「頭のいい人が話す前に考えていること」という本を、3年ほど前に書いた。
今回は、これに関して少々、付加的な話題を取り上げてみたい。
この本の最大のポイントは、
「頭が良い」とはどういうことか?
という質問にある。
従来、「頭をよくする」「頭を鍛える」といった趣旨の本は、自分一人で完結する能力のことを議論していた。
例えば、論理的思考力や、IQなどの認知能力、地頭、教養、あるいは分析能力などがあるだろう。
しかし、学校ならいざ知らず。
仕事やプライベートにおいて「頭が良い」とされるのは、他者とのかかわりの中で成果を上げる能力の影響が大きい。
つまり、コミュニケーションを通じて
・信頼関係を作る
・その場を生産的にできる
・お互いの目的を達成できる
といったことができる人が「優秀」とされる。
そういった話を某所でしていたところ、その場のある方から、
「そうすると、頭の悪い人」はどのような話をしてしまう人なのでしょうか?
という質問を受けた。
「頭のわるい人」というのは何を言ってしまうのか
上の定義に照らし合わせると、生産的なコミュニケーションが取れないときに、
「言っていることが芯を食っていない」人、つまり「頭のわるい人」だとみなされてしまうことになる。
具体的には、概ね以下の3つのようなことをしてしまっている場合だ。
1.嬉々としてアドバイス(ないしは提案)してしまう
「してはいけない行為」の代表が、話を聞いてすぐにアドバイスすることだった。
これは、以下のような理由による。
・相手が話したことがすべてとは限らない
・相手が「アドバイスをくれ」と言っていたとしても、本当にアドバイスを必要としているかどうかわからない
・アドバイスが的確であったとしても、相手がそれを好み、実行するかわからない
つまり、本来は
自分のアドバイスが、相手の真の欲求に応じているのか、確信を持てるまでは何も言うな。
が原則なのだが、この原則を破ると、たいてい相手にとっては「迷惑」となり、こちらの能力、果ては人格まで疑われてしまう。
2.質問攻めにしてしまう
かといって、相手のことを知ろうと「質問攻め」にするのもよくない。
勘違いしている人も多いが、「話を聞くこと」と「質問をすること」は、かなり異なる。
「質問は相手に負担をかける行為」だということわかっていない人が多いのだ。
話を聞くだけであれば、「質問」ではなく、「次の話を促す」「じっと待つ」でよい。
例えば、良い車に乗っている人に
「車が趣味なんですね?」
と聞いたときに、相手の反応が
「はい。」
という程度で、うすい反応が返ってきたとしたらどうするか。
あれ?聞いちゃいけなかったかな?と思って、すぐに別の質問
「普段は何をしているのですか?」
等と聞くのは、良くない。
質問攻めにしているからだ。
このような場合には率直に、なぜそれを質問したかなど、自分の思ったことを話したほうが良い。
「停めていた車が気になったもので。」
「私も車が好きなんです」
など、こちらの話を少しだけすることで、相手の思考負荷を下げることができる。
そうして、こちらの話を小出しにしながら、相手が話してくれるのを待ってもよいし、相手が何か言いたそうであれば、それを助けるのが良い。
3.評価を述べてしまう
そして最も重要な事実として、人間関係において、相手に不快を感じる大きな理由の一つは、「評価」「価値観」のくいちがいである。
具体的には、
「好き/嫌い」
「良い/悪い」
「面白い/つまらない」
「賢い/愚か」
「格が高い/低い」
「すごい/普通」
などを安易に述べてはならない。
主観的判断に関する話は、親しい相手ですら、相手の価値観がわかるまで積極的にすべきではないのだ。
本来、評価はきわめて慎重に行うものである。
好き嫌いを頻繁に述べるのは、人間関係において大きなリスクであると認識したほうが良い。
というのも、その話題について、相手がどう思っているか、わからないからだ。
相手が「そうですね」と言ったとしても、内心どう思っているかを推測することはほぼ不可能である。
さらに「評価」は、嫉妬、羨望、差別意識などが根っこにある場合、さらに大きな問題を引き起こす可能性がある。
例えば、私の知人に、話すたびに
「〇〇さんはすごい」
という、ポジティブな話ばかりする人がいた。
一見良いように見えるが、実は周りの人から内心、嫌われていることも多々ある。
というのも、「すごい」というのは、評価に属する話題であり、「普通の人は眼中にないよ」「うらやましいでしょう」というメッセージととらえる人も少なくないからだ。
意識高い系が嫌われるのは、このためだ。
であれば、表現として
「~をやっています」
「~が得意です」
とするなどの工夫が必要である。
あるいは相手の話に対して、「私も好きです」などと、安易に同調するのではなく
「そうなんですね」
「初めて知りました」
「こういう場合はどうでしょう」
などの、評価を挟まない表現を使うほうがベターである。
できる限り「フラットに」「一緒に」「好奇心をもって」
ピーター・ドラッカーが述べるように、良い人間関係とは、生産的である。
したがって、以下の態度が基本となる。
・フラットに接し、すぐに評価せず、吟味する
・教える/教えられる だけではなく一緒に考えることができる
・話題にかかわらず、相手の話していること自体に興味を持つ
特に最後は重要で、これは、「相手の話していることを おもしろい/おもしろくない」という軸で「安易に評価してはならない」ということである。
「これ好きなんだ」
「私も好き!」
と、話がとんとん拍子に進めばよいのだが、こうした話し方は一方で、
「これ好きなんだ」
「私は興味ない、こんなのが好きなの?」
と逆回転した場合、簡単に人間関係を破綻させる。
したがって、相手の話を評価するのではなく、
「なぜこの人は、この話題に興味を持っているのだろう」
と、一段上がって考えることのほうが、より生産的な関係を作りやすい。
そうすれば自然に、「相手」自身に興味が出てくる。
リスペクトもわいてくる。
これが「頭のいい人」の基本的な考え方なのである。
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(2026/8/3更新)
【著者プロフィール】
安達裕哉
生成AI活用支援のワークワンダースCEO(https://workwonders.jp)|元Deloitteのコンサルタント|オウンドメディア支援のティネクト代表(http://tinect.jp)|著書「頭のいい人が話す前に考えていること」92万部(https://amzn.to/49Tivyi)|
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