この記事で書きたいことは以下の通りです。

 

・本は何も考えずに読んで楽しめばいいし、感想があるなら感じたままに書けばいい

・とはいえ、「何かを出力する」ことを考えながら本を読むと、より内容が頭に入りやすいし、色々と得をするのも確か

・幾つか自分の「キーワード」を決めておいて、そこをトリガーにして自分の土俵に引っ張りこむというやり方が出力しやすい

・自分が読む速度を大体把握しておいて、「目が滑った個所」をチェックしておくのも有効

・作者の「強調のクセ」を見つけられれば、その本のポイントは大体分かる

 

よろしくお願いします。

さて、書きたいことは最初に全部書いてしまったので、後はざっくばらんにいきましょう。

 

***

 

皆さん、本読んでますか? どんな本読みますか?

 

しんざきの読書傾向は雑食なんですが、古めの海外SFと漫画とDB関連の技術書を読む機会が比較的多く、最近はヴァン・ヴォークトという人の「目的地アルファ・ケンタウリ」というめちゃ古いSF小説を読みました。

色々面白かったんですが、その点はまたいずれ。

 

まず前提として、それが技術書だろうがラノベだろうがSFだろうが漫画だろうが、本はそもそも楽しんで読むものですし、楽しむ上で「こう読むべき」ということはありません。

台詞だけざーっと斜め読みするも良し、頭からっぽにして夢詰め込むも良し、逆立ちでブレイクスパイラルしながら読解しても良し。楽しめればなんでもいいんです。

 

これは漫画でも娯楽小説でも学術書でも同じことで、たとえ真面目な本であっても、何かしら「楽しむ」要素を見つけないと身につくもんも身につかない、と私は思っています。楽しんだもん勝ちです。

 

ただ、本を「楽しむ」上では邪道なんですが、「読んだ後何かを出力する為に読む」という読み方もあって、そこには人によって異なる幾つかのノウハウが存在します。

出力するものはなんでも構わないんです。ブログの記事でも、amazonのレビューでも、読書メモでも、廃屋に残された壁の血文字でも構いません。

 

「読んで、何かを出力する」という行為には幾つかのメリットがありまして、

 

・ただ「読む」よりも内容が整理されて頭に入りやすく、理解度が上がる

・自分が出力したものを読み直すことによって、読んだ記憶や知識が頭に定着する

・出力する上で、自分でも気付いていなかったその本の魅力に気付きやすい

・「いいぞ!」と思った本を他人におススメする際に使える

・ブログや読書感想文にもそのまま流用出来る

 

いいことづくめですよね。ちょっと邪念が混じってる気もしますけど。

 

まず、当たり前のこととして、「読む」時と「書く」時って思考の方法も思考のレベルもまるで違うんですよ。

 

「読んだ本について何かを書く」というのは、「その本に書いてあることについて、自分の言葉で言い直す」ということに他なりません。

他人の言葉をただ受け取るのではなく、自分の言葉にしないといけない。

 

当然、本の内容について、ただ「何を言っているかは分かる」という地点よりもだいぶ奥まで読み込まないといけないですし、更にそれを整理して言語化しなくてはいけません。

そうなると当然、内容をきちんと整理して脳内に納める必要がありますし、出力した内容はそのまま脳内の思考履歴になります。

それを自分自身で読み直すことによって、読んだ時の思考を再体験出来て、より明確に本の内容が頭に定着する。

 

自分の感想文読んで「うむ……いい本だったよなあ……」ってなったことありません?あれです。

 

更に、「何を出力するか考えながら読む」ということになると、かなり細かく内容について確認することになりますので、「あ、こんなことも書いてあったじゃん」「気付かなかったけどこれこういう意味じゃん」という体験もすることが出来ます。

ざっと読んだだけでは気付かなかった隠れキャラを見つけ出すことが出来る。これも精読の醍醐味ですよね。

 

