医師の知人に聞いた話だ。
今、電通の過労死事件に端を発した、長時間労働の摘発が、あちこちの業界に波及している。
その一つが病院だ。しかも大手が狙われている。
行政としては、名も無き零細ブラック企業を摘発するよりも、大手の目立つところから、しかも社会的に影響力のある「医師」をターゲットにしたほうが、見せしめ効果があると考えているのだろう。
ただ現実的には、医師の、とくに初期臨床研修医の過重労働は事実である。
実は、医療業界にも、劣悪な労働環境での勤務を強いられている末端労働者が存在します。それは誰でしょうか。
それは病院に勤務する医師であり、過労死寸前まで酷使されている労働者は勤務医なのです。
過重労働は現場の士気を低下させ、医療サービスの質の低下を招くことは、誰でも予想できる。
過酷な現場を医師に強いれば、結局そのしわ寄せは患者に行く。したがって「長時間労働の禁止」は、医師たちにとっても、患者にとっても重要なことのはずである。
しかし、その知人は
「長時間労働の規制はきれいごとだね。残業を禁止したことで、歪みが出ている」
という。
知人が言うには、「残業禁止は、「能力の低い」人達にとっては、かなりの不利益」とのこと。
どういうことなのか。
知人は言う。
「長時間労働は、能力の低い研修医にとっては、非常にありがたいことなんだよ。」
「なぜ?」
「仕事の質の低さを量でカバーするからだよ。そうして、能力が低い人も医者としてきちんと働けるだけののスキルが付く。」
「……」
「当然だけど、仕事の量は決まっているし、患者さんは待ってくれないから。」
「うん。そりゃそうだ。」
「でも、「残業の規制」は命令だから絶対だ。実際に、定時以降はシステムにアクセスできず、「カルテ」などが書けないようにされている。」
「なるほど、仕組み的に絶対に残業できないようになってるんだね。」
彼は頷いた。
「そう。でも当然、やらなければ仕事は溜まっていく。」
「……生産性をあげる、例えばカルテを書くスピードを上げるなどすればいいんじゃない?」
彼は皮肉っぽく嗤う。
「もちろんそうなんだけど、でも生産性をたかめるのは「能力の高い人」ならできるけど、「能力の低い人」にそれをいきなり要求しても、できるわけ無いよね。」
「……たしかにそうだ。」
「今までなら、能力が低くても長時間労働で補えていた。でも、それができなくなると、能力の高い人と、能力の低い人の差が拡大していく。無能な医者が増えるよ。」
「……」
「もう1つ、歪みがある。「能力の低い人」が出来なかった仕事は、結局だれがやると思う?」
「能力の高い人?」
「ちがうよ。」
「……」
「中高年の管理職に決まってるじゃない。自由に残業ができる管理職に、全てが集中するんだよ。実は残業の規制が始まって、いま40歳くらいの人が一番忙しい状態になった。就職氷河期世代はここでも悲惨なことに……ご愁傷様だね。」
彼は言葉を継いだ。
「だいたい、初期臨床研修医なんてものは、いわば「お金をもらって勉強させてもらっている」状態なんだよ。一番伸びしろがあって、頑張れる若いときに定時で帰るなんて絶対にやめたほうがいい。」
「どうすればいいと思う?」
「そもそも、医者という仕事と、時間給という概念が全くマッチしない。これだけの成果を出したらいくら、という年棒制にするかしかないよ。」
「……」
「無能は長時間働くべし。そんなこともわかってないのかね。自分たちが医療を崩壊させようとしているんだよ。」
—————–
「売上を減らせば良い」と主張することも可能な企業とちがい、病院は患者に「病気になるな」とは言えない。
目の前には患者がたくさんいるのだ。
また、医療費を増やし、医者をもっとたくさん配置することも難しいだろう。
上の医師が言うように、医療の質を落としてまで、長時間労働を規制する価値はどこにあるのか。
いや、そもそも「残業を一律に規制」することにどこまで意味があるのか。
疑問は付きない。
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