昔のコマーシャルだっただろうか。

うろ覚えなのだが、

「「やらなかったこと」を後悔するよりも、「やって」後悔するほうがマシだ。」

というセリフを聞いたことがある。

 

言わんとしているのは

「だから挑戦することが大事だ」

だろう。

 

だが、挑戦すれば、本当に後悔せずに済むのだろうか。

 

プロスペクト理論でノーベル経済学賞を受賞した、プリンストン大学名誉教授のダニエル・カーネマンは、それとは異なる見方をしている。

行動して生み出された結果に対しては、行動せずに同じ結果になった場合よりも、強い感情反応が生まれるということである。この感情反応の中には後悔も含まれる。(中略)

じつはここで重要なのは、行動するかしないかのちがいではない。デフォルト(既定)の選択肢と、デフォルトから乖離した行動とのちがいである。

デフォルトから離れると、デフォルトが容易にイメージされる。そこでデフォルトから離れた行動をとって悪い結果が出た場合には、ひどく苦痛を味わうことになる。

端的にいうと、「普段の自分がしないようなこと」をして、失敗すれば、後悔はより大きい。 

「普段の自分」が容易に想像できるからだ。

このような事実から、人は、無名の商品よりブランド品を選んだり、評価の時期が近づくと、大胆なことはしなくなる、といった「保守的なリスク回避選択」をしがちである。

 

それゆえ、カーネマンは

「長期的な結果を伴う決定を下す際には、徹底的に考え抜くか、でなければごくいい加減にざっくりと決めるか、どちらかにしている。中途半端が一番良くない」と述べている。

 

確かに、実際にやってみると「もっと早くやっておけばよかった」と、逆の後悔が生まれるものが数多くある。

要するに、物事はもっと、軽々しく始めるのが良いのだ。

 

物事を軽々しく始める人は得をする。

カーネマンの指摘を考慮すると、

実は、「物事を軽々しく始める人」は、ものすごく得をすることがわかる。

新しいことをして、チャンスに恵まれる上に、「新しいことを始める」のがデフォルトなので、後悔もほとんどすることがないからだ。

 

「あの人、かなり失敗してるのに、全く落ち込まないよね」

「リスクもあまり考えないで、とりあえずやってみる、っていうのは怖くないのかしら」

と言われることが多い人達は、実際、本当に「後悔」とは無縁なのだ。

 

冒頭の

「「やらなかったこと」を後悔するよりも、「やって」後悔するほうがマシだ。」

というセリフは、「後悔気質」の普通の人には、信じられないセリフだが、「とりあえずやってしまう気質」の人にとっては、

「え、何ってんの?あたりまえのことじゃない……」

と、呆れるくらいのことだろう。

 

私が「もっと軽々しくやっておけばよかった」と思うことのリスト

それ故に、自分が実際以上に「後悔するかもしれない」と恐れていたことが、初めて見ると「大したことなかった」というのが頻繁に起きる。

これは人間の気質なのだ。

 

だから、私が個人的に、「もっと軽々しくやっておけばよかった」と思うことのリストは、もしかしたら「始めようかどうか迷っている人」に役に立つかもしれない。

 

1.起業

起業は、学生時代や二十代でもっと軽々しくやっておけばよかった、と私が後悔していることの一つだ。

若いうちにやればやるほど失敗のダメージが小さくできるし、起業して働く1年は、サラリーマンで過ごす10年と同じくらいの価値がある。

また、「起業なんてやめておけ」という人も数多くいるが、「起業したの?なら助けるよ」という人もまた同じくらいいる。

 

2.投資

遅かれ早かれ、老後の資金を作るためには避けて通れない事の一つである上、時間をかければかけるほど成功する可能性の高いことの一つだと思う。

ローリスク・ローリターンを、ローリスク・ハイリターンに変えるのが「時間」だからだ。

別に「億り人」を目指す必要など無い。毎月数万円でも良いからきちんと節約し、それを「預金」ではなく「株式」や「投資信託」などに充てる。

そういったコツコツと積み上げる行為が、投資なのだ。なんで早くやっておかなかったのか、後悔している。

 

3.歯の治療

歯が悪い人は、早く歯医者に行ったほうがいい。

「時間が取れない…」とか「お金が……」とか言っている間にも、早く行っておけばよかったと後悔している。

永久歯は一度悪くなると、削らないといけなくなる。そして、歯は削ってしまうと基本的にはもとに戻らない。歯周病なども同じだ。歯周病にかかると、歯茎が溶けて、二度ともとには戻らない。

治療が遅れた歯が何本かあることを、私はとても後悔している。

 

4.子供を持つこと

もし子供を将来的に持ちたい、と思っているなら早い方がいいと、後悔している。

一つは体力的な問題、子育ては体力勝負の部分が大きく、体力がないと余裕が持てず、ついイライラしてしまいがちだ。

そしてもう一つは子供の将来の問題だ。

子供が成人する頃に、私は還暦を迎えてしまうことを想像すると、「子供の人生を見ることのできる時間の短さ」を痛感する。

 

5.読書の時間確保

働き始めて間もないころ、「読書」の時間を確保することを怠った時期が、数年間にわたってあった。

あの頃は家族もおらず、仕事も忙しいとは言え、工夫すればもっと自由になる時間がかなりあったはずなのに、なんで時間をきちんと確保しなかったのか、後悔している。

運動などと同じく、読書は基本的に面倒な行為なので、意図的に時間を確保しないと確実にやらなくなる行為だが、やらなければ長期的には知力の低下をもたらす。

そういうものこそ、もっと「軽々しく」やっておくべきだった。

 

6.デュアルモニタ

どこかの記事で、「仕事の生産性は、モニターの解像度と比例する」などという記事を見た。

本当に比例するかはともかく、PCを使って仕事をするなら、モニターの数は多ければ多いほどよいことは、使ってみたら一発で分る。

現在のデスクには27インチのモニタが2台。超快適だ。余談だが、デュアルモニタにするなら、モニターアーム↓

を使うのがとても具合がいい。

なんで早くやっておかなかったのか、後悔している。

 

7.乾燥機・食洗機・ルンバ

現代版の3種の神器ではなかろうか。もっと早く買っておけばよかった。後悔している。

たぶんこれらのお陰で、休日の自由時間が倍以上に増えた気がする。

特にルンバ↓は、ヤバい。掃除の概念が変わるし、家具もルンバに合わせて選ぶようになる。

昭和の人々は、洗濯機、テレビ、冷蔵庫を「3種の神器」と言い、あこがれの的としたそうだが、洗濯機や冷蔵庫も、家事の負担を激減したことだろう。

いつも時代も、「家事の負担を減らすもの」は歓迎されるのだ。

 

8.ブログ

ブログはいい。何がいいかというと、書くのが楽しい。だがそれ以上に、自分が考えていることをまとめることに非常に役立つ。

でも、私はつい5年前まではブログを書いていなかった。考えをまとめるときは、手帳やPCのファイルなどに、個人的にまとめていただけだった。

これはこれで役に立ったのだが、「人様にお見せする」となると、気合の入り方も違うし、きちんと調べてから書くくせがつく。

もう10年以上ブログを書いている人たちもちらほらいて、大変に上手な文章を書いていると「ああ、もっと早く始めておけばよかった」と後悔している。

 

 

とにかく「時間」が結果に大きくに関係することは早く始めるに限る。

人生は短いのだ。

 

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(2025/4/24更新)

 

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