2023年のカープはよかった

おれは2023年の11月にこんな記事を書いた。

カープ監督の新井さん「チームは家族」

タイトルを書いたのはおれではない。いずれにせよ、わが広島カープのシーズン2位という奇跡的な躍進、それを引っ張ったモチベーターとしての新井貴浩監督を称えている。

弱小戦力のなか、ベテランと若手を融合させてようやったのだ。これを忘れている人は多い。

 

それに、羽月隆太郎という選手のこともほめている。

たとえば、クライマックスシリーズの対ベイスターズ戦、失敗すれば試合に負ける、絶対にアウトになってはいけないシーンで、若手の代走羽月がリスクの高い三盗を決めた。ベイスターズ側に油断があったという指摘もあるが、それでも相当に度胸がなくてはできないプレイだ。

これについて羽月は「恐怖心はなかった」と言い切った。

シーズン中から監督やヘッドコーチから代走で出たらなにをしてもいい、めちゃくちゃにしてくれと言われているから、アウトになったらしょうがないという気持ちでやっているのだという。

このあたり、なにか「心理的安全性」という言葉が連想されないだろうか。むろん、会社組織と野球のチームでは違う点も多い。だから、あくまで連想だ。

「なにをしてもいい、めちゃくちゃにしてくれ」。はい、2025年のカープは羽月の逮捕、裁判をはじめにむちゃくちゃになりました。……という話は後でする。

 

おれはこんなことまで書いている。

それでも、二年目で成長した新井さんが選手たちに力を与え、ヒリヒリするような勝負を見せてくれることを信じたい。やがては新しいタイプの名将と呼ばれるようになり、ビジネスシーンでも「新井野球でいこう!」と言われる日がくるかもしれない。

いや、それはないだろうが、まあ「理想の上司」のアンケートに入る日はくるかもしれない。

いまのところ、その気配はまったくない。微塵もないといっていい。カープファンからすら見放されている。

 

いや、2024年もいいところまでよかったんだ。そこも忘れちゃいけない。

西川龍馬という主力級メンバーがFAで抜けて、外国人も外れ。それでも「8月を終えた時点では61勝48敗5分(勝率.560)でセ・リーグの首位に立っていた」(Wikipediaより)のである。

そのあとに「燃ゆ」があった。「広島燃ゆ」で検索してくれればわかる。そこから大失速したのだ。9月は5勝20敗、セ・リーグの月間敗戦数ワースト記録。結果はCSにも進めない4位。

 

翌2025年は見どころが少なかった。新井さんはどうにも元気があるようにも見えないし、選手の躍動もあまり感じられない。

もちろん戦力は貧弱でこれといった補強もない。負けはかさむ。唯一、小園の首位打者くらいしか見どころがない。

 

おれはシーズン後半にはカープの試合を見るのが辛くなってしまった。辛くなってしまって、「2026年シーズンはとりあえずJ SPORTSオンデマンドの配信契約を結ぶのはやめよう」と決めた。

毎年買っていたグッズもなにも買わなかった。いったん距離を置こう。もちろん、カープが予想外の躍進をするならば、即座に配信契約を結ぶ。そう決めた。

 

ちなみに、カープの本拠地であるマツダスタジアムはネットの実況で「ガラガラ」と言われることが本当に多くなっていた。おればかりではなかったのだろう。

 

そして、2026年のカープ

そして、2026年のカープである。カープにとって歴史に残る年になった。歴史的な優勝をとげたわけでもないし、歴史的な負け数を記録したわけでもない。

 

ゾンビたばこ。エトミデート。これである。さっき出てきた快足の羽月が指定薬物使用問題で逮捕されたのである。

現役のプロ野球選手が逮捕されるのは珍しい。そして、起訴、裁判、有罪。カープとの契約はとうぜん解除。

 

