この記事で書きたいことは、大体以下のようなことです。

 

・先日朗読劇の脚本を書いて、妻が参加している朗読団体さんに演じていただくことになりました

・人狼ゲーム仕立ての、「登場キャラたちがVR空間で議論をして、メンバーに混じったAIを見つけ出す」というお話を書きました

・書いていて大変楽しかったのですが、普段の書き物とは全く違う学びや難しい点もありました

・「目で読む文章」と「耳で聴く文章」は全く別物で、いかに耳が滑らないようにするかの調整が大変でした

・舞台を見ている人にどうやって場面の状況やポイントを理解してもらうか、という点にも腐心しました

・演者さんに「どういう物語を演じたいか」という要件を聞き取りながらお話を組み立てていくのも面白い経験でした

・「ゼロから物語を作る」時の目隠しして迷路を歩くような感覚、大変だけど癖になりますね

・創作ものすっっっごく楽しいですよね

 

よろしくお願いします。

さて、書きたいことは最初に全部書いてしまったので、後はざっくばらんにいきましょう。

 

先日、朗読劇の脚本を書きました。

書き始めたのが去年の夏頃で、初稿が完成するのに二週間くらい、様々に手を入れながら「脚本」として完成を見たのが今年の春先くらいで、設定やら調整した分やら全部合計すると4万字くらいは書いたのでしょうか。

 

劇の上演がまだですので、脚本の細かい内容については触れられない部分もあるのですが、普段書いているものとはちょっと毛色が変わった分野であることもあり、面白い体験だったので文章にしておきたくなりました。

 

朗読劇というのは、文字通りお話を「朗読」という形で、舞台上で表現する劇形式です。もちろん色々と演出はあるのですが、舞台上で役者さんが動き回る演劇と異なり、基本的には「声」「会話」で物語の全てを表現することになります。

より「役者の声」「話し方」「声による表現」といったものに特化して楽しむ形式ではないかと思います。

 

小説は何度も書いているんですが、「脚本」というものを書いた経験はあまりありません。そんな私が何故脚本など書くことになったのかというと、きっかけは妻に「なんかいいSFない?」と相談されたことでした。

 

聞いてみると、妻が所属している朗読団体「草花木果」さんで、次読む朗読劇の題材を検討中、一部のメンバーから「SFがいいのではないか」という意見が出たと。

ただ、出演人数がそこそこ多いこともあり、ちょうどいいお話のスケールで、登場キャラクターも数が多い作品となると意外とタイトルが浮かばない。

 

私は海外SFが好きなので、ブラッドベリやらアシモフやらラファティやらラヴクラフトやら、中短編を色々あげてはみたのですが、どうもぴったり来る話がないと。ラヴクラフトの「アウトサイダー」なんかいいんじゃないかと思ったんですが、冷静に考えると朗読向きな要素がミリもない。

「じゃあ書いちゃおうか」となりました。

 

誰にでも「お話の引き出し」みたいなものはあると思っていて、つまりどんな物語ならスムーズに作れるのかという話なのですが、今回の条件として、「出演人数が10人弱とそこそこ多い」「舞台は近未来~未来のSF仕立て」というものがありました。

 

折角参加人数も多いし、朗読という形式なのだから会話を中心とした群像劇にしたい。謎解き要素、推理要素があるともっといい。

 

この条件で、私が一番広い引き出しを持ってるのって人狼だな、と。なにせ人狼なら、人狼BBS時代から何百回遊んだか分からないですし、どこがどういう風に面白いのかも大体分かっているつもりです。

「犯人探し」という構造は、多分会話劇とも相性が良い。

 

以前から「今以上にAIが発展した時、外部からAIかそうでないかを判定することって可能なんだろうか」というテーマに興味があって色々調べていたこともあり、「VR空間に紛れ込んだAIを、会話と議論だけで判別しなくてはいけない」という舞台立てを提案しました。

 

ざっくり企画書を書いて演者さんに相談してみたところ「面白そう!」「やってみたい!」という反応をいただいたので、じゃあということでざーっと書き上げ、様々調整して今に至る、という経緯なのです。

 

「人狼」ならではの仕組みに「AIは誰かを推理してもらう」という要素も持ち込めて、手前味噌ながら書いた側としては満足しているのですが、もちろん朗読劇というのは読んでもらわないと作品として完成しないので、演者さんによって脚本に命が吹き込まれるのを、私自身楽しみにしている次第です。

 

5/10,5/11に荻窪で上演予定なので、ご興味ある方は良かったら行ってみてください。

下記は予約用のフォームです。

https://www.quartet-online.net/ticket/28soukamokka1?m=0zgbjge

 

***

 

で。

今回書いたのが脚本、しかも朗読劇の脚本ということで、やはり普段の文章や小説とは違う点も様々にありました。以下はその辺の学びについて書いてみたいと思います。

 

