「慌てる乞食は貰いが少ない」ということわざがある。

 

私は安さに飛びつき詳細の確認を怠り、いや、詳細どころか単純な確認を怠った結果、明らかに無駄な出費を強いられた。

あぁ、これが「早い者勝ちのタイムセール」でなければ、もっと慎重にクリックしたはず……と、悔やんでも悔やみきれないのであった。

 

友人の結婚式

先日、私は友人の結婚式に招かれた。

 

正直なところ、この歳になるともはや結婚式など無縁のイベントだ。

自分の結婚式でさえ、相手を含めて未定だというのに、幸せそうな彼らの姿を見ていると、自然と拳に力が入るから不思議だ。

しかも場所は福岡県ということで、出欠の返事をする前に航空券の値段を調べたところ、想像以上に高額ではないか。おまけに、午前中に式が行われるとなれば、前泊がデフォルトとなるため、交通費だけでなく宿泊費まで発生する。

 

(これはまずいぞ・・・)

友人の門出を祝うにも、先立つものが必要。ここはひとまず、出費を極力抑えた移動手段を確保してから、返事をしよう——。

 

都内から福岡へ移動するとなれば、第一選択肢は飛行機だろう。

しかし、チラッと調べた結果、この金額ならばソウルや台湾へ行く方が安い……ということで、私は第二選択肢となる「新幹線」について調べることにした。

 

(……ほとんど変わらない)

 

飛行機が高額なわけではなく、東京から九州へ移動するということは、それなりの費用がかかるという現実を突きつけられた。

しかも、片道に6時間を費やすわけで、一日の四分の一を車内でジッと過ごすなど耐え難い苦痛である。

 

以上の理由により、新幹線という選択肢は早々に消滅し、飛行機一本に絞られた。

 

次に考えることといえば、LCC(格安航空会社)の利用だ。これを使えば片道数千円でチケットを手に入れることができる。

私のように地べたでも熟睡できる人間にとって、シートの広さや機内サービスの有無などは二の次。よって、移動手段に価格の安さのみを求めた私は、LCCを使うことで東京⇔福岡の往復を15,000円に抑えた。

しかも残り2席を即決することで、ギリギリ手に入れたのである。

 

こうして、カネの亡者(?)と化した私は、最安値の実現しか考えておらず、当然ながら宿泊は「無し」にした。

そのため、当日の朝イチで福岡へ向かい、結婚式が終わり次第東京へ戻るという弾丸ツアーを確定させてから、友人へ結婚式の参加を伝えた。

 

この時点で、とある一つの「違和感」に気がついていれば、ややもすれば打開策を見いだせただろう。

だが、低価格の悪魔に取り憑かれた私の視界には、金額以外、入る余地がなかった。

 

東京の空港

出発を二日後に控えた私は、羽田空港へ向かう時間を確認するべくPeach(ピーチ)のアプリを開いた。

(たしか7時10分発だから、空港には6時半前に着けばいい。ということは5時40分くらいの電車に乗ればいいはず)

 

そんなことを考えながら画面を見た瞬間、なんともいえない違和感に襲われた。

(NRT・・・?)

 

NRT=成田空港の文字だった。

 

自宅のある東京都港区から、羽田空港まではおよそ30分。

しかし、千葉県東部にある成田空港までは1時間30分かかる。

 

当然ながら交通費もバカにならないわけで、航空券が多少高かろうが、羽田空港を選ばないメリットなどないのである。

にもかかわらず、私はやってしまった。東京⇔福岡を選択した時点で、てっきり東京=羽田空港だと思い込んでしまったのだ。

 

よくよく考えれば、LCCの中でもPeachやJetstarは羽田空港の国内線枠を持っていない。だからこそ私は、これまでPeachを利用したことがなかったのだ。

それなのに、カネに目がくらみこんな単純なミスを犯すとは、失態を通り越して汚点である。

 

とはいえ、キャンセル不可のチケットを購入してしまったのだから、後悔したところで時すでに遅し。過去の失敗にこだわるよりも未来に全振りするべきだ・・・と、正論とカラ元気を振り絞って成田空港までのルート検索をした。

 

(・・・始発でも間に合わない)

 

——最悪だ。これは最悪としか言いようがない。旅費をケチって前泊しないスケジュールを立てたにもかかわらず、成田空港付近で前泊するしかないではないか。

 

ましてやLCCは、安さと引き換えに空港の隅っこへ追いやられているため、保安検査場は遠いし、搭乗機へは送迎バスを使わなければたどり着かない。

つまり、必要以上に早めの行動を求められるのだ。

 

——私はいったい何のために、あんなに張り切って即決したのだろうか。

 

成田空港で前泊

羽田と成田を勘違いした私だが、それでも泊まる場所があるだけ幸せである。

最悪の場合、空港内のベンチで朝を迎えるしかないが、さすがに結婚式前日にそれはできない。

 

なぜなら、式に参列する服装で向かうわけで、そんな格好でホームレスのように寝そべるのは、さすがに不謹慎であり失礼に当たるからだ。

 