で、これが羽月一人の問題であればことは大きくならなかった。羽月が他にも使用していたカープの現役選手がいたと裁判で証言したのである。

そして、追い打ちとして、羽月にゾンビたばこを売った人間と現役カープ選手の親密な写真が週刊誌に掲載された。球団本部長の鈴木清明は報道陣の取材に「週刊誌の報道に関してコメントすることはない」(Wikipedia)と答えたが、さてそれで納得がいくだろうか。

 

結局、密室親密写真を撮られた矢野雅哉(ゴールデン・グラブ賞を獲得したこともある「守備だけで飯が食える選手」だ)が3軍に追放され、昨年首位打者の小園海斗もキリのいい出場数で2軍に落とされた。

今年はプレーにも精彩を欠いていた(……って、おれは今年、配信でプレーを見ていないのだが)。あとは、写真に撮られていた前川誠太と田村俊介……。

 

まあ、まとめて4選手が戦力外通告を受けた。これまでさんざん、のらりくらりと記者会見もしなかったカープが、いきなりバッサリいった。

これには驚いた。とくに今年の成績が振るわなかったとはいえ、首位打者とゴールデン・グラブ受賞者だ。

 

戦力の乏しいカープにとっては主力級といってもいい。前川と田村、とくに田村は若くして日本代表に選ばれたこともあったように、まだまだ伸びる可能性がある選手だった。

「来年のカープはだれが野球をするのか?」とすら思った。いや、今やっているメンバーか。それにしても、思い切ったものだ。

 

カープの対応は正しかったのか?

で、その思い切りについて、おれは拍手喝采したかというと、うーん、どうなんだろう? よくわからない。

もう、ここまできたら、バッサリいくしかなったという意味では、これしかなかったとは思う。でも、それまでの対応はどうだったのか。これについて疑問が残るのだ。

 

べつにおれはガバナンスだのコンプライアンスだのの専門家でもなんでもないので偉そうなことはいえない。

しかし、「週刊誌の報道に関してコメントすることはない」という対応がよかったのかどうか。警察ではないから捜査権がないといって、内部調査の状況もまったくファンに伝えなかったのはどうだったのか。

 

正直なところ、羽月以外の4人は、書類送検されたやつはいても(その結果は出ていないが)、法的に有罪が確定したやつはいないのである。

もっともっと早い段階で記者会見を開き、週刊誌で報道された選手に釈明させ、その上で「反社との交際があったのは事実なので謹慎6ヶ月にします」(要するに今シーズンは出しません)とでもしておけば、まだ20代の選手たちがいきなり「クビ」(野球選手は個人事業主なので正確な言い方ではない)になる必要はなかったのではないか、と思うのだ。

 

とはいえ、来季の契約をしないと決めたあとでの本部長のコメントからは「信頼が築けないと判断した」というような言葉が聞かれた。

内部調査(これも第三者委員会みたいなものが必要だったのではないか?)なる聞き取り、話し合いから、なにか決定的に信用できない態度や言動があったのかもしれない。嘘をつかれたと判断したのかもしれない。それはわからない。そういう可能性もある。4選手の戦力外通告後の記者会見からもその可能性は感じた。

 

あるいは、もういまどき、反社と交際があっただけでアウトという判断かもしれない。

それならそれでシーズンのもっと早い段階で契約解除をしていればよかったのではないか、とも思うが。無論、選手側、あるいは選手会に不当解除とされて争うことになるのを避けたのかもしれないが……。

 

これは、難しい話だった。距離を置いた一ファンからしても、どうすれば一番よかったのかわからない。

球団の対応が正しかったようには思えないし、しょせんは高齢のオーナーが権力を握る田舎の同族経営企業(「市民球団」というのはイメージでしかない。単なるキャッチフレーズみたいなもの)かという感想は抱いた。

とはいえ、おれが書いたような記者会見、謝罪、謹慎コースでよかったのかどうかもわからない。

 

もちろん、カープはスポーツのチームだ。小園や矢野が戦力になりそうだからといって、チームメートの士気が下がるようなことがあっては本末転倒というか、チームの勝利という目的に反することになる。

ちなみに、10月1日の戦力外通告後いきなり3連勝したのは偶然だろう。そのあと連敗してシーズンを終えた。

……ちょっと話は逸れるが4位で。

 

今年の1〜3位(あるいは1〜2位)と4〜6位は別次元なので、そんなに価値のある4位ではない。

これは本音を言いたいが、ヤクルトと中日はなにやってんの? 今年のゾンビカープより弱いってどういうこと?

