人事評価の季節がやって来ました。(違う時期に評価をやっている会社もありますが)
人事評価、大変ですよね。人を「診断」して、「評価」し、「格付け」するのですから、エラい気を使います。
でも評価される身になってみると、みんな「格付け」や「診断」が嫌いじゃないんですよ。むしろ大好き。
「自己診断」って、web上で人気のあるコンテンツのようです。あと、プレジデントやダイヤモンドなどのビジネス誌がよくやっている「格付け」っていうのも人気。2ちゃんねるをみれば「格付け板」みたいなもので同じようなことをやっている。
みんな、格付け大好きなんです。
あまりに気にならない?そういう人もいるかもしれません。でも、会社の経営者や人事は「格付け」には非常に気を配ります。会社員は「職位」やら「給与」やらでありとあらゆる格付けをされるので、みんなとても格付けには敏感ですから。厄介です。
例えば想像してみてください。隣のデスクにいる、同じ年に入った同僚が、あなたとあまり成績は変わらなかったのに、先に課長に昇進しました。どう思いますか?
運が良かった?
自分に気づかないところで彼が頑張っていた?
会社の人事がおかしい?
自分に至らない点があった?
どう思っても自由です。でも「何も思わない」というひとは極めて少数のはず。そんなもんです。格付けが好きな人も、嫌いな人も、会社に入ってしまえば格付けされる。社長になっても、投資家から格付けされる。
格付けからは逃げられません。
結婚もそうです。結婚相談所に行って登録すればかならず、「年齢」「年収」「容姿」その他の様々なパラメータで格付けされて、他人から吟味される。だから、「格付けされない生き方」なんてものは、この社会の中では有り得ません。人里離れて、自給自足でもしない限り無理です。
部下も、そういう世の中の状況はわかっている。
ただ、自分が下位に格付けされていたら嫌ですよね。
「自分は底辺だ」って、自覚なんかしても精神衛生上良くない。中には自分を敢えて追い込むことで頑張る人もいるらしいですが、大半の人は「自分はそこそこ」って信じたいし、格付けを上に上がるための努力なんて「カッコ悪い」なんて思う人もいるわけです。
でも、
本当は本人もわかっています。自分が「出来ない人」だってことは。
部下の評価を初めてする人が勘違いしやすいのはここです。
部下はすでに、自分が出来る人なのか、出来ない人なのかを知っています。
「言われなくてもわかってる」っていうのが、本音です。
「いやいや、アイツは勘違いしている」っていう管理職の方もいますが、従業員は自分の評価がわからないほどバカではないです。あなたに反発するのは、「オマエに言われたくない」って言っているだけですから。
だから、あなたの役割は「評価を伝えること」ではないんです。「客観的に事実を伝える」なんて、愚の骨頂です。
彼が求めているのは、「オレはどうしたら評価されるようになるんだ」「どうしたら格付けが上がるんだ」を、「ソフトに気づかせて欲しい」ということです。
ポイントは「ソフトに」です。ストレートに「オマエはだめなやつだから評価低いよ」と言われたら、だれでもヘコミます。上司は「オマエの実力不足だ」ではなく、こんな時くらいは「景気のせい」「上司のせい」「会社のせい」にしてあげてください。大企業の経営者ですら、「景気のせい」と公言するくらいですから。
また、彼は「あなたから教わりたい」とは思っていません。「自分で気付きたい」のです。嫌味にならないように質問してください。自分で思っていることは、他の人から聞かれれて初めて気づきます。
質問すること、考えてもらうこと。これさえできれば、人事評価は成功です。
課長「今期は頑張ったか?」
部下「頑張りました、成果は残せていないですが、精一杯やりました」
課長「そうか。精一杯やったのなら、まずはお疲れ様。」
部下「ありがとうございます」
課長「因みに、なんで成果につながらなかった?」
部下「さあ・・・?お客さんがイマイチだったからですかね。コロコロ言うこと変えたりして。私のせいじゃないです」
課長「そうか。ならば、●●さんのせいではないな。」
部下「ですよね。もっと良いお客さんなら、もっと成果が出たはずです」
課長「なるほど、では、来期どうしたい?」
部下「もっと良いお客さんを回していただけないですか?」
課長「例えば?」
部下「XXさんが担当しているようなお客さんです」
課長「なるほど、でもあのお客さんは、今XXさんを信頼しているから、それは無理だな。」
部下「あのお客さんじゃなくていいです。同じようにXX業界の、頭が良くて、あまりうるさくないお客さんなら一番いいです。」
課長「でも、そんないいお客さんだったら、だれでも成果が出るんじゃないか?あなたじゃなくても」
部下「まあ、そうです。」
課長「だったら、君のような優秀な人を充てるのはもったいないんだが、どうだろう。」
部下「・・・」
課長「会社としては、今ひとつなお客様をうまく回してくれる人のほうがよっぽどありがたいんだが」
部下「・・・そうですね」
課長「・・・」
部下「でも、不公平じゃないですか。XXさんは苦労せずに良い評価をもらって、私は苦労しても評価が低いなんて」
課長「・・・本当にXXさんは全然苦労していないと思っている?」
部下「・・・いや、そうは言わないですけど・・・」
課長「うちの会社では、君も含めて、頑張っていない人はいない。そうだろう?」
部下「・・・はい。」
課長「・・・」
部下「課長、どうすれば、もっと成果が出るんですかね」
課長「・・・いつも頑張って考えているんだろう?」
部下「そうですが・・・」
課長「どう思っているのか、聞きたいんだが」
部下「はい、この前思ったのは・・・」
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)