こんにちは。「コンサルポータル」主宰、AscentBusinessConsulting代表の北村です。
少し前に記事としても書きましたが、元外資系コンサルタントは今、企業から引っ張りだこです。
(参考:今、人材市場で「コンサルティングファーム出身者」が非常に優遇されている理由。)
その理由は、単純に言えば「仕事のできる人が多い」の一言に尽きるでしょう。
外資系のコンサルタントの1時間あたりのチャージは最低でも数万円、ときに10万円を超えることもありますが、仕事をきちんと遂行してもらえれば、企業はお金を出すのです。
では、なぜ彼らは仕事ができるようになったのでしょう。
「もともといい人を採用しているのでは?」と言う方もいますが、新卒で就職する時点では、一般企業に入社する人と、外資系のコンサルティング会社に入社する人の能力にそれほど差はないでしょう。
たとえ差があっても、微々たるものです。
実は、真に差がつくのは、そのあとの3年間です。
外資系のコンサルティング会社の離職率は年間3割と高いですが、しかし、その3年間を耐え抜いた人は、かなりの実力を身につけることができます。
では、コンサルティング会社はどうやって人を鍛えているのか?
それは2種類です。
1.研修で事務処理能力を上げる
2.ケーススタディで実務能力を上げる
詳しく見ていきましょう。
研修で事務処理能力を上げる
コンサルティング会社は一般的に、研修が充実しています。
短期間である程度のスキルを網羅的に身につけるには、体系化された研修が最も効率が良いのです。
特に新卒でコンサルタントになった人は、非常に厳しい研修を受けることになります。
Office系ソフトの扱いから、ロジカル・シンキング、企画書や提案書の方法論、資料の作り方から、プレゼンテーションのやり方まで、少なくとも「優秀な事務員」として活躍できるように、徹底的に知識とスキルを詰め込まれます。
特に厳しいのは研修で出される宿題です。
とても業務時間内には終わらないほどの量の課題が次々と出されますが、それらを確実に遂行することが求められます。
「厳しすぎでは?」と思う方もいるかもしれませんが、今も昔も、必死に膨大な量の練習をこなすことが力量を高めることは真理です。
例えば「甲子園の常連」と言われる高校野球チームの監督は、ほぼ例外なく恐ろしい量の練習を選手に課しています。
【高校野球】伝統校・横浜高の変革 平田新監督が目指す「自主性を育てる野球」とは
1週間の流れを見ても、詰め込みすぎにはなっていない。
月曜は練習が休みで、火曜と水曜は通常練習、木曜はウェイトトレーニングの日で全体練習はない。金曜に再び通常練習を行い、土曜と日曜は練習試合。
特に投手陣は、月曜日以外の週2日をキャッチボールを含めたノースロー調整とし、高校野球の最大の弊害とも言われる“投げ込み過ぎ”をなくす取り組みをしている。
週6日間、毎日4時間以上も練習することが、「詰め込みすぎではない」というのは、もはや普通の感覚ではないでしょう。
実際、ある戦略系のコンサルティングファームでは、新人は入社して数ヶ月の間、エクセルの分析ツールを自然に使いこなせるように要求されます。
そこでは「手取り足取り」とか「その人のペースに合わせて」ということはまずなく、「宿題をやりなさい。できなかったらサヨウナラです。」というペースで研修が行われます。
実際、研修期間中にクビになってしまう人もいるほどです。
言うなれば「外資系のコンサルティング会社」は、ビジネス界の甲子園、オリンピックを目指す人々であり、「自分自身で厳しい人生を選択してきている人たち」なのです。
ケーススタディで実務能力を上げる
しかし、研修で教わることをパーフェクトに身に着けたとしても、せいぜい「優秀な事務員」の域を出ることはありません。
それらはあくまで基礎体力の一部であって、本質ではないのです。
実際、コンサルタントにはさらに「問題発見」「問題解決」「関係者の説得」などの高度な知識労働が求められ、現場にそれらを適用することが求められます。
そして、それらの能力は研修では身につきません。
それらの能力を高めるのは、実践です。
つまり「理論の知識としての習得 → 現場での適用 → フィードバック → 知識のアップデート → 現場での適用 → ……」
というサイクルが回らない限り
「頭でっかち」
「言うことは立派だけど、実践が伴わない」
「机上の空論」
という批判は免れません。
そのため、社内では定期的に現場での実践力を鍛えるための「ケーススタディ」が行われます。
そして、コンサルティングファームの「人を鍛える力」の源泉は、このケーススタディにあると言っても過言ではありません。
一般的に、ケーススタディはマネジャー以上の、「エース級」人材によって行われます。
また、ケーススタディにはテーマがあり、現実に近づけるため、できるだけ実際の案件が用いられ、また、出席者にはケースの予習が義務付けられます。
当日。コンサルタントの卵たちは一堂に会し、上司をお客さんに見立て「お客さんとのやり取り」を皆の前で披露します。
「ロールプレイだったら、ウチもやっているよ」という方もいるかもしれません。
確かに、一般的な事業会社でも、ケーススタディやロールプレイをやっているところは少なくありません。
しかし、コンサルティングファーム出身者たちは「ケーススタディは憂鬱だった」と口をそろえて言います。
実は、コンサルティングファームのケーススタディが他と異なるのは、その「厳しさ」に於いてです。
というのも、ケーススタディの事例は殆どが「現場での窮地」をベースにしているのです。
つまり、「お客さんからメチャクチャ詰められている」のがこのケーススタディのデフォルトです。
・「お客さんがきちんと頼んだことをやってくれないのに、こちらに責任を押し付けてきている時」のケース。
・「昨日決まったことが、社長の一言でひっくり返ってしまった時」のケース
・「お客さんが法律違反をしていることを見つけてしまった時」のケース
・「顧客側の内部対立に巻き込まれてしまった時」のケース
・「間違った施策をやめさせ、うまくプロジェクトを再起動させる時」のケース
など、あらゆるシーンにおいて「窮地」を克服するための知恵と実践的方法を、コンサルタントたちは叩き込まれます。
このように「事務処理能力」と「問題処理の実践能力」の2つを身につけ、ようやくコンサルタントは一人前とみなされます。
「仕事でここまでやるのは厳しすぎでは?」
「メチャクチャ働かせるのは、時代に逆行していないか?」
という批判もあるかもしれません。
しかし、コンサルタントを目指す人は、その会社に「自分で選択」して来ているのです。
それこそ、「働くな」なんて、余計なお世話以外の何物でもありません。
むしろ、外資系コンサルティング会社は非常に人に優しいです。
なぜかといえば、お客さんに行く前に、徹底的に「窮地」を脱する練習を積ませてくれるのです。それこそ、お客さんの前に行ったときに
「思ったよりお客さんは優しいし、仕事って意外に簡単じゃない」と思えるくらいに。
彼らはまた、2,3年やって芽がでなければ、「諦めたほうがいいよ」とはっきりと言ってくれます。
大人のほんとうの意味での「優しさ」ってそういうものじゃないでしょうか。
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(Photo:Jonathan Mueller)