PIVOT公式チャンネルで、こちらの動画を見た。
私にとっては内容が衝撃的過ぎて、3回も見てしまった。夫にも友人にもリンクを送って視聴を勧めたし、動画の中で紹介されている本も買いに走った。
語られているのは「文章の経済的価値が劇的に下がっている」ことについてだ。
・インターネットが文章を無料で流通させてきたこと
・動画の方が情報を取るのに効率的だという認識が広まったこと
・そして生成AIによって文章を作るコストが限りなくゼロに近づいたこと
その三つが重なって、文章の価値が急速に失われつつある、という話だった。
聞きながら、「まあ、そうだろうな」と思った。
そんなの知ってた。言われなくても分かってた。
AIが来て、ライターは絶滅すると言われてる。そうなんだろうね。
親しいライター仲間たちに会っても、みな一様に
「原稿料が上がらない」
「いくら知名度が上がっても、ライターの仕事一本では、とても食べていけない」
と嘆いている。
でも、動画を見て気がついた。私が、ちゃんと分かっていなかったことがあった。
ライターよりも先に、読者が絶滅しようとしているんだ。
そうか。そうだったんだ。
よほどの活字好き以外、人はもう文章を読まないことがデフォルトになっていたんだ。
そこで、私は慌ててnoteで有料マガジンを作った。
ここに公開するのは、かつて企業のオウンドメディアに寄稿し、媒体の閉鎖とともに消えていった記事たちだ。
企業側の事情と都合でWebメディアが閉鎖するのは当たり前のことだし、記事が消えるのも仕方がない。けれど、時間をかけて、頭を捻って、記憶を掘り下げて書いた記事ばかりなのだ。一つ一つの記事に思い入れがある。
だから、「今は会社員として忙しいけれど、いつか余裕ができたら、あの原稿たちをリライトして、有料で売ろう」などと、頭の隅でぼんやり考えていた。
書きためてきた原稿は、私の資産だと思っていたから。
でも、呑気にかまえて先延ばしにしているうちに、時代はとっくに前に進んでいた。
もはや一刻の猶予もない。私が書いたものが完全に無価値になってしまう前に、早く届けなければ。ほんのわずかでも価値を見出してくれる誰かが居るうちに。
今の時代、長い文章を読みこなせるのは特殊能力であり、いまや世の中のほとんどの人は、もうわざわざ長い文章なんて読みたいと思っていないらしい。
だいたい長文を読めなくたって、ちっとも困らないそうだ。
読む気が起こらないような長さの文章は、AIに放り込んで、要約させて、「要点だけを押さえればいい」ってなっていってる。
つまり、これから先、長い文章はAIしか読まなくなってしまう。人間の読者がいなくなる。
とはいえ、AIは活字を吸収して学習するのだから、世の中から文章がなくなるわけじゃないだろう。
それに、今だって本が全く売れていないわけでもない。
本を読む習慣がない人でも、「実利的な目的を達成させてくれる本」なら、ちゃんと読むのだそうだ。
だから、テキストという形式は残り続ける。でもその場合、世の中に必要とされるのは、あくまで「情報を伝えるための文章」であって、「文体で読ませる文章」ではない。
文章に書き手の個性など必要なくなるってことだ。
私は、ブロガーやライターになるよりずっと前の若い頃から、「文章力がある」「視点が面白い」と言われてきた。
だから、それが私の武器なのだと思っていた。得意なことであり、他人に認めてもらえるスキルなんだと。
だけどそれは、もう人に認めてもらえる価値じゃないんだ。
じゃあ、私の価値ってなんなの?
動画の中で、MCの佐々木さんがこんなことを言っていた。彼はテキストメディアから動画メディアへとシフトした人物だ。
「ここ(テキスト)に縋り付くと、(会社が)潰れるなと思ったんですよね。これはもう、自分の刀を捨てるみたいなものですよね。捨てないといけないな、と。
けど、意外と辛くないというか。私は本とか、テキストを愛してきたのではなくて、濃い情報とか知識そのものを愛してきたので、その届け方が変わっても、やっていることはそんなに変わらない」
なるほど、と思った。
「濃い情報とか、知識そのものを愛している」
それなら私にも言えることだ。考えてみれば、私は今でも本をたくさん読んでいるけれど、同時に、情報を摂取する手段としては動画を頼り始めている。それはつまり、私が愛しているのは「文章」という形式ではなく、知ることそのものへの欲求なのかもしれない。
知的好奇心、と呼ばれるもの。
集めた情報を理解すれば知識に変わる。得た知識を何かに役立てれば、知恵に変わる。その過程が、私は好きだ。
AIが人間の知的労働を代替するといっても、だからといって、人間が知識を得て、知性を磨く行為が無駄になるとは思わない。むしろ逆じゃないだろうか。
AIはあくまで道具であって、それを使う人間こそがフィルターだ。
つまり、ユーザー(人間)の判断力や、教養や、経験や審美眼がフィルターになるのだ。
AIが人間の知的労働を代替していく世の中では、「AIを使えるかどうか」は最低条件であって、AIの出力に差がつくのは、その先にあるフィルターの性能しだいという実感がある。
だとすれば、AIが強力になればなるほど、人間としての知性を磨くことの価値は上がるはず。
テキストを読むことが非効率とされ、文章を書くことの経済的価値が消えていく時代に、それでも読書を続け、文章を綴ることの意味は、多分そこにある。
私がこれからどこへ向かうのかは、まだ分からない。時代は今まさに移り変わっている最中だから、答えは出ない。
だけど今日も、私はこうして文章を書いている。
たとえ経済的な価値がなくなっても、文章を書くことは、私自身の思考を整理する手段として役に立っているから。
Google検索にAI Overviewが表示され、ChatGPTやPerplexityで情報収集するユーザーも増えています。検索順位を上げるだけでは、企業の情報が見つけられなくなる時代に、何をすべきか——。Books&Appsの弊社ティネクト代表安達裕哉が「経営oneplusサミット2026 Summer」に登壇します。

<2026年7月30日 開催予定>
AI検索対策最前線:手法から効果測定まで
安達裕哉 登壇|経営oneplusサミット2026 Summer 内セミナー講演概要
これから重要になるのは、AIに正しく理解され、引用され、推奨されるための情報発信です。SEOからAIOへと変わりつつある考え方から、具体的な対策手法、効果測定の考え方までをコンパクトに解説します。
登壇者
安達裕哉(ティネクト株式会社 代表取締役社長)
Deloitteで12年以上にわたり大企業から中小企業まで業務プロセス改善コンサルティングに従事。近年はAIによるコンテンツ作成を専門とする。著書に『仕事ができる人が見えないところで必ずしていること』『頭のいい人が話す前に考えていること』など。
開催日時:2026年7月30日(木)13:35-13:55
配信形式:オンライン(経営oneplusサミット2026 Summer 内)
参加費:無料
特典:事前申込でアーカイブ動画(2週間)を全員にプレゼント
お申込み・詳細
こちらのイベント詳細ページ をご覧ください。
(2026/6/26更新)
【著者プロフィール】
マダムユキ
ブロガー&ライター。
リンク:https://note.com/flat9_yuki
Twitter:@flat9_yuki