まあこの辺は、例えば読書日記をつけている人なら皆知っていることだとは思いますが。

とはいえ個々人のノウハウというものについては意外と読む機会が少ないので、何かの参考になるかも知れないので書いてみよう、と思った次第です。

 

***

 

ここからは、しんざきが「何かを出力する」ということを意識しながら本を読む時、脳内でどんなことをしているかを簡単に書かせていただきます。

 

本のジャンルによって多少変わると思いますが、大体は汎用的に使ってます。

「こう読むべき」という話ではないですし、飽くまでしんざきのやり方であって、適合するかどうかは人によると思いますのでご了承ください。

 

まずひとつ。これは鉄板と言っていいんですが、「キーワードを幾つかもっておいて、そこをトリガーにして自分の土俵に引っ張り込む」という手法があります。

 

この場合の「キーワード」というのは、要は「これについてならよく知ってる」とか、「こういう言葉が出てくると面白いと感じることが多い」とか、「この展開、以前も刺さった」といった言葉です。

それを自覚しておいて、その言葉や展開が来たらそこに注目する。罠を張っておく、という考え方に近いです。

 

例えば。

しんざきが良く使う言葉に「「まさか」のカタルシス」と「「さすが」のカタルシス」というものがあるんですが、これは私にとってある種の「キーワード」でして、本を読んでいる時にこれに引っかかると「おっ、来た」と思うポイントです。

 

「まさか」のカタルシスというのは、要は逆転の気持ちよさです。

主人公が大ピンチから大逆転する。最初は評価が低かったキャラクターが、「まさか」というような活躍によって周囲にその価値を認められる。気持ちいいですよね。

 

「さすが」のカタルシスというのは、要は期待感が裏付けられる気持ち良さです。

「こいつは強いぞ」「こいつは最強だぞ」という設定のキャラクターが、読者の期待通りの大活躍をする。周囲に「さすが〇〇だ……!」と感嘆させる。気持ちいいですよね。

 

私は、この「まさか」と「さすが」の二つのカタルシス展開と、その配分・組み合わせについて「面白い!」「この作者さん、上手い!」と感じることが多いので、この二つをある種の「キーワード」にしています。

 

この二つに該当するような展開が出てきた時、「これは「まさか」の分量が多いけど、「さすが」の要素も程よく絡めてあって読んでて気持ちいいなあ……」といったことを考えますし、他の作品の「まさか」と「さすが」と比較して、どこがどういう風に違うかな、と考えたりします。

 

これは要するに、私が「まさか」と「さすが」というひとつの得意分野を持っていて、作品がそれに該当したらそこに引っ張り込んで考えている、ということです。

自分に元々ある知識や経験と紐づけて作品を読むと、内容も入ってきやすいし、比較検討から色んなことが出力しやすいんですよ。

 

こういったキーワードは他にも、ジャンル問わず色々あります。

例えば「データの見える化」とか「BI(ビジネスインテリジェンス)」いった言葉が出てきたら、「この作者さんは、見える化という言葉を具体的にどういう意味で使っているのか?」とか、これは単なるバズワードとして使っているんじゃないか?とか、こんな意味で使うこともあるのか……!といった意外性に気付くとか。

ACIDって書いてあって「なんでいきなりトランザクション……?」と思ったらacid(酸)の話だったりとか。

 

まあ細かく書いてるととても書き切れないんですが、「キーワード」を決めた上で、そのキーワードを明確に意識して本を読むと出力もしやすくなりますよ、という話でした。

 

***

 

もうひとつしんざきが意識している点として、「目がすべる」という現象とそのポイントの把握、というものがあります。

「目がすべる」というのは、大体「一回読んだだけでは頭に入ってこないところ」です。

一読しただけでは内容が理解出来ないので、何度か読み直さないといけない箇所。

 

その「内容が理解出来ない」には、何かしらの理由がある筈です。

 

単に書いてあることが複雑で分かりにくいだけなのか?何かしら前提となる知識が必要で、自分にそれが欠けているのか?あるいは、もう少し前の部分で何かを読み落としていて、文脈が繋がっていないのか?何か変わった表現がされているのか?もしかすると執筆している人の書き方が悪いのか?