渋々、成田空港付近のホテル検索をするうちに、私は空港内に女性も利用できるカプセルホテルがあることを発見した。

9h(ナインアワーズ)は、全国に10店舗以上を展開するオシャレなカプセルホテルだ。女性専用フロアが完備されており、アメニティグッズも充実しているので、「寝床難民」の女性にはうってつけの施設といえる。

 

成田空港店の宿泊料金はおよそ七千円、決して安くはないが野宿するよりもかなりマシである。

おまけに空港内にあるのだから、多少の朝寝坊が許されるわけだ。

そもそもカプセルホテルに泊まったことのない私は、「これも一つの経験」ということで、ナインアワーズに前泊することにした。

 

まずはじめにPeachの宿泊予約サイトで調べたところ、モバイル限定割引もついて、通常価格より2割ほど安く予約できることが分かった。

(航空会社のサイトでこれなら、格安ホテルのサイトはもっと安いかもしれない)

 

ピンときた私はさっそくBooking.comやAgoda、楽天トラベル、Trip.comなど複数のアプリを開き、最安値の比較をすることにした。

 

実際のところ、価格に大きな差はなかった。19%オフ、14%オフ、21%オフなど、金額にして数円から数十円の違いでしかない。

中には、次回の予約時にキャッシュバックすることで相殺させるようなプランもあり、むしろこれが最安値となる25%オフだった。

 

しかし、普段から出張や旅行でホテルを予約する習慣があればいいが、遠出が好きではない私にとって「次回の予約」は、いつ実現するのか分からない「予言」と同じである。とはいえ、最安値の呪いが解けていない私にとって、ここを見逃すことはできない——。

 

欲にまみれた人間ほど愚かで弱いものはない。私はわずか数十円の安さを求めて、いつ訪れるのかも分からない未来のキャッシュバックを選んだ。つまり、今回の宿泊料金は最安値ではないが、キャッシュバックを踏まえれば最安値になるという、微妙な「お得感」を手に入れたのである。

 

とはいえ、成田と羽田を間違えるという痛恨のミスを犯した私にとって、数十円でも支出を抑えられれば御の字。ここはなんとか丸く収めることができた、といっていいだろう——。

 

「慌てる乞食は貰いが少ない」の実写版

こうして無事、格安で東京⇔福岡を往復できることとなり、ほっと一息ついたところで予約完了メールが届いた。そして「呪いはまだ解けていないのだ」と言わんばかりに、再び、悪夢のようなトラウマに襲われた。

 

——なんと、チェックインの日付が「今日」になっていたのだ。

 

そんなはずはないと、まだ閉じていないアプリを確認した。いくつものアプリを開いていたせいで、肝心の予約サイトがすぐに出てこないのだが、探しながらも途中で私は気が付いた。

 

(最初のアプリだけ前泊の日付を入れたが、それ以降は入力した記憶がない。つまり、今日の日付がデフォルトで入力されていたんだ・・・)

 

もはや確認するまでもなく、実際の宿泊日を入力していないことを知った私。そして、キャンセル不可かつ全額支払いを済ませているわけで、誰も泊まることのないカプセルを一つ、生み出してしまったのである。

 

悔やみきれないほどの虚しさと、最安値にこだわりすぎた浅はかさに、しばらくは息をすることすら忘れていた。そしてほとんど無意識のまま、再度、翌日の宿泊予約をし直したのである。

 

 

交通費をケチった結果、空港を間違えた。おかげで前泊するハメになった。さらに宿泊費もケチった結果、日付を間違えた。そのため、2泊分の出費を強いられた——。

気がつけば私は、東京⇔福岡間を普通料金で往復させられたのである。

 

自戒

結局なにが言いたいのかというと、「激安!」「今だけ」「残り一部屋」などという魔法、いや、呪いの言葉に支配されてはならない。

 

無論、格安アイテムが悪いわけではない。それらに手を出す際は調子に乗らず、高価なものを買うときと同じように、冷静かつ慎重にクリックすることを心掛けなければならない……というだけで。

(了)

 

 

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システム開発やITコンサルティングを経て、
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現在はネクセラファーマ株式会社で、システムだけではなく、企業風土改革や業務改善をリードし、
日本発グローバルバイオ製薬企業にむけて、同社の成長基盤の構築に尽力している。

岡田 雄太(ワークワンダース株式会社 CTO)
野村総合研究所に新卒入社後、証券総合バックオフィスシステムやオンライントレードシステムなどの開発に従事。
その後、8 Securities(現SoFi Hong Kong)へ出向し、日本人唯一のエンジニアとして国際的なプロジェクトに携わる。
BOOSTRYでは信託銀行向けSaaSの立ち上げと成長を牽引。
WiseVineではCTOとして開発組織を30名規模に拡大し、プロダクト開発を推進。
2025年4月よりワークワンダース株式会社CTOに就任。AI活用を中心とした開発支援をリードする。


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(2026/01/19更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

URABE(ウラベ)

ライター&社労士/ブラジリアン柔術茶帯/クレー射撃スキート

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