いや、それぞれのファンには言いたいこともあるだろうが、まあそれぞれ言ってください。でも、中日の来季の工藤公康監督はうらやましいな……。

 

辞任を3度拒否された新井監督は来年どうすればいいのか?

そして、シーズンオフが始まる。カープはどうするのか。

2026年はずっと2軍で、もはや戦力になっていなかったベテラン2人の来季契約を早く発表したように、まず野球をやるのに最低限必要な人間を集めなくてはならない。

そりゃまあ、問題選手がいなくなったあとも野球はやっていたのだけれど、穴埋めは必要だろう。というか、FAで主力中の主力が3人まとめていなくなる可能性もあって、埋まるのかという話だ。

 

とりあえず、他球団を戦力外になった選手を集める? FAの人的補償? それとも辰見鴻之介のように現役ドラフトにすごい賭けをする? たいへんだ。

元ヤクルトの小川淳司を編成に入れるといっても、来年一月からのことだ。まったくわからない。

わからないだけに、興味が出てきたといえば、正直そうではあるが。

 

あとは、監督である。来年の監督は決定している。新井貴浩、その人である。

新井監督はスタジアム内外の責任を取り、三回も辞任を申し出たという。

しかし、すべて断られた。掟破りの逆三顧の礼、逆諸葛亮。いや、そうか? まあいい、そのうえ、ほかになり手がいなかったのであろう、来季も続投だ。

 

来季も、新井監督。おれは一年目と二年目の八月までの新井監督はたいへんに評価していた。選手のマネージメントのようなものは身についていくと思っていた。

ところがどうもそういう感じはなく、おれはカープの野球がつまらないと思うようになった。このままでは決定的にカープが嫌いになってしまうのではないか? そんなふうにも思った。

 

もちろん、現在のカープの経営陣は大嫌いだ。本部長も嫌いだ。オーナーを嫌うカープファンは多いといってよい。

そのうえ、新井監督に明るさや勢いがなくなってしまっては、モチベーターとしての能力すら発揮されない。チームもさらに低迷する。雰囲気の暗い弱小チーム。雰囲気が暗くても強ければいいかもしれないし(そんなことがあるのだろうか?)、弱小チームでも応援しがいがあればいい。

でも、どっちもなくなってしまうとさすがに信仰が揺らぐ。

 

信仰? そうだ、おれはずっと信仰の話をしている。あるチームのファン、サポーターであるということは、信仰に近いとおれは思っている。「そんなに重いもんじゃないよ」という人もいるだろうし、まあ「おれについては」とつけておこう。

そんなおれが信仰に揺れているということである。ゾシマ長老の死臭を感じたときの、アレクセイ・フョードロヴィチのごとくがである。

 

さて、来年の新井監督、1シーズンに三回も辞意を伝えて、なおかつ来年もやれと言われて断れなかった新井監督、どうなるのだろう?

いっそのこと、よくわからないやつでいいから、アメリカあたりから新監督連れてきたほうがよかったんじゃないか、とすら思う。

 

「すべて吹っ切って、最初のころのように明るくチームを鼓舞する監督に戻って、チームも大躍進!」

……なんてことが、ゾンビ翌年の5年目監督に起こるだろうか。ああ、もしもそれが起きたならば、おれの信仰も揺るぎないものになるのだが!

 

 

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(2026/9/16更新)

 

 

【著者プロフィール】

黄金頭

横浜市中区在住、そして勤務の低賃金DTP労働者。『関内関外日記』というブログをいくらか長く書いている。

趣味は競馬、好きな球団はカープ。名前の由来はすばらしいサラブレッドから。

双極性障害II型。

ブログ:関内関外日記

Twitter:黄金頭

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