人が長生きできるようになったのはつい最近の事だ。昔は得られる食物の数に限りがあり、天候の悪化に伴って凶作になればすぐに飢饉が生じていた。

 

ところが人類はテクノロジーによりこの限界をやすやすと突破してしまった。

今では痩せた土地だろうが空気中から窒素を取り出して肥料としてまけば、すぐに肥沃な大地へと変えることができる。その事により人類は飢饉をほぼ克服し、現在では先進国では餓死する人は殆どいなくなった

(なお化学肥料の開発は高校の化学で習う無機化化学のハーバーボッシュ法の応用である。無機化学は高校の授業ではサラッと流されてしまうが、実はこのように人類史上でも極めて重要な発見の1つだ)

 

その他にも病気などといった生き続ける事を困難にする障害も多数あったのだが日々の科学技術の進歩の度合いはすざまじく、キリストが生まれて2000年たった今、人類はかつてと比較して非常に長生きできるようになり滅多なことでは死ななくなった。

 

 

かつてはそもそも生き抜く事自体が非常に難しかった。それ故に人は「いかによく生きるべきか」のみに目を向けていればよく「いかによく死ぬべきか」についてほとんど頭を巡らせる必要がなかった(普通に生活していれば些細な事で簡単に死ぬんだから当たり前だ)

昔は普通だった餓死も現代では異常現象の1つだし、かつては死に至るような病も結構普通に克服できるようになってきている。

 

こうして生き抜くことが比較的容易になると、以前のような「よりよく生きる事」だけ考えてればいいような社会ではなくなってくる。現時点でこの文章を読んでいる健康な日本人のあなた。あなたは自分がどういう風に死ぬのかについて、どれだけ知識があるだろうか?

古来より死について語る事がタブーとされてきたからか、この手の知識を持っている人はほとんどいない。健康で文化的な生活を営むことができる私達だが、いつまでも若くてピチピチな体で健康で文化的な生活をおくられるわけではない。残念ながら老いはまだ克服できていないからだ。

 

当たり前だけど現状では命は有限だ。いつまでたっても若い体は保てないし、残念ながらあなたも、あなたの大切な人もいつか死ぬ。人の死亡率は100%である。

こうしてみれば、死についての知識は極めて大切なもののはずである。だけど実際問題、人は何が原因で、どういう経緯を辿って死ぬのかについてキチンと説明してくれるものは殆どない。

と、いうわけで死についての記事を以下数回にわけて書いていくことにする。

 

日本人は何が原因で、どうやって死ぬのか

統計によれば日本人の平均寿命は女性が約86歳。男性は約80歳だ。ほとんどの人はこの年齢までは生きる。平均寿命はなんとなく知っている人も多いと思う。けど実際問題、何が原因で死ぬのかを知っている人はあまり多くないだろう。

 

実は死因については厚生労働省が毎年キチンと統計をとっており、これはググれば誰にでも簡単にみることができる。ちなみに厚生労働省の平成 26 年 人口動態統計月報年計によると、日本人の死亡原因の割合は以下のとおりである。

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以下死因を箇条書きにすると

 

1位はがん。これが約30%。

2位が心臓の病。これが15%。

3位が肺炎。これが10%

4位が脳卒中。これが10%。

5位が老衰。これは6%。

 

つまりあなたは、およそ70%の確率でこれらのどれかで死ぬ。あなたがどういう風に死ぬのかは、高い確率で上の5つに集約される(このデータからわかる驚くべき事実の1つが、老衰が6%しかないという事である。ほとんどの人が老衰にて眠るように死にたいと思っているかもしれないが、残念ながら日本人の90%近くは何らかの病で死ぬ)

 

このように誰でも簡単に「何が原因で死ぬのか」についての知識は知ることができる。けど残念ながらどういう風に死ぬのかについてはデータは語ってはくれない。

 

がんってかかったらどれだけ生きられるのか?長い間苦しむのか?

 

心筋梗塞って痛いんだろうか?

 

このようなクオリティに関する事については、データは何も語ってくれない。

死を議論する上で本当に大切なのはどういう経緯を辿ってどれぐらいの期間で死ぬのかについての知識だろう。これらの知識をしっかりと抑えた後ならば、自分がどういう風に生きたいかについての見地も深くなるはずである。

今回は原因について書いた。 次回より幾つかに分けて、そもそも人が死ぬという事はどういう事なのかについてと疾患別の死に方について書いていこうと思う。

 

 

プロフィール

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高須賀 ←名前をクリックすると今までの記事一覧が表示されます

都内で勤務医としてまったり生活中。

趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。

twitter:takasuka_toki ブログ→ 珈琲をゴクゴク呑むように

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