まず、当たり前のことかも知れませんが、「情報を伝える時、耳は目よりもずっと滑りやすい」ということ。

朗読劇の一番の面白さ、かつ難しさというのは、「取り扱うのは文章でありながら、お客さんに伝えるチャンネルは基本「声」に限定されている」というところにあります。

 

声はリアルタイムで流れていくものなので、小説と違って「気になった一カ所に注目して前後をじっくり読む」ことは出来ないし、動画と違って「ちょっと戻して見直す」ということも出来ません。

 

また、当然のことながら同音異義語を字面から判別することも出来ないし、長い単語は聞き終わるまで判別出来ず、頭に入ってくるのにタイムラグが生じる。

 

つまり、ちょっと意識がそれて話を聞き逃したり、今の言葉よく分からなかったな、となった時のリカバリが難しい。

「目が滑る」ということは文章を読む上でも起こりますが、「耳が滑る」のはより起こりやすい上、それを取り戻すにも工夫が必要、ということになります。

 

SFというとどうしてもある程度「それっぽい」用語は出てきてしまいますし、単に「AI」という言葉であっても理解や認識は人それぞれです。

しかも、推理要素というとどうしても「それまでの情報をどう取り入れるか」という問題とも無縁ではいられず、「10分前に起きた会話をどう覚えておいてもらうか」といった課題も発生します。

 

この辺り、「どうすればお客さんになるべく耳を滑らせないで聞いてもらうか」について、物語展開とどう両立させたものか、妻にもアドバイスしてもらいながら、かなり色々苦心しました。

 

大きいところだと、

・「この台詞は何を言っているのか」ということについて、発言のなるべく早い段階で分かるようにした

・音声にした時まぎらわしい言葉がある単語は可能な限り避けた(類語辞典が大活躍した)

・情報として必ず抑えておいて欲しいポイントは何回かに分けて登場するようにした

・自分で声に出して読み、音声と意味がひっかかりそうな箇所を可能な限り潰した

辺りでしょうか。

 

普段のプレゼンだと、抑えて欲しいポイントは掲示資料に文章として書いておけばまあ済むっちゃ済むので、この辺甘えてしまっているところもあったなと、音声だけの舞台で考えるとだいぶ色々シビアに考えないといけないなあ、と思った次第なのです(もちろん、上記のような工夫とは別に、演者の皆様も様々に工夫をしてくださっています)

 

「今、キャラクターがどんな状況にいるのか」ということをどう説明するのか、みたいなポイントもありますよね。

演劇と違ってキャラクターが大きく動かないので、「地の文」でナレーションのように状況を説明する文章も時には必要となり、そこを既存のストーリーとどう折り合いをつけるか、というような調整も普段の文章とは違うテクニックが必要な部分でした。

 

また、「声の質」というところをキャラクターにどう盛り込むか、というのもやっていて面白かった点です。

当たり前ですが演者さんの声は演者さんごとにそれぞれ違いますし、得意な役どころ、得意な演技、上手い役回りというのも皆さん違います。

 

例えば、「この人は子どもの、かつ勢いがある声を出すのが得意」だとか、「この人は機械音声みたいな声をとても上手に出せる」とか、演者さんお一人おひとりの個性についてヒアリングしながら、それを活かした物語展開にどこまで寄せられるかな、というのは、普段文章を書いている時とは全く別の脳みそを使っているような感じで、非常に新鮮な気持ちで書き進められました。

 

当然演者さん個別に「演じたい内容」というのも変わってきますし、なんなら展開自体それで微妙に変わってきたりするので、細かくやりとりをさせていただいて、皆さんの希望も取り入れつつ全体の物語を調整する、みたいな試みをやってみまして、パズルをやっているような楽しさを味わえました。

やってみないと分からないもんだなあ、と思ったわけです。

 

これは別に脚本に限らず、創作全般にいえることかとは思うのですが、「書き終わった後」には「そう書いてあるのが当然」のように思える部分でも、ゼロから作ろうとすると滅茶苦茶大変なんですよね。

小説を読むのと書くのでは、舗装された道路を歩くのと原生林を切り開いてそこにアスファルトを敷き詰めるくらいの労力の差があると思います。

 

一方、考えた展開が上手いこと物語にハマった時とか、ストーリーを思った通りに着地させられた時には、本当に脳から出汁でも出てるのかと思えるくらいの気持ちよさと楽しさがあります。創作で徹夜しちゃう人がいるのもよく分かる楽しさです。

普段から小説や脚本を書いている方というのは本当にもの凄いなあと思いつつ、自分でも改めて「創作めちゃ面白いなー」と感じられたので、また折りを見て色々書いてみたいと考えた次第なのです。

 

今日書きたいことはそれくらいです。

 

 

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【著者プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

ブログ:不倒城

Photo:Merch HÜSEY