テレビショッピングでよく知られる「ジャパネットたかた」の業績が、マズイことになっている。
2010年のピークを境に、2012年は2007年と同水準、今年の決算がマズければ、社長は引退すると宣言している。
なぜ、ジャパネットたかたの業績が伸び悩んでいる、というより下降しているのか。記事によれば、主たる原因は家電の売上の落ち込みだ。
現在、家電が売れなくなっているという。2010年には月間で200億円以上の売上を出していたテレビが、今では5~10億円程度になった。
また好調だったパソコンもスマートフォンに食われ、今年になってからはタブレット端末が大変な勢いで売れている。さらにはカメラ機能を搭載したスマートフォンによってデジタルカメラが、今年に入ってからはカーナビが売れなくなってきているという。
Amazonなどのインターネット通販に押されている、という話もあるが、それは的はずれだろう。それは、Amazonとジャパネットたかたの顧客層が異なるからだ。
ジャパネットたかたの売上比率にはユニークなデータがあります。40代以上の売上の約8割に上り、20代と30代の売上は合わせて7%しかありません。しかも、売上商品の多くは40代以上に馴染みの薄い家電やコンピュータなどの機器となっています。
中高年の多くは、電子機器に馴染みが薄いため、ネットでの売上というのは期待できません。中高年にターゲットを絞り、ピンポイントに宣伝活動を行った結果が、折り込みチラシやCMの多用につながったと考えられます。Amazonなどの競合に負けずに張り合って戦えるのも、インターネットという同じ土俵を避け、ニッチな中高年という年齢層に絞って戦略を考えたからでしょう。(U-NOTE)
ジャパネットたかたの商品は安くない。というよりむしろ「高い」。だから、Amazonを使うような人々は、ジャパネットたかたからは買わない。ジャパネットたかたから購入するのは、テレビを良く見て、新聞をとっている中高年たちだ。
今まではデジタル機器に接点がなかった中高年にも、デジタル機器への扉を開いたという意味で、ジャパネットたかたの貢献は非常に大きい。デジタルテレビ、デジカメ、パソコン、こういった便利ではあるが、「ちょっと敷居が高い」機器類を、わかりやすく実演して届けた事が、支持されたのだろう。
しかし、おそらくそういった人々の需要が一巡した今、彼らはどこに市場を求めるのだろうか。
現在(2013年11月)のチラシを見てみると、「羽毛布団」や、「マッサージチェア」、「掃除機」、「ハンディカラオケ」、「ウォーキングシューズ」、「ルームランナー」などが掲載されており、「脱家電」を目指しているような動きだ。
数多くの会社を見たが、多くの中小企業では現在ある商品を「もっと多く売る」ことにはリソースをつぎ込むが、「商品開発」には消極的だ。ひどい時には、社長が片手間でやっていたり、100名の会社でも5名程度しか専任がいなかったりする。
しかし、どんな商品であってもいずれ市場は飽和する。儲かった時に社長の車をレクサスにしたりせず、既存商品が好調なときほど「今すぐは儲からない事業」やっておくべきなのかもしれない。
「ジャパネットたかた」が今後、商品ラインナップの転換をどのようにやっていくのか。注目である。
つづき:ジャパネットたかたがV字回復、社長交代。何が起きたのか?
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】 ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。
(2025/6/2更新)
ティネクト代表の安達裕哉が東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。
ティネクトでは現在、生成AIやマーケティング事業に力を入れていますが、今回はその事業への「投資」という観点でお話しします。
経営に関わる全ての方にお役に立つ内容となっておりますでの、ぜひご参加ください。東京都主催ですが、ウェビナー形式ですので全国どこからでもご参加できます。
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ——
「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。
【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
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・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
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3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
筆者Twitterアカウント▶安達裕哉(人の能力について興味があります。企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働者と格差について発信。)
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