40前後になると、企業の中で有能な人物と、無能な人とがはっきりと区別して見えるようになってくる。

新卒で働き始めてから約20年、生まれた子供が成人してしまうくらい長い年月であるから、評価に絶望的な差がついてしまうのは、必然的なことであろう。

 

複数社でインタビューをしたところ、もっとも無能が多いと認識されている世代が37〜42であった。

この世代になると、有能な人々はそれなりの役職やポストについており、しかもほとんどの場合その評価は正しい。

その影響で、余計に力の差が目立つので、できない人たちが浮き彫りになる。

 

 

さて、ここからが本題である。

企業内でほとんど常に問題となるのが、こうした無能な人たちの取り扱いである。

異動などで、暫く様子を見るという会社がほとんどであるが、どの部署でも使えないとなると、会社としては彼らを「戦力外」とみなす。

そして、ここには大きく四種類の対処がある。

 

一、退職を勧める

コンサルティング会社や外資系企業においては、無能は退職を勧められる。

たいていの場合、「ここは、あなたには合わない。ここにこれ以上いても、あなたに出世の望みはほとんどない。が、所変われば活躍できるかもしれない。今なら退職金にかなりの上乗せをしよう。」

と、やんわりと退職を勧められる。

 

二、給料を最低限にして閑職へ追いやる

いわゆる、窓際、である。派生版として、子会社や関連会社に出向、転籍というパターンもある。

一昔前、日本企業に余裕があるあった頃は窓際の人にも、「頑張ってきたから」という理由でそれなりの給与を支払うことができた。だが今はそうではない。企業は給与を下げることを厭わない。

基準に照らし合せ、あなたはパフォーマンスを出せていない。故にこれだけの給与になると通告し、複数回に分けて給与を下げていく。このため、40前後でも、二十代の後半とあまり変わらない給与の人も数多くいる。

また、責任が少なく、簡単な仕事が回されることが増えるため、大抵は評価を挽回する機会はほとんどない。こうなってしまうと、ほとんどキャリアとしては「詰み」である。

 

三、きつい仕事をやらせる

退職勧奨よりも回りくどいやり方で社員をやめさせようとする会社は、「飛び込み営業」「テレアポ営業」など、いわゆるきつい新規開拓営業をやらせて退職に追い込むケースが多い。

技術者だった人間を突然営業に回す、なども同様の手法だ。

私が実際に目撃したのは、40くらいのできの悪い社員について「飛び込み」や「テレアポ」について、かなりきつめのノルマを与え、達成できないときは皆の前で叱責する、という手法だった。

この場合、殆どの人は半年以内に退職していく。

が、たまに成果をあげて復帰する人間もいるので、「更生プログラム」と言われて活用されていた。

 

四、放置する

実は最も多いのは「放置する」というケースである。

本人にはっきり「パフォーマンスが低い」とも伝えず、評価は適当にお茶を濁し、はっきりと改善を促すこともしない。ただ給料やボーナスの額は上げず、「生かさず殺さず」の状態で放置するという、対処とも言えない対処である。

「あの人に関わりたくない」というケースも多いため、上司の悩みのタネになっていることも珍しくない。

残念ながら、彼らは期待もされず、育成もされず、多くの場合評価も固定され、「いい人だけどね」という言葉とともに捨て置かれている状態である。

 

 

センシティブなことなので、あまり大きな声で言う人は少ないが、上の対処の中で最もまずいのは四の「放置する」であることは言うまでもない。

無能を放置する、ということは、有能な人を貶める、ということに等しいからである。

実際、無能を放置している会社はほぼ例外なく、有能な人物から会社を辞めていく。管理職や経営者は「皆に良い顔をする」ことは絶対に避けなければならない。

 

そして次にマズイのは、三の「きつい仕事をやらせる」である。

殆どの人は「公正な処遇」を望むが、「人がきつい目にあっている」ことを毎日に見たい悪趣味な人はそれほど多くない。

見せしめ的に評価の低い人を貶めても、会社の雰囲気が悪くなるだけであり、得るものは殆どない。

 

また、二の手法は、余裕のある大企業であれば使えるが、ふつうの中小企業やスタートアップには無理な要求である。

 

結局「無能な人」とは、経営者と管理職は、一、のように、絶対に正面から対峙しなければならない。

また、対峙するのが遅れれば遅れるほど傷口は広がる。

会社は生活保護を提供する場ではないし、無能を放置すれば、皆で共倒れになるばかりなのだ。

 

会社の有能な人を守るためにも、またパフォーマンスの低い本人のためにも、会社は速やかパフォーマンスについて包み隠さず伝え、対処する必要がある。

そしてそれが、組織を牽引する人物の責任でもあるのだ。

 

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