AIでコンテンツを作れるようになった今、発信において、「人間」が果たすべき役割は、
・他にはない「切り口」を出すこと
・AIの出力結果をチェックすること
の2つに集約される。
平たく言うと、「企画」と「校閲」。
ただし、このうち、後者の「校閲」については、正直なところAIでもある程度代替可能である。
ではなぜ、人間がチェックをしなければならないのかというと、成果物の「責任」を誰かが取らなければならないからだ。
仕事においてはもちろん、
「AIのせいです、私は知りません」
というわけにはいかない。
そのため、「このAIの出力には、私が責任を負っています」という人が必要で、それが校閲の役割となっている。
まだAIに「企画」は出せない
しかし、前者の企画、「おもしろい切り口」を出すという観点からすると、AIはまだ力不足、というのが実感として存在する。
残念ながらAIの出す企画は、普通で全く面白くない。
これは、AIを使って、多少なりともクリエイティブな試みを行っている人ならば、誰でも知っている事実である。
もちろん、ネット上では、多くの「驚き屋さん」たちが、生成AIの性能を褒め称えているのは知っている。
が、正直なところ、「人間のプロ」の水準にはまだ及ばない。
かなりチューニングを行ったプロンプトであっても、「素人が考えそうなこと」を言えるだけだ。
だから、現在の生成AIのアウトプットは、最初の「アイデアの種」の質に大きく依存する。
「能力の高い人間」
が使うと、高い品質のものになり、
「普通の人」
が使うと、普通のもの(つまり面白くないもの)が出来上がるのはそのためだ。
AIに適切な方向づけを行い、AIがどのような情報を参照すべきかを伝えられる人、つまりプロが、AIを使いこなして、大きなパワーを得ているのが現状である。
「テクノロジーは格差を拡大する」を地で行っているのがAIだ。
「AIの出す企画」が人間を超える日は来るか
問題は、これが「時間の問題」かどうかだ。
つまり、5年後、10年後には
「誰でもAIですごいものが作れるから、人間の賢さは意味のないものになる」
といえるかどうか、である。
もっとわかりやすく言えば、
「文章の素人が、AIでベストセラーを生み出す」
「絵の素人が、AIをつかって商業誌で人気漫画の連載をする」
「映像の素人が、AIで映画賞を取る」
「音楽の素人が、AIでヒットソングを作る」
などが、可能となるかどうかだ。
これが可能になったら、本当に人間の頭脳労働は不要になる。
未来予測というものは大抵が外れるので、正直なところ確信めいたことは言えない。
が、可能性としては「ゼロではない」とは言える。
人間の頭脳の差を意味のないものにするほどのAIが出現すれば、もはや頭脳労働は人間がやる仕事ではなくなるだろう。
人間に残された仕事は何か?
そうなったときに、我々人間は、どのような仕事をすればよいのか?
一つは、肉体労働とホワイトカラーのハイブリッドである。いわゆる、エッセンシャルワークに就くことだ。
代表的なのは医師、看護師である。
他にも、小学校の教員、保育士、建設作業員、消防士、農作業員、工員、警察官、配送ドライバー、倉庫員、調理員、ケースワーカー、生活支援員などがある。
これは元経営共創基盤代表の冨山和彦氏の「ホワイトカラー消滅」に詳しい。
そもそも、現在の大半のホワイトカラーは、頭を使って仕事をしているのではなく、単に事務仕事をしているだけなのだから、AIが代替すれば仕事はなくなる。
したがって、頭脳労働は、AIと対等のクオリティで仕事をする「スーパークリエイター」と、経営の責任者である「経営者」「上級管理職」しか残らない、という主張だ。
そして二つ目。
これは私の主観だが、「人間が行うことが欲されている仕事」だ。
裏を返すと
「人間が機械にやらせたいと思わない仕事」
が複数存在する。
例えば、アーティスト、宗教家、運動家、政治家、スポーツ選手、アイドル、など、いわゆる「カリスマ」には、一定の存在価値がある。
それは、「憧れの人に付き従いたい」という、人間の根源的な欲求だ。
一種の偶像崇拝だが、ニーズは大きい。
あるいは裁判官や議員など、司法、立法の中枢は、保守的に人間に占めさせることだろう。
これらは企業経営者のように、「人に責任を取らせること」を欲する仕事だからだ。
それと「営業マン」はなくならない
そして、おそらく無くならないのは「営業マン」だ。
「営業パーソン」と書くべきなのだろうが、泥臭い「営業マン」のほうがイメージに近い。
経営者や顧客のキーパーソンを相手にして、商品の説明を行い、接待をし、顔を出して挨拶を行い、彼らに気に入ってもらうことを目的とする職業だ。
実は営業マンは、ホワイトカラーではなく、「エッセンシャルワーカー」に近い。
といっても、情報提供や提案をするだけの仕事、あるいはインサイドセールスなどは、かなりの部分が自動化されていくだろう。
しかし、人間の情理が必要な営業、たとえば不動産販売、M&Aの仲介、塾への勧誘、生命保険への加入、アパレル販売員、ホテルや旅館の接客、そして中小企業向けコンサルタントなどは
「人から買いたい」
「この人の誠実さを信頼する」
という人間関係そのものが商品の一部になっているため、AIに代替されずに残る可能性が高い。
「キーパーソンに気に入られて、取引が始まる」ということは、人間の本質をついている。
「責任者」「リーダー」「カリスマ」を人間がやっている以上、彼らに「直接のサービス」や「人間のインターフェース」を提供するための「人間がやる仕事」が残っていく、というのが近未来の労働の主役になるだろう。
そういう点から見ると、今よりもAIがはるかに賢くなっても、「人間の仕事」は当分、無くなりそうもない。
【お知らせ】
3月24日の14時から、なぜ「発信する企業」は顧客を集め続けるのか というセミナーを実施します。
上の話の根底に通じる部分、「人間は人間に惹かれる」という部分をビジネスに落とし込んだ話をするので、興味がある人は以下のページから。
【著者プロフィール】
安達裕哉
生成AI活用支援のワークワンダースCEO(https://workwonders.jp)|元Deloitteのコンサルタント|オウンドメディア支援のティネクト代表(http://tinect.jp)|著書「頭のいい人が話す前に考えていること」92万部(https://amzn.to/49Tivyi)|
◯Twitter:安達裕哉
◯Facebook:安達裕哉
◯note:(生成AI時代の「ライターとマーケティング」の、実践的教科書)
〇まぐまぐ:実務で使える、生成AI導入の教科書




