「おひとりさまの教祖」と呼ばれる上野千鶴子氏が実は結婚していたと報じられ、SNSを中心に今も騒ぎが収まらない。
それもそのはずで、同氏は「結婚は奴隷契約」「なぜ恋愛と性の自由を放棄して結婚などするのか」と、婚姻制度そのものを厳しく攻撃してきた過去があるからだ。
ツイッターで上野氏に関するハッシュタグを検索してみると、著名人から一般人まで幅広く、攻撃的な言葉で同氏を批判するものが目立つ。
おひとりさまの生き方について本を書いて「結婚という制度がイヤ」と公言してきた上野千鶴子さんが結婚してた。
嘘を書いて本にして情弱からお金を取ってたわけですね。いやはや。。。https://t.co/V6gHbSTj0j
>独身を貫く上野氏は“おひとりさまの教祖”として女性たちから絶大な人気を誇ってきた。— ひろゆき (@hirox246) February 21, 2023
上野千鶴子氏の様な二枚舌の嘘つきを招聘し、若い人に家族解体、社会規範の破壊というマルクス主義のメッセージを送り続けた大学やメディアの罪は重い
彼女は他人には結婚は悪だと解きつつ自分はちゃっかり伝統的婚姻。ただの嘘つき
ヤク中で生活がめちゃくちゃな自己啓発本の著者と変わりませんよ
— May_Roma めいろま 谷本真由美 (@May_Roma) February 22, 2023
上野氏は、感情的な言葉を敢えて選び、フェミニズムの立場から情報発信を繰り返してきた人だ。
そのため、言行一致しないように見える選択が批判されることに、違和感はない。
異なる価値観の生き方を選んだ女性を傷つけるような言葉選びも、共感できると思ったことは正直ほとんどない。
しかしその上で、今回のこの“言行不一致”について、
「この人って、実はすごい人なのではないだろうか…」
と、考えを改めている。
さらに言えば、このような人物こそが今の日本には必要なのではないのかとも。
「全くわかりません…」
話は変わるが、「日本はなぜロシアとの戦争に勝てたのか」と聞かれたら、何と答えるだろうか。
日露戦争の開戦前、両国には比較にならないほどの国力・軍事力の差があり、当の日本政府も軍部すら勝てると考えていなかった。
実際、1904年2月の御前会議でロシアとの国交断絶が決定されると、伊藤博文は直ちに金子堅太郎・貴族院議員を呼び寄せ、米国大統領ルーズベルトに調停工作を依頼する特命を与えたほどだ。
故・アントニオ猪木氏にビンタされそうな話であるが、
「やる前から勝てないと思っています」
と考え、そして世界中がロシアの勝ちを疑いもせずに始まった戦争ということである。
人によっては、日英同盟にともなう英国からの軍事協力こそ、日本の勝因だと考えるだろう。
大山巌や東郷平八郎といった、陸海の優れた指揮官のリーダーシップを勝因とする人もいるかも知れない。
そしておそらく、後世の私たちが思いつくその全てが勝因である。
しかしそんな中で、“明石元二郎の活躍こそが日本の勝因”と考える人は、果たしてどれだけいるだろうか。
勝因として挙げるどころか、名前すら知らない人がほとんどではないだろうか。
それもそのはずで、明石の活躍は日露戦争に関する日本軍の記録にも、全くみられない。
日本がロシアに派遣し、日露開戦後には欧州各地を拠点にロシアの内部破壊工作に“暗躍”したスパイだからだ。
少し詳しくお話したい。
日露の関係が悪化する中、陸軍大佐だった明石はロシアの首都・サンクトペテルブルクに駐在武官として派遣される。
そして情報収集に加え、反政府勢力を煽り政情を不安定化させる特殊任務を与えられることになった。
しかしこの明石、一般に私たちが思うようなカッコいい切れ者スパイのイメージとは、相当かけ離れた人物である。
幼少の頃はいつも鼻水や涎(よだれ)を垂らし、「洟(はな)垂れ」とあだ名されるほど小汚い少年だった。
それは規律や身なりを厳しく指導される軍人になってからも変わらず、海外要人との食事中に衣服に飯粒がついていても飲み物をこぼしても無頓着で、全く意に介さなかったと伝えられるほどである。
そんなこともあるのだろう。
明石は駐在武官、すなわち国家公認のスパイとして各国に派遣されても、警戒されることはなかった。
どこからどうみても無能にしか見えず、有り体に言って“バカと思われていた”からである。
実際に、こんなエピソードがある。
日露の開戦前、ある国際的なレセプションでドイツ軍の士官が明石に話しかけることがあった。
「貴官は何語を話せますか?」
「フランス語がやっとです…」
フランス語で答える明石だが、たどたどしく、外国語が苦手であるように振る舞う。
すると士官は重ねて尋ねる。
「ドイツ語は話せますか?」
「全くわかりません…」
するとその士官はすっかり安心してしまい、傍らにいるロシア軍の士官とドイツ語で話し始めてしまった。
もはやおわかりだろうが、実は明石はフランス語だけでなく、ドイツ語にも長けていた。
そのため両者の会話に耳をそば立て、その内容を一言一句聞き漏らすことなどなかったのである。
その内容にはロシア軍に関する機密情報も含まれていたというのだから、明石がどれほど「バカにみえたか」想像がつくのではないだろうか。
考えても見てほしいのだが、やる気が感じられず、意思の強さも眼力も全く感じさせない小汚いオッサンがボーッとしていたら、どう思われるだろう。
適当に挨拶し、社交辞令であしらい、警戒など全くしないのではないだろうか。
しかし明石は、幼少の頃からその頭脳明晰さを買われ、福岡県令(知事)だった渡辺清が養子として迎えたいと母親に申し入れたほどの神童だった。
