昔から外資系には多かった形態だが、先日訪問した会社は、「成果により、社員を毎年一定数入れ替える」という厳しい会社であった。最近は日系でも増えているように感じる。

「具体的に何をしているのですか?」と聞くと、年1回の評価で、パフォーマンスの下から5%の社員には、割増退職金を払って自主退職してもらうということだ。

もっと具体的に言えば1年分の給与を払い、自主的に退職してもらう。

 

人事の方はこのように言った。

「彼ら自身もこの会社では2度と高評価はもらえない、とわかっているために皆ある程度は納得してやめていく」

更に彼は言った。

「合理的に考えれば、下から5%の社員の総額人件費は全体の数%にすぎません。パフォーマンスの悪い人は会社の雰囲気を悪くし、チームの足を引っ張りますから、その程度の人件費アップは十分許容範囲です。むしろ定期的に血を入れ替えることが、全体のパフォーマンスアップにつながります。」

 

 

なるほど、と思うが疑問もある。

「クビになるかもしれない、という状況で、みな安心して働けるのでしょうか?」

人事の人は事も無げに言った。

「下の5%の人に入る、というのはよっぽどのことがなければあり得ません。殆どの人はクビになる心配など無縁ですよ。」

 

「成果を正確に測るのは難しくないでしょうか?」

「そうですね、成績中位くらいの方々に差をつけるのは無意味ですね。例えば下2割の人と下3割の人で本当に差があるか、といえば微妙です。

ですが、下5%は、はっきりわかります。測定するまでもありません。できない人はみなわかっています。」

 

そして、彼はこうつづけた。

「ただ、勘違いしていただきたくないのが、パフォーマンスの下5%の人が無能である、ということにはならないということです。それは、彼らにも言っています。「うちに合わなかっただけです」と。」

 

私は「終身雇用について、どう思いますか?」と聞いた。

彼は、「終身雇用は、人を駄目にするシステムです。」という。

「言われたことだけをやっていれば良い、という時代には良かったかもしれません。が、むしろ、飼い殺しの方が悲惨だと思いませんか?第一、緊張感のない会社はこの時代、すぐに沈みますよ。」

 

 

人事の方は最後にこう言った。

「この制度を導入した時は、多くの反対がありました。でも、この制度を導入して2〜3年も経つと、それが普通になります。そして、以前より会社の業績はかなり向上しました。

いまでは、「働かない同僚に我慢しなくて良くなった。本来こうあるべきだ」という社員がほとんどです。」

 

見えない部分で、確実に労働の形は変わりつつあると、実感する。

 

【安達が東京都主催のイベントに登壇します】

ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。


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ティネクト代表の安達裕哉が東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。
ティネクトでは現在、生成AIやマーケティング事業に力を入れていますが、今回はその事業への「投資」という観点でお話しします。
経営に関わる全ての方にお役に立つ内容となっておりますでの、ぜひご参加ください。東京都主催ですが、ウェビナー形式ですので全国どこからでもご参加できます。

<2025年7月14日実施予定>

投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは

借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。

【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである

2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる

3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう

【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください

(2025/6/2更新)

 

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(Photo:Shek Graham