物理学の公式を覚えていなくても、アイザック・ニュートンの名前を覚えていない人は殆どいないだろう。「万有引力」というキーワードを学校で習う時、ニュートンの名前は「木からりんごが落ちるのを見て重力を発見した」というエピソードとともに、必ず出てくる。
彼の発見の全容はその著作である、『自然哲学の数学的諸原理』(プリンキピア、という名前で呼ばれている)の中に著されているが、その中身は素人が読んでも全く面白いものではない。
それ故に、ニュートンの功績は『万有引力』というものの発見という事以外ではあまり語られない。というより、「なんでこの人すごいの?」という感覚が普通だろう。私もそう思っていた。
ところが、私が高校生の時、当時の地学の先生が「この世に天才科学者を3名あげるとすれば、アルキメデス、ニュートン、そしてアインシュタインだ」と言ったことを聞き、俄然興味が湧いたのである。
結論から言えば、ニュートンの業績は科学史の中での金字塔と呼べるものであり、非常に素晴らしいものであった。トーマス・クーンの言葉を借りれば、
”科学史上、適応範囲の大きさと、精度の高さの上で、『プリンキピア』ほど大きな発展を見せた仕事は他にはない。”
のである。具体的にはニュートンの研究は、
1.天体の動きを解明した。それまでの数々の理論を統合するのみならず、今までの理論で説明できないとされていた月の動きも説明した。
2.振り子、潮の満引きなどの地上における自然現象を天体と同じ法則で説明した。
3.大気の法則、空気中の音速に関する公式や、空気の圧縮、膨張に関する法則を、1.2.と全く同じ原理から導いた。
これでだけを見ても、現代の様々な科学技術の殆どは、ニュートンの業績なしには無かったと言える。ちょっと身の回りを見てみても、GPSから、エアコン、コンピュータまで、実に様々な範囲での応用が成されている。
ニュートンの果たしたイノベーションは、『それまでバラバラに存在すると思われていた数々の法則』を、『ほんのいくつかの重要な原則で全て説明できる』としたところにある。
そして、その法則は、俗説としては「リンゴが落ちるのを見て」と言われているが、実際には「天体の動きを精緻に観察した」こと、「ガリレオなどの先人たちが生み出した法則を丁寧に研究した」こと、から生み出された物だといわれる。
起きていることを緻密に観察し、先人たちの業績を研究し、バラバラだと思われていることを、シンプルにまとめ上げる。これは、イノベーションの秘訣だろう。
かつて、ニュートンは彼自身の偉業について意見を求められたときに、こう答えたそうだ。
「もし私が他の人よりも遠くを見ているとしたら、それは巨人の肩の上に立っているからだ。
イノベーションを起こすのに、「オリジナル」に拘る必要はない。過去の偉業の上に立つだけでいいのだ。
(2025/7/14更新)
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。
<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>
第6回 地方創生×事業再生
再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは
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自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”
【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。
【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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