 

ここを出発点にすると、自分にとって色んなことが分かります。

無知の知ではないですが、「分からない」ということもひとつの気付きです。

もしかするとここから、自分が知らなかった新しい知識を手に入れられるかも知れないし、本を批判的に読む端緒にもなるかも知れません。

 

これもまた、「出力」のトリガーになるんですよね。

「ここが分かりにくかった」「それをどう解決した」というのも、本との対話において非常に大きな経験ですし、それを出力することには大いに意味があります。

 

単純に「目が滑った」ということですぐに「あ、ここ分かりにくい」と自覚・整理出来る人ならなんの問題もないんですが、しんざきはそんなに頭が良くないので、読む時間を測ったりしています。

ジャンルごとに大体「自分がどれくらいのスピードで本を読めるか」は分かるものなので、「あ、このページ、なんか読み終わるまでに時間がかかった」となったらそこをチェックしておくのですね。

 

「何回か目が滑った箇所」ということを覚えておけば、後でじっくり読み直して、「滑った原因」「滑り処」を明確に整理してその要因を追求出来る、という話です。

 

***

 

あと、これは誰でもやっていることかも知れないですが、執筆者さんの「強調の癖」というものを探しながら読むというのも楽しいですし、有用です。

小説でも啓発書でも技術書でも漫画でも、なんならブログの記事でも同じなんですが、書いてる人って当然「書きたいポイント」を持っていますし、それをどう表現するかのノウハウも持っているんですよね。

 

どう書けば「ここがポイントだぞ!」と読者に伝えられるか、ということを考えながら書いている。どんな人でもそうだと思います。

 

例えば、何か言いたいことの前に改行を挟むかも知れないし、鍵括弧の頻度が急に増えるかも知れないし、台詞がない表情だけの大ゴマが入るかも知れないし、集中線と一緒に「ドン!!!」と効果音が入るかも知れない。

この辺は作品様々、作者様々、ジャンル様々なので当然一概には言えないんですが。

 

で、

 

「この人はどういうやり方で「強調」をすることが多いのかな?」

「そのやり方から外れることはあるのかな?」

「外れたとしたら、その意図はなんだろう?」

 

といったことを考えながら読むと、ただ「本のポイント」を掴みやすいだけではなく、その作者さんの表現上の意図にまで思いを馳せることが出来るし、その作者さんの他の作品でも比較しながら読むことが出来る。

同じ「強調したい」ポイントであっても、一方は派手に「ここだー!」と見せてくるかも知れないし、もう一方は静かに「気付く人だけ気付いてよ」という書き方をしているかも知れない。

 

その辺に注目することで、作者さんの手法を考えることも「出力する」ことに寄与しますよね、という話なわけです。

 

***

 

ということで、しんざきの「何かを出力する為の本の読み方」についてつらつらと書いてきました。

念のための繰り返しですが、上記は「こう読むべき」という話ではありません。

 

最初に書いた通り、本は楽しんだもの勝ちであって、「出力することを意識して本を読んだ方がいい」とすら私は思いません。

むしろ「出力する為」という読み方は、純粋に本を楽しむ上では邪道かも知れない、とすら思っています。

ただ、その上で、「出力する為」に本を読むということを否定する訳でももちろんなくって、私はこういうやり方をしています、というひとつの例が上記の文章だ、とご理解いただけると大変幸いです。よろしくお願いします。

 

ちなみに、長男が中学に入ってから、読書感想文について「こういうやり方もあるよ」という程度に教えてみたんですが、そこから相当すらすらと感想文が書けるようになった様子で、刺さったのは良かったなあと思う一方、悪いやり方を教えてしまったかなあとも心配する次第なのです。まあ大丈夫だと思うけど。

 

今日書きたいことはそれくらいです。

 

 

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(2024/3/26更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

ブログ:不倒城

Photo by Johnny McClung