子供の頃から、「努力は報われる」という言葉を何回聞いたことだろうか。努力の大切さを語るときに使われる言葉だ。でも、本当に世の人は皆そう思っているのだろうか?多分本音はNoではないだろうか。

 

子供に勉強させたかったら、「努力すれば報われる」と言っておく、学生に勉強させたかったら「努力すれば報われる」と言っておく、社会人に仕事をさせたかったら、「努力すれば報われる」と言っておく。

 

でも、皆信じない。子供ですら信じない。そんな言葉だ。

なぜなら、「でも、報われない人もいるじゃないか」と言われてしまうからだ。実際に努力しても報われない人は大勢いる。というか、報われない人のほうが多いかもしれない。こう言われてしまうと、「努力派」の人はこう言うだろう。

 

「努力は最低条件」だ。努力しても報われないかもしれないが、成功した人は皆努力している。

 

この言葉が、全く説得力がないことについては多くの方の賛同をいただけるだろう。なぜなら、「努力は報われる」といっておきながら、「報われないかもしれない」と手のひらを返し、「成功した人は」と別の条件を持ち出している。

 

よって、「別に成功したくないんだけど」という人には、何も響かない。「うちの社員には意欲がなくて・・・」とぼやく人も多いが、おそらくそういう人の頭のなかは、「欲がない」、「意欲がない」、「努力しない」ということがセットになっているのだろう。

 

 

このズレの原因は明らかに、「努力」と「報酬」をセットで語っているところにある。要するに、「努力」というのは「報酬を得るための苦行」と考えている人が多いから、このズレが生じるのだ。報酬に興味のない人を動かすことは出来ない。

「いい大学、いい会社に入るために勉強しろ」という言葉も一緒だ。今の時代、「努力」は「報酬」を約束してはくれない。だから、最近では「別に努力なんてしなくいていいんじゃない?」「働かなくてもいいんじゃない?」という人が出てきているのだろう。

 

 

従って、「報酬」を努力の理由にする事はできない。というより、本当は「努力する理由は報酬を受け取れるから」では無いのだ。

では、なぜ努力するのか?答えはカンタンだ。実は、努力する人は、「努力しないと耐えられないから、そうしている」のだ。

もちろん、努力は辛い。しかし、直感に反するかも知れないが、明らかに「努力をしている方がラク」である。

 

それは人間が「無為」「ヒマ」に耐えられないからだ。人生は常に不安である。何もすることがない、何もしていない、というのはその不安と正面から戦わないといけない。お金を持っていて、生活に何一つ不自由がないように見える人も、最終的には病の恐怖、死の恐怖と戦わなくてはいけない。

何かに没頭することが、精神の安定にとって重要であることは、間違いない。

 

実は、引きこもりは大変な精神力を必要とする。毎日が自分を正当化するための戦いである。彼らも「このままではいけない」と常に不安だ。不安を紛らわすためにゲームなどをやっていても、不安は消えない。むしろ増大する。

普通の人に、「働かなくてもいいんじゃない?」は、結果的に更に精神を不安定にすることにつながるかもしれない。何しろ、毎日何かをすることで、つらい現実を少しでも忘れることができるのであるから。

 

映画「マトリックス」にこのような一節がある。

 

”マトリックスは、君たち人類が作ったのだ。楽しくて、幸福な生活のためにな。だが人類とは不思議なものだな。不幸とか苦しみがないと、かえって不安になるらしい。”

 

「努力すれば報われる」ではない、「努力することで初めて、人生が不安なく送れる」のである。

 

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【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
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(2025/6/2更新)