学びは「本当に」幸せにつながるか

最近になって「リスキリング」や「リカレント教育」など働く社会人の学び直しの話を聞くようになってきた。働きながら学び続け、自身の能力をアップデートし続けることは、仕事においてより高いパフォーマンスを出し続けることはもちろんのこと、周囲からの評価や充実感の高まりによって「人生100年時代」とも呼ばれる現代を幸せに生き抜くことにもつながっていくだろう。

 

このように「学び直し」に注目が集まる中、積極的に学び続けて自身のアップデートを怠らない人も多くいるだろう。しかし一方で、自分自身にも学び直しが必要なのか?学び直しのメリット/デメリットは?などと考えて、学び直しに一歩踏み出せない方もいるのではないだろうか。

例えば、日々の仕事や家族との時間の合間を縫い、少なくはない投資をして学び直しをすることで本当に幸せになれるのか、と疑問に思う方もいるだろう。

 

そこでここからは、時間やお金、そして多くのパワーを注がねばならない学び直しとして経営学修士(Master of Business Administration:MBAに着目し、実際にMBAを目指した人々がその後本当に幸せになっているのだろうか?という疑問に答えるべく、これまでに報告されているMBAと幸福度に関する研究を紹介しよう。

 

MBAと幸福度に関する海外の調査

2013年にMBA50.comによって行われた調査[1]では、世界各国のビジネススクールで学んでいる1,100名以上のMBA在校生を対象に主観的幸福度が問われている。その結果、MBA入学前に比較して、MBA在学中の主観的幸福度は向上しており、さらには、MBA取得後に期待される幸福度はさらに高いことが示された。

 

この結果から、MBAの取得は個人の幸福度にポジティブな影響をもたらすことが示唆されている。しかしながら、このMBA50.comによる調査は、日本のビジネススクールは対象外であることから、実際に日本のビジネススクールでMBAを取得することが幸福度の向上につながるのかはこれまで不明であった。

 

日本のビジネススクールでMBAを取得すると幸せになれるのか?

筆者は、日本のビジネススクールでMBAを取得した者の主観的幸福度を評価するために、日本に存在するビジネススクールでMBAを取得した者に対するインターネットアンケート調査を行い、316名の有効回答を得た[2]。この316名の主観的幸福度については、MBA入学前、MBA在学中、ならびに、MBA修了後の主観的幸福度を11段階評価(最も不幸せ:0 ~ 最も幸せ:10)で回答してもらうことで評価した。

 

その結果、回答者の主観的幸福度は、MBA入学前(5.05)<MBA在学中(7.19)<MBA修了後(7.69)とだんだんと高くなっていた。また、MBA取得による幸福度の変化に影響を及ぼす要因を検討した結果、キャリア発展、リーダーシップ開発、学ぶ喜び、の3点がMBA前後の幸福度の変化に対して影響を与えていることが示唆された。

 

オンラインビジネススクールでMBAを取得した人の幸福度

新型コロナウイルス感染症の影響もありオンライン学習に対するニーズも拡大しているが、オンラインでMBAを取得できるプログラムを提供するビジネススクールも増えてきている。筆者は、オンラインビジネススクールでMBAを取得した者の主観的幸福度についても同様に調査した[3]

 

その結果、オンラインビジネススクールでMBAを取得した者の主観的幸福度は、MBA入学前(5.55)<MBA在学中(6.79)<MBA修了後(8.00)とだんだんと高くなっており、オンラインビジネススクールにおいてもMBAの取得が個人の幸福度にポジティブな影響を与えていることが示唆された。

 

学びは経済/非経済の両面から幸せにつながる

今回の筆者らの調査はMBAに着目して、MBAで学ぶことの幸福度向上に与える影響について評価したが、MBAに限らずとも学ぶことは幸せにつながることは世界共通のことであろう。事実、これまでの多くの研究で学ぶことが幸せに貢献することが報告されている

 

個人の能力を向上させることで、就職・転職を有利にしたり、仕事上の評価が高まったり、収入を上げたりすることができるという意味で、幸せにとって教育はもちろん重要である。加えて、学びは単に経済的な利益をもたらすだけでなく、幸福度、健康、および社会的関係といった生活の質の向上、すなわち非経済的な利益にも寄与することも知っておきたいポイントだ。MBA前後の幸福度の変化に、キャリア発展、リーダーシップ開発、学ぶ喜び、という経済的な利益だけでは収まらない3点が影響を与えているということも、ここに繋がるだろう。

 

読者の皆さまにおいても、継続的に学び続けて、自身をアップデートし続け、よりよい幸せな人生を切り開いていって欲しいと願ってやまない。

(執筆:米良 克美)

 

 

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システム開発やITコンサルティングを経て、
外資系製薬企業で15年以上のITビジネスパートナーとして人事からコマーシャル、 メディカルなど製薬企業の様々な分野のプロジェクトに携わる。
現在はネクセラファーマ株式会社で、システムだけではなく、企業風土改革や業務改善をリードし、
日本発グローバルバイオ製薬企業にむけて、同社の成長基盤の構築に尽力している。

岡田 雄太(ワークワンダース株式会社 CTO)
野村総合研究所に新卒入社後、証券総合バックオフィスシステムやオンライントレードシステムなどの開発に従事。
その後、8 Securities(現SoFi Hong Kong)へ出向し、日本人唯一のエンジニアとして国際的なプロジェクトに携わる。
BOOSTRYでは信託銀行向けSaaSの立ち上げと成長を牽引。
WiseVineではCTOとして開発組織を30名規模に拡大し、プロダクト開発を推進。
2025年4月よりワークワンダース株式会社CTOに就任。AI活用を中心とした開発支援をリードする。


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(2026/01/19更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

グロービス経営大学院

日本で最も選ばれているビジネススクール、グロービス経営大学院(MBA)。

ヒト・モノ・カネをはじめ、テクノベートや経営・マネジメントなど、グロービスの現役・実務家教員がグロービス知見録に執筆したコンテンツを中心にお届けします。

グロービス知見録

Photo by:MD Duran

 

<参考文献>

  1. Matt Symonds, The MBA50.com (2013) MBA Happiness Index 2013
  2. 米良克美 (2023) 経営学修士(MBA)取得による主観的幸福度の向上,グロービス経営大学院紀要1 巻 p. 51-54
  3. 米良克美 (2022) オンライン学習による幸福度向上効果 ~オンラインMBAプログラムに着目して~ 第11回日本ポジティブサイコロジー医学会学術集会