これを読んでいる人の中に、学校生活がなんか自分にあわないなと感じていた人はいないだろうか?
あるいは家族とかにそういう感情を抱いていた人もいるかもしれない。
その他のフィールドも含め、今所属している団体で自分が「何かうまくやれてない」という違和感を感じている人も多いんじゃないだろうか。
ちなみに僕は随分とそういう悩みに悩まされたタイプの人間だ。
幼少期の頃から、所属を強制された場所ではどうも周囲と馴染めず、自分はかなりマズイんじゃないかとずっと思っていた。
自分に問題があるのはマズイと思い、ちょっと頑張ってクラスメートにコミットしてみようとすると、やはり彼等も僕に違和感があるのだろうか
「やっぱお前は空気読めないなーw」と笑いの種にされたりしてしまったりしていた。
多分似たような事を感じた人は結構多いのではないかと思う。
こんな感じで、小さい頃は人生がとにかく苦痛だった。朝起きたら学校に行かなくてはいけないし、学校が終わったら家に帰らなければならない。世界はそれで完結していた。
幼心ながら 「この世界線が永遠に続くのか。この世は地獄だな」と感じ、人生に絶望感を抱いたのは懐かしい思い出だ。
その当時、よく読んでいた本に「辛かったら逃げてもいいんだよ」という文章が書いてあった。
けど、僕はその文章を読むたびに
「逃げろって、いったいどこに逃げろっていうんだ。世界はキレイに閉じていて、どこにも自分の居場所はない。行き先もないのに逃げろって言われても・・・正直死ぬぐらいしか逃げ場所がないじゃないか」
としか感じなかった。暗く懐かしい青春の思い出である。
とまあ暗黒の幼少期を経由したわけだけど、じゃあ今はどうかというと人生はメチャクチャに楽しい。大人は最高だ。絶対に学生時代になんか戻りたくない。
これは1つには僕がそれなりに社会的に成功したという事もあるとは思うのだけど、最大の理由は幼少期は閉じた世界にしか所属できなかったのに対して、今現在は開いた世界に身を置き、自分の好きな場所を選べるという事が最も大きいと感じている。
というわけで今回は、VRの話と絡めて、大人の人生の楽しさについて話そうと思う。
現代のVR技術は既にリアルと区別がつかないレベルで進歩している
つい昨年度末、作家の橘玲さんの講演会に参列させていただいた。そこで橘さんがVR(ヴァーチャル・リアリティ)について大変興味深いお話をされた。
橘さんは編集の方にオススメされて、お台場で期間限定でやっていたVR体験コーナーに身を運び、そこで「超高層ビルの木の板の上に居るネコちゃんを救出」するVRレンズを使ったゲームをプレイされたようだ。
ゲームの概要を簡単にいうと、VRレンズを装着し、超高層ビルから伸び出る板の上を歩いて、その先にいる猫ちゃんを救出するという仮想現実を楽しむものだ。もちろん本当にビルの上なんて危険すぎて歩くわけにはいかないから、実際は床に置かれた板の上を歩くことになるわけだけど。
拾い物の画像だけど、本当にこんななんだよ。 pic.twitter.com/xXTGLVbja4
— 黒周ダイスケ (@daiske_x) 2016年9月28日
このゲーム、事前に「ビルでも何でもなく、板の上を歩くだけで身の危険は全く無い」という事を知らされた上で体験するようなのだけど、それを知った上でも「生命の危機を感じるレベルで恐怖」するのだという。
更に言うと、この「超高層ビルの木の板の上に居るネコちゃんを救出」するゲーム、被験者がプレイしている最中、係員の方が常に隣に立つというのである。
なんでそうするかというと、もし仮にフラっとしてプレイしている人間が横に倒れてしまおうものなら、被験者は文字通り「失神」してしまうのだそうだ。
これは被験者が初めての経験だからそうなるというわけではなく、実際にゲームの制作者ですら、何度フラッと横に倒れても、絶対に「失神」するのだという。
つまり現代のVR技術は「頭でわかっていても、恐怖を拭い去れない」レベルで既に進歩しているのである。既に脳では分別がつかないレベルの、超リアルな仮想現実が実現されているのである。
この話を聞いて橘さんは「VRグラスをつけて感じている仮想現実ですら普通の現実と区別がつけられないのなら、学校とか会社が世の中の全てだと思っている人に”嫌なら逃げてもいい”といったって、逃げられるはずがないな」と思ったのだという。
その話を聞いて、僕は今まで感じていた疑念がもの凄い速度で氷解した。
閉じた世界に生きる人間に、「逃げろ」は酷
2013年頃、堀江貴文さんが「ブラック企業?嫌なら辞めろよ」といって大炎上していた。
それに対して「簡単に辞められるのなら苦労しない」という声が沢山あがっていた。
