神の手を持つ外科医、というとブラックジャックの影響なのか手先が器用であるという印象を持っている人が多いと思う。

しかし筆者の経験上からいうと、器用さ以外の部分が一流の外科医を決定づける要因として大変重要である。

 

今回は実際に筆者が一緒に働いたことのある、天才的な手術をする外科医の特性3つ書いていこうと思う。これらを知ることは、他の分野で頑張っている人にも大変役に立つはずだ。

 

ここが違うよ神の手その1

ルールをキチンと把握しており、その上で自分のする事に対する明確なビジョンがある

仕事におけるルールが法律だとすれば、外科医のルールは人体解剖学だ。キチンと解剖を把握している全ての人が名医だというわけではないが、少なくとも名医で解剖学が適当な人は一人もいない。

その正確な人体解剖の知識がベースにある事を前提として、腕の良い外科医は自分が行う手術という手法について、最初から最後まで極めて明確なビジョンを持っていることが多い。手術前に何度も何度もイメージトレーニングを行い、手術を行う前には10回以上は予行演習が終わっているという人もいる。

 

走り慣れた道を滑走するのが楽なのは、既にそこが通ったことがある道であり、次に何がくるかがわかっているからだ。

神の手を持つと言われている外科医ほど、1手先、いや10手先を読んだ手術を展開する。下手な外科医はその場で行き当たりばったりの行為を繰り返すため、同じ場所をぐるぐる回るが如く、いつまでたっても先に進めない。

 

ゴールを見据えた上で最善ルートを最短で突っ走るから、一流の外科医の手術は早いのだ。決してその場限りの行き当たりばったりな行為は行わない。何事も明確なビジョンを持って行動することが大切である。

 

 

ここが違うよ神の手その2

・あらかじめ困難が来る箇所について想定してあり、その為決断が異様に早い

普通の仕事でもそうだと思うが、手術もまた想定外な事がよく起きる。解剖学的に奇形があったり、CTやMRIなどの画像で予想したものと違ったり等、どんなに予想を綿密にたてても予想は予想でしかない。

 

平凡な外科医はこの時初めて戦略を練り直す。その為、時間もかかるし最善手を選択できない事も少なからずある。しかし一流と言われている外科医の決断は惚れ惚れするほど見事だ。周囲に全くと言っていいほど困難である事を漏らさず、いかにも簡単であるかのように振る舞う。周囲への指示出しもまた見事なもので、気が付くと5分後には困難があった事すら忘れてしまうものである。

 

もちろんというか膨大な手術経験数が、一流の外科医の決断力のバックボーンにもなっているのだとは思う。とはいえどんなに手術経験を重ねてもあまり上手ではない外科医がいるのは事実である。

 

この差が何なのかずっと考えていたのだけど、ある時一流の外科医は常に困難が想定される場面で複数の迂回ルートが想定されているという事に気がついた。

 

もちろん全く予想外の困難というものもあるのだが、大体において難解な場面というのは多少の経験があれば想定できるものだ。一流といわれている外科医は困難が訪れた時、どういう迂回ルートを取ればいいかについて、かなり熟考しているのだろう。

そしてその場面が訪れたら、待ってましたとばかりに躊躇せず方針を変更する。

 

結局、一流の外科医は自分の中での原理原則について極めて忠実なのだ。アクロバティックにアドリブで曲芸を披露するなんて事は絶対にしない。ただ黙々と自分が行うべき作業を忠実に行う。一見地味でつまらないこの作業を積み重ねるという行為が、手術終了時には神の技ともいえる芸術的行為に変貌するのである。

 

 

ここが違うよ神の手その3

・短気であり、完璧主義者である

ここまで神の手を持つ外科医のよい側面について書いてきたので、今度はちょっと具合の悪い部分についても書いていこうと思う(笑)

その1、その2で書いたとおり、一流の外科医は常に自分が行うべき作業について明確なビジョンを抱いており、また原理原則に忠実であり、決断が早い。

 

まるで一流のビジネスマンの事をそのまま言い表しているかのようである。そんな彼らであるが、やっぱりというか性格は少々とっつきにくい事が多いのは事実だ。オフでは結構普通に良い人だったりもするのだけど。

自分の中で完璧なビジョンが確立しているが故に、その規定路線を外れた時の怒りもまた強烈だ。ほんの少しでもおかしい事をみつけたら、まるで瞬間湯沸かし器の如く怒りそしてミスを指摘する。

 

おそらくオーケストラの指揮者も同じような感覚を持っているのではないだろうか。どこか一部がおかしいだけで、全体の調和は崩れてしまう。そのことに耐えられないのだろう。

考えてみるとスティーブジョブスを始めとして、歴史上の偉大なビジネスマンは大体においてキツイ性格をしている事が多い。「なにもそんなに周囲にキツくあたらなくてもいいじゃん。もうちょっと楽しくやろうぜ」なんて僕なんかは思ってしまうのだけど、そんな心がけでは最高のモノなんて作り上げられないのだろう。

 

スティーブ・ジョブズのおかげで僕たちはMacBookやiPad、iPhoneといった素晴らしい作品に出会えた。だけどこの素晴らしい作品たちに触れるとき、ちょっとだけでいいからジョブスと一緒に仕事をして、怒りをぶつけられた人達の事も忘れないでおいて欲しい。

 

天才の生み出す業績は偉大だけど、一緒に働いている人達は結構苦労する。天才は短気であり、完璧主義者であり、それを周囲にも強要する。並外れた完璧主義があるからこそ普通の人にはできない素晴らしい仕事を成し遂げられるのだけど、その影には天才を支えた凡人達もいたという事を忘れてはならない。

 

天才がいないと芸術は生まれないけど、天才一人だけでは芸術が生まれないというのもまた事実なのだ。短気な完璧主義者に付き合うのも、大変なんだぜ(´;ω;`)

 


 

以上が一流といわれている外科医の3原則である。細かな違いはあれど、大体においてこの3つが神の手を持つといわれている人たちに共通している事である。

こうしてみると、仕事内容は違えど一流と言われている人たちは結構同じ行動原理に基づいているのがよくわかる。あなたが一流のビジネスマンを目指すのならば、上の3つを意識してみるのもいいかもしれない。

 

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安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
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(2025/6/2更新)

 

プロフィール

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高須賀

都内で勤務医としてまったり生活中。

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