陸軍大学校でも、同期で数名しか与えられない参謀資格を得て卒業するほどの、とんでもないキレ者である。
そんな男が、どこからどう見ても “バカ”にしか見えず、能力のかけらも政治的意図も感じさせずに群衆に紛れているのである。
これほど恐ろしいスパイはないだろう。
そして実際に明石は日露戦争中、100万円(現在の価値で数百億円)もの莫大な予算を国家から与えられ、ロシア反政府勢力と接触を続け資金を支援し、政情を不安定化することに成功する。
それが「血の日曜日事件」など様々な社会運動の伏線になり、やがて1917年のロシア革命にまで繋がっていくことになるのは、ご存知のとおりだ。
戦争とは、現在のロシアがそうであるように国民の指導者に対する支持が維持されている限りは、どれだけ負けが込んでも敗れるものではない。
しかし一度、国民からの支持を失い国内政治が不安定化すると、指導者は容易に継戦の意志を失ってしまう。
実際にロシア皇帝のニコライ二世は、奉天会戦で破れ、日本海海戦で海軍が全滅したにもかかわらずなお、日本と戦うことを諦めなかった。
しかし最終的に、国内政治の不安定化に心が折れ、講話に応じる決断をしたのである。
ロシアに最終的なとどめを刺し、日露戦争を日本勝利のうちに終わらせたのは明石元二郎その人であるといっても、言い過ぎではないだろう。
「能ある鷹は爪を隠す」というが、爪を隠し、政治的意図も隠し切り、あらゆる意味で愚鈍にしか見えないように振る舞うことができる人間というのはこれほどまでに恐ろしい。
明石元二郎の活躍が、今を生きる私たちに示唆することはとても多い。
“目的達成への強かさ”
話は冒頭の、上野千鶴子氏についてだ。
なぜ同氏の“言行不一致”について私が、
「この人って、実はすごい人なのではないだろうか…」
と、考えを改めたのか。
正直、同氏を“言行不一致”と責めるSNS上の意見の全てが的を射ているとは思わない。
その上で、もし言行不一致批判を全て妥当と仮定するなら、その方が逆に恐るべきことである。
本音を隠し切り、本心を悟らせずに取り繕った言葉で大きな社会的影響力を得たということであって、それは物凄いスキルだからである。
例えは悪いが、元文科次官の前川喜平氏が公言する「面従腹背」のように、大きな権限を得るまでひたすら本音を隠し、事務方トップに昇り詰めるまで耐えたのも、この能力だろう。
そしてこの、「能力や意図を隠し切り、静やかに目的を達成する強かさ」を国家と国益のために行使した人物こそが、明石元二郎である。
であれば、上野氏のポジショントークにネガティブなオピニオンを持つ人は、「言行不一致だ!」などと叩いている場合ではない。
彼女の強かさを恐れ、本来の目的は何であり、何をしようとしているのかを理解して対処するのがあるべき姿ではないのか。
始めから目的が別にあり、手段が本当にカモフラージュだったのであれば、叩けば叩くほどに当人にとっては笑いが止まらないのだから。
そしてこのような“目的達成への強かさ”についてだ。
上野氏はともかく、明石のような強かさを持ち仕事や自身の役割に取り組めている人が今、どれだけいるだろうか。
僅かばかりの能力を大盛りにしてひけらかし、達成する意思も能力も持ち合わせていない理想を語るような、薄っぺらいリーダーばかりが溢れているということはないだろうか。
能力の高さ、目的達成への揺るぎない意志の強さ、個人的な承認欲求への無頓着さ…。
私心無く、そんな能力を社会のために行使できる明石のような人物こそ、閉塞感のある今の日本に必要なリーダーのあり方と確信している。
ぜひ一人でも多くの人に、そんな先人の生き方を参考にして欲しいと願っている。
なお余談だが、明石の日露戦争での仕事は戦後、
「陸軍10個師団(20数万人)に相当する活躍」
とまで高い評価を受けている。
奉天会戦で戦った日本陸軍の総数は25万人前後なので、勝因の半分は明石の活躍とまで評価されているということだ。
しかしおもしろいことに、この有名な評価は誰が発言したのか、ハッキリしない。
定説では陸軍参謀次長の長岡外史とされているが、文献によっては伊藤博文の言葉とするなど不明だ。
逆に言えば、明石の活躍はそれほどまでに、記録としてほとんど残されていないのである。
そんなこともあるのだろう。
戦後ある部下に、「日露の大戦は、閣下の活躍で勝てたようなものですね」とふられた際、
「何を言うか!日露戦史のどこに、たったの一度でも俺の名前が出てくる!」
と怒り出したことがあるそうだ。
私心無く活躍をしたようで、実は強い名誉欲と承認欲求の煩悩を、任務達成への責任感で抑え込んでいたのだろう。
そんな人間臭い魅力を含めぜひ、明石元二郎という男の活躍を一人でも多くの人に知ってほしいと願っている。
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【プロフィール】
桃野泰徳
大学卒業後、大和證券に勤務。
中堅メーカーなどでCFOを歴任し独立。
先日、王将のレジで「オレに料理なんかできるか!この持ち帰り用のラーメンを今すぐ調理してくれ!」と怒り狂っているジイちゃんがいました。
聞いていると、どうやら病気で寝込んでいる妻に大好きな王将のラーメンを食べさせたいとのこと。
モンスターカスタマーには違いありませんが、正義とは立ち位置一つで大きく変わるものだと、改めて感じた出来事でした。
ジイちゃんは最後、追い出されてしまいました。
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