高校生の頃は、たんなる事実の暗記にしかすぎない歴史に何の面白みも感じなかったのだけど、この歳になって物事を検証するのに様々な視点がある事を遅まきながら理解でき、歴史も1つの壮大なストーリーとして興味深く読めるようになった。

 

さて、歴史というと山川出版の日本史の教科書が有名だ。高校時代にお世話になった人も多いだろう。

もういちど読む山川日本史

もういちど読む山川日本史

  • 五味 文彦,鳥海 靖
  • 山川出版社
  • 価格¥1,140(2025/06/10 00:42時点)
  • 発売日2009/09/01
  • 商品ランキング292,523位

僕は高校生時代にあれを読んで「なんでこんなにわかりにくく本を書くんだろう」と憤慨したものだけど、最近は一周回ってむしろ逆に山川凄ぇ!と思うようになってしまった。

 

というわけで今回は山川出版の日本史がなんであんなにもわかりにくいのかについてと、わかりやすさの罠についてを書いていこうかと思う。

 

物事を中立に語ると事実の羅列にしかなれない

大化の改新、645年。

いい国作ろう、鎌倉幕府。

こんな感じで年表をいかに暗記するのかが日本史の勉強だと思ってる人も、結構いただろう

(ちなみに今は大化の改新は646年、鎌倉幕府は1185年と教えられている。くれぐれも間違えないようにしたい)

 

日本の歴史の教科書には大量の事実が列挙されているのだけれど、その間のつながりについての記述は驚くほど少ない。

なんであんなにわかりにくい、無味乾燥なものが教育市場に出し続けられるのか、疑問に思った人もたくさんいただろう。

 

僕も10代の頃はあれが本当に理解できなかった。けど今ならああいう教科書が作り続けられる理由がよくわかる。物事を語るにあたって、中立を維持しようとするとなると、事実しか語れなくなるのである

ストーリーというものは、基本的には何らかの価値観を元に構築されるものである。日本民族がいかに優れているかという視点で歴史を分析すると、それは右翼的な記述にならざるをえないし、平等であろうとすれば、それは左翼的な価値観を元に記述せざるをえなくなる。

 

価値観というのは、炎上成分の塊だ。かつて新しい歴史教科書というものが話題にあがった事があったが、あれがなんで炎上したかといいえば、右翼的な視点から歴史を記述しようとしたからに他ならない。

人がストーリーを作り出す為には、どうしてもそこに価値観とかを編入せざるをえない。けど、それやると思想教育だと罵倒されるリスクがどうしてもつきまとう。

 

山川の日本史の記述がくそつまらないのは、炎上のリスクを徹底的に回避したが故に他ならないのである。

 

山川の日本史のジレンマ

ただまあ事実として、山川の日本史の教科書は無味乾燥すぎて勉強するのには非常に辛いものがある。

受験生の99%は、あの無味乾燥すぎる記述に耐えきれず、わかりやすい参考書や予備校講師の授業に頼ることになる。

 

ここに現在の日本の教育のジレンマが集約されている。わかりやすく歴史を語る為には、どうしても価値観が必要となる。価値観なしには歴史にストーリーという論理だったものを付け加えることは不可能であり、そして価値観というのは究極的には右に偏るか左に偏るかのどちらかにいかざるをえない。

そうして純真無垢な高校生は、本人も知らないうちに受験勉強の過程において、右もしくは左に偏った思想を身に着けざるをえなくなるのだ。受験勉強を通過する為にはある種の洗脳教育を通過しなくてはいけないというのは、非常に興味深い現象である。

 

大人になってから読むと山川の教科書は非常に面白い

ある程度大人になってから、右翼的な思想とか左翼的な物の見方を持った後に山川の日本史の教科書をみると、自分の思想がどちらに傾いているかが客観的にわかるので非常に面白い。

 

事実というのは真実だ。例えば源氏と平氏がいたというのは事実であり、それ以上でも以下でもない。けど源氏が何故平氏に勝ったのかを分析するとなると、そこにはどうしても価値観が介入せざるをえなくなる。

参考書や予備校講師はそれをさも唯一無二の事実のように語るが、実はそこには解釈のしようはいかにでもある。それはひょっとしたら運かもしれないし、ある種の民族的な優位性があったのかもしれない。けど、本当のところ何が優れていたのかについての正解は、誰にもわからない。

 

わからないのなら、本当にそれを誠実に語るとなると源氏が平家を滅ぼしました意外の事は欠けなくなる。けどそうなると、無味乾燥な事実しかかけなくなる。そうして事実だけが記載された教科書は、物凄くつまらないものとしてこの世に生み出される。

そうして死ぬほどつまらない教科書を元に勉強させられた受験生は、頭の中で無意味な記号の羅列を入れ込んで、受験会場に突入し、そしてそれを全て吐き出した後に、ゆっくりと時間をかけてそれを全て忘れていく。

 

実に虚しい行為ではないだろうか?個人的には事実を事実として認識する事は大切だとは思う。

けれどそれをするとただの内容を全くわかってない暗記マシーンを大量生産され、大学卒業する頃には全部何もおぼえてない人間が生み出されるだけだと思う。

 

だからこそ、日本史教育は多少右に寄ってもいいから視点をもって習得させるべきだと個人的には思う。ただ、そういう風には恐らく日本の教科書はならないだろう。だって炎上、死ぬほど怖いじゃないですか?

 

というわけで、そういう観点を元に山川の日本史の教科書を読み解くと、凄く興味深く物事が読みとけたりしますので、社会人のみなさまにおかれましては、週末に山川の日本史でも一気してみてはいかがでしょうか?

いろんな葛藤が行間に見え隠れして、面白いですよ。

 

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安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
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(2025/6/2更新)

 

 

 

【プロフィール】

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高須賀

都内で勤務医としてまったり生活中。

趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。

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noteで食事に関するコラム執筆と人生相談もやってます→ https://note.mu/takasuka_toki

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