遠藤周作の「沈黙」が、マーティン・スコセッシによって映画化された。
知人の評価は「最高の映画」ということだった。
一方、私は映画をまだ見てはいないのだが、小説については多くの方におすすめできる傑作であると思う。
遠藤周作は、日本人作家としては珍しいクリスチャンであるので、「キリスト教」をテーマとした作品を数多く発表している。
個人的には
「イエスの生涯」
「キリストの誕生」
そして今回の「沈黙」
の3冊を非常に気に入っている。
私たち日本人は、キリスト教における「信仰」の概念を理解するのは難しいが、彼の小説では、遠藤周作という人物が考える「信仰」が克明に描かれる。
そして私は、遠藤周作の描く「信仰」についての議論は、2つに集約されると思っている。
1つは、「なぜ人生は、これほど不条理で、苦しみに満ちたものなのか?」
2つめは、「全能の神が存在するとすれば、なぜ我々を救わないのか?」
普通に考えれば、これらの問題は
「考えるだけ無駄」であり、日々の生活をこのような答えの出ない疑問に対して捧げる日本人はそう多くないだろう。
徳川家康は「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし」と言ったが、現代となって生活が豊かになった今ですら、人生は相も変わらず辛く、長いものであり、この事実を認識せずにはいられない。
思い通りに行かない仕事や、失業、あるいは身近な人の死や、重い病など、世の中は辛く、厳しいことに溢れており、いずれは誰もがそのようなことを経験することになる。
「人生は楽しいことばかり」ではないのだ。
「信仰」とは、そういったことに一種の救いを与えようとしてくれているものであり、依然として世界中の人々が人生の何処かで必ず必要とするものなのだろう。
信仰とは理解するものではない、という方もいるが、私は必ずしも相反するものではなく、遠藤周作の小説は「信仰というものの本当の理解」の一助となるものではないかと、密かに考えている。
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