本を会社で読んではいけないのでしょうか?と、後輩に聞かれたことがある。
私の周りの人に意見を聴くと、それは二つにわかれた。
まず「会社は勉強するところではないので、就業時間中に読むな」という人たち。
ある会社では就業時間中に本を読むことを認めていない。
「一部の調べ物を除き、本はプライベートなときに、自己研鑚をする目的で読む。」というルールだ。
彼らは勉強は個人のためのものであって、会社のためのものではないと、いう判断をしている。
そしてもう一方は「文献をあたったり、仕事に役立つ自己研鑚は必要。読みたいならどうぞ。」という人たちだ。
彼らは就業時間中に社員が何をしていようと、基本的には関知しない。
その最大の理由は「その行動が仕事のためなのかかどうか、外から見てもわからない」ということだ。
例えば本を禁止すると「じゃwebはダメなのか」と言われる。「新聞はどうなのだ」「調べ物でwebを見ている人は多いのだから、良いじゃないか」と反論されると、返せない。
何気ないことだが、ここまで意見が割れるのも面白い。
意見が割れる原因は「読書は仕事か?」という問いへの答えが割れるからだろう
「仕事ではない」なら、会社で読んではいけない。「仕事である」なら、会社で読んでOKということだ。
「読書は仕事ではない」と主張する人たちはなぜそのように言うのか。
彼らは一様に「アウトプットがないからダメ」という。つまり、何らかの成果品を作っていなければ仕事ではない、という立場だ。
この傾向は、ブルーカラーとホワイトカラーが多い職場、つまり肉体労働と事務労働のようにアウトプットの量が評価の基準になる職場に多い。仕事の質はだれがやっても同じになるように調整されている。
「言われたことをこなすのが仕事」と言い換えても良い。
逆に「読書も仕事のうち」と主張する人たちはそれとは仕事の概念が異なる。彼らは「アウトプットは多ければ良い、というものではない。」と言う。
「いくら作業しているように見えても、成果品の質が良くなければ、作業に意味はない」とするのが「本OK」の会社だ。
いわゆる知識労働はアウトプットの質が前提となる。
デザイン、設計、調査研究、文筆活動などは、その質が標準化されにくい領域が数多くあり、「やり方は問われないが、結果責任が問われる仕事」と言い換えても良い。
だが、ここには葛藤が存在する。現在の多くの職場では、完全に量のみが問われる仕事も、完全に質のみが問われる仕事も存在しないからだ。
多くの仕事は、その中間に位置する。
シニカルなマンガ「ディルバート」は、この手の葛藤をよく題材にしており、こんなやり取りがある。
仕事はアウトプットが全て?(リンク先はマンガ)
技術者 「いやー、今週はめっちゃ仕事しましたわ。技術的オプションを全て比較する表を作成しました」
上司 「その表とやらを見せてもらおうか」
技術者 「俺の頭の中ですよ。書き出す必要性を感じなかったので」
上司 「ちゃんとできたかどうか分からないじゃないか!」
技術者 「あなたはエンジニアではないので、見ても正しいかどうか分からないでしょう。あなたは「賢く働け」といつも言うけど、俺がそうするとすぐ怒る」
上司 「頭の中で仕事をしてはいけないんだ!」
技術者 「あなたは体のどの部位を使って仕事してるんですか?」
個人的にはこの議論は非常に興味深いものだ。
冒頭の質問に対して、私は後輩にこう返した。
「好きなだけ読めばいいよ。」
後輩は「大丈夫なんですか?」と聞いた。
私は「大丈夫だよ、社長もよく本読んでるから。」と答えた。
結局はトップの考え方次第だ。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

ティネクト代表の安達裕哉が東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。
ティネクトでは現在、生成AIやマーケティング事業に力を入れていますが、今回はその事業への「投資」という観点でお話しします。
経営に関わる全ての方にお役に立つ内容となっておりますでの、ぜひご参加ください。東京都主催ですが、ウェビナー形式ですので全国どこからでもご参加できます。
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
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・ブログが本になりました。
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