「いやね、オレに命令するな、って思うわけですよ。」
彼は一流のエンジニアだが、こちらの言うことを聞いてもらうためには非常に大変だ。なにせ彼は「自分が面白い」と思うことしかやらないのだ。
「もちろん最低限の事はしますよ。でも命令されたことは最低限しかやりたくないですね。従うくらいならさっさと帰って、家で知人から紹介された面白い仕事をしますよ。」
なかなか激しい方だ。
「会社員として、出世はどうお考えですか」と聞くと
「出世なんて、もともと興味はないですね。お金が欲しかったら他で稼げるし。」
「なんで今の会社にいるんですか?」
「たまたま。まあ、やりたいことできそうだったからね。」
彼はそう言って、コーヒーを啜った。
「会社への忠誠心みたいなものは無いんですか?」
「無いね。」と彼はあっさり答える。
「自分で会社をやればいいんじゃないですか?」
「おいおい、オレは経営者としての手腕はゼロだよ。自信があるのは開発だけ。その代わり開発だったら結構無茶な要求でも「できない」って言わない自信はある。」
「……なるほど」
「所詮、会社と社員の関係なんて契約だから。「一緒にやろう」っていう約束は絶対守るけどね。」
————————-
「会社への忠誠?いつの時代の話ですか?」とそのwebマーケターの方は言った。
「忠誠を誓ったら成果が出るんですか?そんなわけないですよw、今の会社も頼まれたから今いるだけです。居心地わるくなったら、すぐに辞めますよ。」
周りの方々も頷いている。webサービス界隈の人たちは、皆こんな考え方なのだろうか。
「もちろん、会社の業績が悪くなったら、我々も切られますからね、必死にやりますよ。でも、会社に尽くせっていう命令をされたら、そりゃ一瞬で冷めますわ。」
そうだ、という声が周りからも聞こえる。
「いいですか、経営者が「雇ってやってる」って考えている会社には、絶対に行きません。何だそれ、って感じです。あくまでも経営者と我々は対等。人としての礼儀がなってない経営者の会社に、今時の優秀な人は絶対に行かないですよ。」
私は聞いてみた。
「逆に、どんな会社だったら働きたい、って思うんですか?」
「好きにやらせてくれる会社、成果が出たら、きちんと分配される会社。その代わり成果が出なかったらクビにしてくれて全然いいですよ。」
「会社員じゃなくて、フリーランスではないですか?」
「わかってないですね。フリーランスだったら、仲間や会社の資源が使えないじゃないですか。できることは限られちゃいますよ。資源が使えるから、我々も成果が出せるんです。」
————————-
そういえば、かつてのコンサルタントの仲間も言っていた。
「コンサルタントとして一人で独立する人がいますが、ありゃダメですね。多分すぐに行き詰まりますよ。新しいことができなくなるし、過去の貯金を使い果たしたらオシマイですね。」
「何故ですか?」
「知識ってのは、相乗効果があるんで、いろんな人と一緒にいたほうが成果が出るんですよ。」
「一人でやらないほうが良いと?」
「そう、専門家はできるならば一人では働かないほうが良い。会社ってのは、専門家がうまく利用できるような設計が必要なんだよね。」
「どういう意味ですか?」
「古い会社は、経営者の命令によって動いたけど、これからの時代の会社は、命令じゃダメだね。有能な人が好きに資源を利用できるようにできてなくちゃいけない。」
「……そうすると、経営者ばかりがリスクを取らなくちゃいけない気がしますが」
「だから、そういう人たちは「雇用契約」じゃなくて「業務委託」とか、そんな形になるかもだね。実際、オレが見る限りではそんな会社増えていきそうな気がするね。」
「そんなもんですかね……。会社がバラバラになりませんか?」
彼は笑って言った。
「それの何が悪いの?ダメな奴がいくら群れたって、ダメな集団が出来るだけ。逆にバラバラでも個人の職責を果たしている限り、会社はうまくいく。」
「……。」
「プロジェクトが魅力的であるかぎりは、バラバラになんかならないよ。」
————————-
早大教授の野口悠紀雄氏は、著書*1の中で現在の日本企業の制度を批判し、
「特に問題なのは、労働者が一つの企業に閉じ込められているということである。」
と述べ「現在の日本企業の制度は、実は戦時経済が今なお、残っているだけだ」という趣旨の研究結果を残している。
*1
1940年体制(増補版) ―さらば戦時経済
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「会社への忠誠」とは、巧妙に我々に刷り込まれた、戦時経済の残滓にすぎないのかもしれない。
知人は言った。「「会社への忠誠」の概念が変わってきてるんだよ。」
「どういうふうに?」
「単純に言えば、今の「忠誠」は、戦国時代の武将が主君に誓う忠誠のこと。平和な世の中の「忠誠」じゃない。」
「……。」
「だって、戦国時代は主君が本当に優秀で、自分の命を託せないかぎり、簡単に裏切ったり、見限ったりするわけでしょ。それだけ真剣、ってことじゃない。」
なるほど、戦国時代の忠誠とは、言い得て妙だ。江戸時代「サラリーマン武士」とはちがういうことか。
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