これについて僕はその当時
「嫌なら辞めればいいというのは凄く良くわかるけど、そう簡単に辞められないと言う人の気持も凄くよく分かる」
「この2つの感情の間にある違和感は一体何なんだろう」
そう事ある度に思っていたのだけど、先の橘さんのVRの話を伺ってようやく疑念が腑に落ちた。
ブラック企業を辞められないという人は、会社≒世の中という仮想現実に支配されていたのだ。丁度、小さかった頃の僕が、世界が学校と家庭で閉じていたと思っていたように。
そういう「世界が閉じている」と感じている人に「実は世界は開いていて、自分で居場所を決めることができる」と問いても多分理解できない。
頭では他の世界があるという事は認識できるかもしれないけど、実際にプレイしているゲームの世界は”そこ”しななく、”そこの外”へ逃げるということなんて想像ができないのだ。
小さかった頃に「逃げてもいいんだよ」といわれても「いったいどこに逃げろっていうんだ。死ぬぐらいしか逃げ場所がないじゃないか」と感じた話を先に書いたけど、閉じた世界で生きる事しか知らない人間からすれば、閉じた世界の外にも世界があるだなんて事は想像できないのだ。
大人の世界は開いている
会社や学校、家庭という世界がこの世の全てだと思っている人に
「それ以外にも世界はあるから、逃げてもいいんだよ」
と言ってもその言葉は絶対に響かない。閉じた世界しか知らない人間に「世界は開いているんだよ。君の居場所はどこかにある」とか問いても、開いた世界を知らないから理解ができないのだ。
実の事を言うと、世界は閉じてない。それどころか最近の大人の世界は無限に開いている。
義務教育期間の世界は学校と家族でほぼ完結しているグロテスク以外のなにものでもない世界だけど、大人の世界は自由そのものだ。
仕事は好きなものを選べる。付き合う人間だって自分で選べる。ちょっと勇気を出して、一度自分の世界を開いてみると、そこにはビックリするぐらい広い世界が広がっている。
かつてはそんな世界は絶対にありえなかった。人は生まれた村で、生まれてから死ぬまで、同じような人間と付き合い、既定路線に沿った人生を歩むことが義務付けられていた。
けど時代は凄く進歩した。あなたが今この文章読んでいるように、インターネットというインフラは私達をいとも簡単に様々な世界へとつなげてくれる。
この世界は物凄く優しい。学校だったら誰も見向きもしてくれなかった死ぬほどマニアックな趣味でも、ネットでなら愛好家が群がる場所が簡単に見つける事が可能だ。
そうして同じ”文化”を愛する人と、同じ場所で同じ空気を吸ってみると、もうそこには「空気が読めない」だなんて言われる惨めな自分はそこにはいない。気の合う仲間と、好きなように好きなだけ楽しい事だけができる世界が、そこには広がっている。
もちろん義務教育期間中にこの開いた世界を心の底から楽しむのは難しい。
あなたを養う多くの親御さんは、「開かれた社会」での交流を胡散臭いモノととらえるだろう。
「そんなインターネットの顔も知らないような人と遊ぶのなんて危ないじゃないか。友達なんて学校にいけば山ほどいるのに、なんでわざわざそんな危ないことをするんだ?」
こういうだろう事は絶対に間違いない。
この事は仕事についても全く同じことがいえる。
仮にあなたが大手企業からよくわからない会社に転職しようと思い、親御さんや友達に相談したとしたら
「なんで転職なんてするんだ。今の会社にいればキチンとした仕事があるのに、外に行くだなんて危ないじゃないか」
というような事を絶対にいわれる。
これらの意見は、きっとあなたの事を心の底から心配するからこそ発せられたものである事は間違いがない。
閉じた世界に愛着がある人からすれば、安心安全な閉じた世界の外に、もっとよい世界があるだなんて絶対に理解ができない。
けど残念ながら私達のような人間は閉じた世界の中では幸せに生きてはゆけない人間だ。開かれた社会に向かって、勇気ある一歩を踏み出さなければ、本当に楽しい社会の存在を知る事なしに人生を終えてしまうだろう。
開かれた社会へ勇気をもって踏み出そう
かつて宇宙飛行士のニール・アームストロングが月面に降り立った時
「人間にとっては小さな一歩だが, 人類にとっては大きな飛躍である」
という言葉を述べた。
それに則って私はあなたにこう言おう。
「開かれた社会にいくのは他人にとっては小さな一歩だが, あなたにとっては大きな飛躍である」
開かれた世界は本当に楽しい。一度体験してしまおうものなら、閉じた世界の息苦しさなんて、もう二度と戻りたいとは思わないだろう。
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