重力の最も重要な性質の1つは、重力は光と同じ速さですすむ波でありながら、あらゆる物質をすり抜けてすすむことです。
重力なのでなんでもすり抜けるのは当然と思うかもしれないですが、光は同じ波でありながらも、電磁波の一種なので、なんでもすり抜けるわけではありません。光(可視光)が遮られるのは日常的に目にするし、家の中よりも外の方がケータイ電波繋がりやすい経験ってあると思うけどまさにアレ。
でも、例えば地球の重力はどこにいても受ける。家の中にいると重力が遮られるとかない。その大きさは物体間の距離とそれらの質量で完璧に決まっている。それはニュートンが万有引力の法則として発見していた通り。
「重力は波でありそれは光と同じ速さで伝わる(重力波)」というのは一般相対性理論から導かれる1つの解で、同じくアインシュタインが特殊相対性理論の構築の時に発見した「光は誰がどのような状況でみても必ず一定の速さになる(光速不変の原理)」ということと同じくらい超重要な宇宙全体の法則。
それまではニュートンが万有引力の法則の中で「重力は瞬時に伝わる」(つまり光よりも早い)って言っていたし、アインシュタインの時代には光の速さはかなりの精度でわかっていたものの、じゃ光は何を伝って(エーテルという名前だけは先につけられていた)伝播してんだよ?誰か発見してみろや!ってくらいの時代だった。(そんなものはもともとなかったわけだが)
「重力波」も「光速不変の原理」のどちらもアインシュタイン以前は誰ひとりとして、そんなことを主張すらしてなかったし、もちろん理論など全くなかった。
敢えて挙げるなら、当時すでに偉大な科学者の1人であったローレンツが当時の実験結果をもとにごちゃごちゃ計算してたんだけど、
彼は「光の速さに近づくと物質の長さが縮む(ローレンツ変換)。だから光の速さが変わらないように見えているだけ」と言っていた。
でも、アインシュタインは「ローレンツは物質が縮むとか言ってるけど、物質が縮んでるんじゃなくて空間(時空)そのものが縮んでるんだよ。光の速さは原理的に変わらない」って言い出して、
小難しい計算もなく既存の理論を駆使して、それを完璧に証明してしまった。それが「特殊相対性理論」。岩波文庫にもあるんだけど、薄っぺらい上にさらに本文は4分の1もないw
ついでに「重力波」までも発見し(こちらはかなり苦労したらしい)、
「ニュートンは重力が瞬時に伝わるとか言ってたけど、重力は波だし速さは光と全く同じであることがわかった。」って言って、
ニュートンまでも撃殺。それが「一般相対性理論」。マジ超絶すぎる。天才と言われる所以はそこにある。
さらには今回の重力波初観測の実験装置がこれまた凄い。
何が凄いって、重力波を観測したその実験装置が、アインシュタインが「光は誰からもみても必ず一定の速さになる(光速不変の原理)」という着想を得たマイケルソン干渉計とほぼ一緒の仕組み。
(図はWikipediaより引用)
マイケルソン干渉計の仕組みはもの凄い単純で、マイケルソン・モーリーの実験として高校で物理を勉強してたら必ず習う。簡単に説明すると、光(波)の反射を利用した時に生まれるはずの誤差を利用して、その速度を計るって仕組み。
今回の重力波検出実験の場合は、光ではなく重力波なんで文字通り天文学的な精度の担保が必要なんだけど、それはお金の問題だったのであまりそそられない。(もちろん、それら壮大な実験装置を構築した人たちに対して、今回の第一発見者じゃなくともリスペクトしてます。だって、たかだか10の21乗分の1の誤差を検出するために大の大人たちが世界中のあちこちに巨大な装置をつくってるんですよ!)
とにかく100年前の技術でも人間には全く認識できないはずの光の速度の「誤差」が計れるほどよくできた仕組みの装置。当時、高校生の自分が見てもめっちゃ完璧な装置じゃんって感心した覚えがある。
さらにさらにおもしろいのは、その完璧なはずのマイケルソン・モーリーの実験では、光の速度の「誤差」をはかることで、光を伝える物質(エーテル)の存在を証明しようとしたのに、やってみると
「全く全く全く(敢えて3度言う)何も起こらなかった。誤差なんか(比喩的な意味で)1ミリも起こらなかった」。
当時の科学者たちはションボリするし、前述の通りローレンツなどは頭良すぎてその辻褄合わせに無理やりこじつけた理論をつくったりしていた。(それがローレンツ変換)
でもアインシュタインはその実験結果を
「何も起こってないものは何も起こってないんだよ。そうなる原因は光というのは誰から見ても必ず同じ速さになるってるからだよ。え、意味わかんない?光の速さで光を追いかけても光は光の速さのままってことだよ。マジだよ。だって実験結果そうなってんじゃん!」と、
その結果をまさにそのまま受け入れた解釈をした。それが「光速不変の原理」。
さらに「光がいつ見ても光の速さのままってことは、光の速さに近づいてるヤツ見てるとそいつの時間がどんどん遅れていくように見えるってことにか」。
「あっ、だからそいつの空間が縮んでるように見えるんだ!」って、
発想の転換、まさにのコペルテクス的転回によって、「特殊相対性理論」が生み出された。
ちなみに「エーテル」は、その時から物理史において伝説上の物質へと昇華した。
それを探し続けた(同じ実験を30年以上も続けた)マイケルソン博士は、アインシュタインのおかげもあり計らずも「エーテルが存在しないこと」を証明したことになった。そして、その実験精度の高さを褒め称えられノーベル賞をもらった。
完全フル装備で竜探しに行ったけど、むしろ竜が絶対に存在しない証拠を見つけて帰って来て、王様にめっちゃ感謝された、みたいな感じ。
そんなもんだから、もう今回の件はあらゆるところにアインシュタインが出てきて堪んないわけですよ。こういうのを神って言うんじゃないの?
ああ話し出すととまんないよ。それにしては物理勉強しといてよかったよ。
参考文献:
ローレンツの話は岩波文庫の「一般相対性理論」の解説に出てきます。
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マイケルソンモーリーの実験に纏わるストーリーは、サイモンシン著「宇宙創成」下巻がわかりやすいです。
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【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
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お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)