就職活動の時季も中盤を超えたこの時期、まだ内定を獲得できていない学生の方から「やりたいことがないんです。困ってます」と頻繁に相談される。
彼らは「やりたいことがない」から内定がもらえないと思っているようだ。
一人の学生はこう言った。
「かなりの会社をまわりましたけど、全力で打ち込めそうな、やりたい仕事が見つかりませんでした。それで、面接の時に志望動機がうまく言えないんです。」
彼らの気持ちはわかるし、本当に就職活動は大変なのだろう。頑張って欲しいと思う。
だが、「仕事は、やりたいことがないとダメ」については同意しかねる部分もある。
ある程度の期間働いてきて思うのは、
「まず前提として、やりたいことがあるのは、変態。要するに、変わった人」
ということだ。
「変わった人になりたい」というのなら止めないが、無理にそんな人になる必要もないし、「やりたいこと」というのは一種のわがままなので、追求するとそれなりに苦労の多い人生を送ることになる。
中にはやりたいことと、世の中の求めていることが合致して金持ちになっちゃう人もいるけど、まあレアケースだ。大抵の「やりたいことやってる人」は、お金に苦労している人が多い。
でも、暮らしていけないほどかというと、そんなこともない。
なんだかんだ言っても「やりたことやって暮らしていける人」がそれなりの多数いるのは、実は、世の中には「やりたいことをやっている人に憧れる人」というのが一定数いるので、そういう人の好意に甘えて食べていけるからだ。
要するにパトロン的存在とでも言えばよいのだろうか。彼らの周りには芸術家や起業家に見返りを期待せずに金だすような人たち。あるいはちょっとした仕事を出してあげる人たちがいる。
彼らは特定の見返りを求めるというよりは、そういう人に金や仕事を出すことにより、「参加意識」を求めているように思う。自分の応援するメンバーを勝たせるためにAKBのCDを買うようなものだ。
だから、やりたいことを自由にやっていても、一種の「愛嬌」があって、応援したくなるように周りの人が感じれば、なんとか食べていくことができる。
だから、「やりたいことがないんです」という人も全く問題ない。やりたいことをやろう、と言うのは変態に向けた言葉なのだ。
無理にやりたいことを作る必要もないし、追求する必要もない。だいたい普通の人は「野心」とか「欲」とかそこまで持っていない。
では、「やりたいことやってる人」はどうやって「やりたいこと」と出会ったのか。
実は、やりたいこと、というのは、自分で無理やり作り出す感情ではなく、誰かに恋愛感情を持つように、「やむにやまれず」持つものだ。
これは、誰しも感じることができる。例えば恋愛だ。「なんであんな人を好きになっちゃったの?」と聞かれて多くの人は「なんとなく」としか答えられない。そこには熟考も論理もない。純粋に衝動があるだけだ。
「やりたいことがある人」は、その衝動に巡りあった人だ。恋愛と同じで、「やりたいこと」と言うのは、突然目の前にやってくる。急に「これだ」と思う瞬間がある。
なんか、いろいろなものを捨ててもいい、って思える時が人生で一回くらいはだれでもある。だから、焦って学生の時にそれを探さなくてもいい。
就職活動を長いことしていてもそういった衝動を感じないなら、素直に「自分のできそうなこと」「興味が持てそうなこと」を探したほうが良い。
きっと働き始めたら、ある時突然、やりたいことがわかるだろう。
でも、繰り返すが20代前半で「やりたいこと」なんて無いのが普通だ。悩む必要なんてない。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
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3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)