それに加えて、「近所の公園」では実現出来ないメリットとして、「「お出かけ」の対象となり、親にとっても息が抜けるタイミングとなる」という点も大きかったと思います。
やっぱり、行動範囲が自宅や自宅周辺に限られる、って、精神的にも煮詰まってきますし、親としての余裕も削られていくものなんですよ。
そもそも「家」というインフラは、子どもがめいっぱい運動しやすいようには出来ていません。マンションや集合住宅なら尚のこと、騒音にだって気を遣わないといけない。
それに、親だって人間なので、時にはお出かけもしたいし普段と違う景色だって観たい。
公共の屋内児童施設って、利用料金が極めて安価なことも重要なポイントなんですよね。
「キドキド(ボーネルンド)」とか「アソボーノ」とかの民間の遊戯施設ももちろん超楽しいし上記のようなメリットも享受出来るのですが、
やっぱ利用料金はそれなりにかかってしまうもので、子ども二人も連れてって一日遊ばせたら、簡単に五千円六千円飛んじゃうわけです。食事代まで加えたらあっさり一万円に乗る。
正直、そこまでお手軽に行けるものではないですよね。
そういう意味で、東京都児童会館は、「東京都」の名前がつく通り、決して渋谷区の住人だけがメリットを享受する施設ではなく、大げさに言えば都民の重要な育児インフラだったと思うんです。
子どもの仕事は「遊ぶ」ことなので、その仕事をどれだけ子どもにさせやすいか、というのが、育児をする上で非常に重要なポイントの一つである、という点についてはご賛同いただけるのではないかと思います。
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ところが、この東京都児童会館、2012年に建物の老朽化に伴って閉鎖されてしまいました。
その後、近隣にあった、同じく子ども大喜び施設だった「子どもの城」も2015年に閉鎖され、そして今回、「東京都が改修を断念した」というニュースが流れました。
正直これ、滅茶苦茶残念だなーと思ったんですよね。東京都児童会館に続いて、子どもの城もダメだったかあ、と。
もちろん、コロナの影響、という話はあります。屋内で子どもを遊ばせればどうあがいたって密になりますし、マスクをつけさせるにも限界があるでしょう。
コロナが猛威を振るっていた時点の話であれば、屋内施設なんてとんでもない、という話になるのは分かります。
ただ、それだけに、ここ数年は「ろくに外にも連れていけないで、下手をすると親自身外出出来ない状況で、欲求不満の子どもたちとずーーっと自宅で向き合わないといけない」というのがどれだけのストレスになっていたか、というのも想い起されるんですよね。
親も子どももストレスをため込む状況が、育児にどの程度の悪影響を与えるか、というのは推して知るべしです。
となれば、コロナの影響もある程度低減してきた昨今、「屋内児童施設の重要性」というものについてもぼちぼち語っていっていいと思うんですよ。
ところで、東京都福祉保健局が公開している、こんな資料があります。
こちらの「公立小学校数と児童館数の推移(平成18年度~令和2年度)」を見ていただけると、
児童館の数が年々右肩下がりになっているのが分かります。
しかもこれ、「新型コロナウイルス感染症の影響により令和 3年3月31日現在臨時休止していた児童館については含んでいる」数字なので、近所の休館中の児童館を除外すると更に数は減ります。
恐らく、メンテなどの為にこのまま再開しないか、用途が変更されてしまう児童館も出てくるでしょう。
これも立派な、かつ深刻な、「コロナによるダメージの爪跡」の一つだと思うんですよね。
少子化なんだから仕方ないんじゃない?利用者も減ってるだろうし…というとさにあらず、都内公立小学校の1~3年生の数、つまり児童館を使う児童のボリュームゾーンの人数推移をみていると、むしろ平成25年以降は右肩上がりなんです。
もちろんこれはこれで、東京への一極集中の話もあれば、今後もずっと継続して増え続けるわけでもないとはいえ、「都内の子どもの数は増えているのに、屋内遊戯施設は減り続けている」という事情は見てとっていただけると思います。
肌感としても、都内は「屋内で安心して子どもを遊ばせられる場所が少なすぎる」とは感じます。
近隣の児童館も時間によってはやたら混んでまして、ただでさえ「過密過ぎんか?」と感じていたところ、それがコロナで根こそぎ入れなくなってしまったので、あの子どもたちの鬱憤が今どこに溜まっているのか、と考えると空恐ろしさすら感じます。
となると、まあ個別の事情として子どもの城が再開されないのはもう仕方ないとはいえ、屋内型児童施設の拡充についてはもうちょっとどうにかなりませんか、この辺争点にした議論とか盛り上がらないものですかねえ、と思うところ大なんですよ。
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個人的な「子どもの城」についての思い出について言えば、もちろん遊戯施設として滅茶苦茶楽しかったという記憶もさることながら、「青山円形劇場」の存在も非常に大きかったなあ、と思います。
文字通り円形の劇場で、中心にある丸いステージを周囲から見るという珍しい構造になっていて、これまたすげー面白かったんですよ。
「演者さんの挙動を色んな角度から見ることが出来る」という点では、他にはない価値がある劇場だったのではないかと思いまして、次女が現在この世界に入りつつあるので、今こそ青山円形劇場に連れてってあげたかったなーとも思います。
「児童施設に併設して劇場がある」というコンセプトも素晴らしかったと思うんですよね。円形劇場だけでもどうにかならないかなあ。
もちろん優先順というものは世の中にあるもので、「子どもの遊び場よりもっと優先するべきことがあるだろ」と言われればそれはおっしゃる通りなんですが、とはいえ少子化対策というものも負けず劣らず重要なテーマではあり、その中のテーマの一つとして「屋内の遊び場」というものもある、と。
その辺把握いただけると大変ありがたいなあ、と思う次第なのです。
今日書きたいことはそれくらいです。
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【著者プロフィール】
著者名:しんざき
SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。
レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。
ブログ:不倒城
Photo by yoppy