魅力ある商品、というものをどこの会社も欲しがっている。「営業」も「販促」も力を入れる必要はなく、多くの人が喜んで使ってくれ、しかも世の中の役に立つ。そんな商品を求めて、企業は今日も奔走する。
iPhoneの競争力が失われている、との話が最近多い。
Appleはあまりにも期待されすぎているため、「ちょっと良い」程度の商品では皆が許してくれない。iPhoneは世界を変えるほどの力を持った「魅力ある商品」だったが、すでに今はそうではないのだろうか。実は、個人的には、iPhoneにすでに魅力はないと思っている。
実際、私は、iPhoneを3G、3GSと使って、4を買わなかった。次に買ったのはHTCのEvo3Dというスマートフォンだった。正直、HTC Evo3Dはそれほど魅力ある商品ではなかった。しかし、その次に買った商品には魅力があった。HTC Jという商品だ。この商品は発売当日に買いに行ったが、それ以来、ずっと愛用している。
iPhoneは3G発売当時、たしかに魅力ある商品だった。しかし、その魅力はすでに3年前に失われていきつつあった。
「iPhone4や4S、さらには5もものすごく売れた、魅力はあったんじゃないか」という人がいるかもしれない。しかしそれは違う。「売れる商品」ではあったかもしれないが、「魅力ある商品」ではない。
いつも思う。「魅力ある商品」とは一体なんなのだろう、個人的な感覚からすれば、「魅力ある商品」は見た瞬間、直感的に「欲しい」と思わせてくれる。
私は商品をじっくり考えて購入することも多いが、そう言うような商品は大抵、仕方なく買うもの、もしくは競合製品がたくさんあり、判断に迷っているものだ。「魅力ある商品」はそうではない、見た瞬間自分が欲しがっていたことがわかる。しかも、それは他の選択肢が無いものなのだ。
もちろん、お金がなくてすぐに買えないこともある。それでも「魅力ある商品」は、「お金をためて買おう」と思わせてくれる。
- デザインではない
デザインは良いに越したことはないが、デザインだけで決めることはない。
- 価格ではない
「魅力ある商品」は価格を気にして買うことはない。少々高くてもいいのだ。
- 機能ではない
もちろん機能は見る。しかしあくまで機能は「最低要件」を確認するためのものである。
- 完成度ではない
完璧でなくていい。未完成でも、少々難点が有っても、気にならないのだ。
では何なのか。それは、「期待感」であると思う。
「これを使ったら楽しいだろうな、便利だろうな」という期待感。
「これがある生活はいいだろうな」というストーリー
私は、アレックス・モールトンという自転車が非常にお気に入りだった。「こんな自転車で走れたらさぞかし楽しいだろう」と思ったのだ。
タイムドメインというスピーカーがあった。これも同じだ。「こういうもののある生活」が憧れだったのである。
MacbookAirも「魅力ある商品」だ。PCはスペックではない。使った時の楽しさが想像できるものが良い物なのだ。Wiiも「魅力ある商品」だった。Kindleもそうだ。「どんな使い心地なのだろう?どんな生活が待っているのだろう?」想像するだけで楽しい。
そして今は、iwatchや、GoogleGlassに期待している。私は、(言いすぎかもしれないが)異世界との扉になるようなものや、サービスを求めている。すでにわかっているものには魅力を感じない。
ディズニーランドの魅力が褪せないのは、異世界との扉を提供し続けているからではないか。
読書が素晴らしいのは、異文化とのコミュニケーションが図れるからではないか。仕事が楽しいのは、自分の知らなかったことが知れて、自分の体験したことのなかったことが体験できるからではないか。
Facebookがうまく行ったのは、LINEが支持されるのは、友だちとの新しいコミュニケーションの形が生まれるからではないか。
皆がゲームにハマるのは、擬似的ではあっても、「異世界との出会い」があるからではないのか。
そう考えると、「魅力ある商品」の本質は、イノベーションの本質は、人々に「新しい世界との出会い」を提供することに他ならないと考えるのである。
(2025/7/14更新)
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。
<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>
第6回 地方創生×事業再生
再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。
【今回のトーク概要】
自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”
【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。
【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
ご視聴登録は こちらのリンク からお願いします。