武田砂鉄さんの『紋切型社会』に次の文章がある。
ネットのトレンド検索ワードには、時折「安部首相」「柴崎コウ」「森山直太郎」といった誤字がそのまま拡散されてエントリーしてくる。
このしばらくの間、安倍晋三は大量に安部晋三として褒められ罵られ、柴咲コウはみんなに柴崎コウとして美貌を称えられ妬まれ、森山良子の息子は一旦森山直太朗ではなくなる。
紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐす
- 武田 砂鉄
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誤字がそのまま拡散されるインターネット。
漢字だけではない。言葉の使い方も正しくないことはある。しかし意味は通じる。
みんな心の中で「あ、間違えている。正しくはこうなのに」と思う。それでも間違っているとは指摘しない。
この程度のことでわざわざ指摘するのは面倒だし、恥をかかせたくないという気持ちもブレーキの役割を果たす。こうして“ちょっとした誤り”は指摘されないまま、繰り返されていく。
ではその“ちょっとした誤り”は問題なのか。
間違った言葉を聞いて(あるいは間違った字を見て)、正しい言葉が頭に浮かぶということは、正しい言葉を聞いたのと結果的には同じだ。
ただ、ストレートに正しい言葉を言われたときと違うのは、心の中がモヤっとするかどうかだ。
間違いを見つけたとき、人は「正しいものは何か」と改めて考える。
■
これに似た構造は、他にもある。
たとえば、世の中にある様々なストーリー。
完璧なストーリー、わかりやすく筋が通ったストーリーも楽しいけれど、余白のある、多様な解釈が生まれるストーリーに妙に惹かれてしまうのは、そこに「自分が考えた何か」を加えることができるからだろう。
考えるきっかけは、完璧なものからは生じにくい。不完全な物語への違和感が、イマジネーションを刺激する。
先日『誰も語らなかったジブリを語ろう』という本を読んだ。
押井守監督がスタジオジブリの作品について語っている本だ。この本はジブリを絶賛する内容にはなっていない。押井監督が独自の視点でジブリ作品の抱える矛盾や破綻にツッコミを入れ、批判している。
誰も語らなかったジブリを語ろう (TOKYO NEWS BOOKS)
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この本を読むと、「ジブリ作品にはこんな“欠陥”があったのか」と気づかされる。
私はジブリファンではなく、おそらく標準的な観客の1人だと思うのだが、本を読んでこれまで以上にジブリに魅力を感じ、「また観たい!」と思ってしまった。
そう思うと、“欠陥”もまた、ジブリの魅力のひとつなのかもしれない。ツッコミ所があるということ自体が、ジブリを一層楽しいものにする。
あるいはなんでもそつなくこなす部下より、手間がかかる部下の方がかわいく思えてしまう上司の心理にも、通じるものがあるのかもしれない。
「ダメなやつほどかわいい」のは、守ってあげたくなる、応援したくなるといった心理もあるのだろう。
けれどそれ以上に、ダメだからこそ部下としっかりと向き合う時間がある、というのが大きいのではないか。
しっかりと向き合うその姿勢から生まれる感情も、きっと存在していると思うのだ。
完璧主義な人でなくとも、人間は正しさを求めている。
正しさしか存在しない世界はきっと息苦しい。そう思っていてもなお、私たちは正しさを求めることをやめないだろう。
しかし正しさを求める過程には“誤り”が必ずある。誤りによりまた別の正しさが生まれるのならば、失敗は成功のもと、と言うけれど、「誤りは正しさのもと」と言えるのではないだろうか。
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梅田悟司
コピーライター / ワークワンダース株式会社 取締役CPO(Chief Prompt Officer)
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 教授
代表作:ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」、タウンワーク「バイトするなら、タウンワーク。」ほか
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(2025/3/18更新)
【著者プロフィール】
名前: きゅうり(矢野 友理)
2015年に東京大学を卒業後、不動産系ベンチャー企業に勤める。バイセクシュアルで性別問わず人を好きになる。
【著書】
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