a1180_010995NHKはいつも良い番組を作る。

独立”する富裕層 ~アメリカ 深まる社会の分断

 

もちろん取り上げられた事例はほんの一部であり、とても一般化できるものではないが、それでも小説や映画の中にしか無かったような世界が既にアメリカにできていることは驚きだ。

この番組で取り上げたのは、「金持ちが貧しい人々を捨てて、自分達だけの国を作ってしまったらどうなるか?」という事例だ。

 

”100万ドル以上の資産を持つアメリカの富裕層。

その富裕層が今、自治体の在り方を変えようとしています。
貧富の格差による社会の分断が進むアメリカ。
富裕層は税金が貧困層のためばかりに使われていると反発。
みずからが住む地区を周囲と切り離し、新たな自治体を作る動きを強めています。”

富裕層の設立した自治体の代表はこう述べている。

”サンディ・スプリングス市 ラスティ・ポール市長


「自治体は税金を当たり前だと思わないことです。
税金に見合うサービスを提供しなければ、市民はすぐ不満をため、税金を払わなくなります。
公共サービスの質を高めて、市民に税金を払う動機を与え続けるのです。」”

当然金持ちのいなくなった自治体は財政難に陥り、「警察がいない」など、十分な公共サービスが受けられなくなる。それは、貧しい人々達の生活の質をより一層落とす。

さて、このまま自治体の分離が進めばどうなるか。想像してみる。

1.貧困層地区の治安悪化

2.貧困層地区と、富裕層地区の境界で犯罪率の上昇

3.富裕層地区自治地帯はゲーテッド・コミュニティを構築。防衛費の増加

4.防衛費の負担に耐え切れない一部の富裕層が、貧困層に転落。富裕層地区の要塞化・武装化が進む

5.富裕層地区住人のロビイ活動により、貧困層地区の住人が富裕層地区に立ち入ることができなくなる法案が可決。(≒上海などの中国の経済特区)

6.事実上の身分制度の誕生(特区内住人と、特区外住人)

7.民主主義の後退

民主主義の後退まで行くと少しいい過ぎと感じるかもしれないが、私は決してオーバーではないと思う。

富裕層地区の住人はいわば、「民主主義を拒否した人々」だ。

彼らは普通選挙が誕生する以前の状態に戻りたい、と願っている。「税金を沢山払った人が、税金の使い途を決めることができる」と主張しているわけであるから。

人類は普通選挙の獲得までに長い苦労を重ねてきた。

1889年
(明治22)
1890年
(明治23)
45万人
(1.1%)
直接国税15円以上納める25歳以上の男子
1900年
(明治33)
1902年
(明治35)
98万人
(2.2%)
直接国税10円以上納める25歳以上の男子
1919年
(大正8)
1920年
(大正9)
307万人
(5.5%)
直接国税3円以上納める25歳以上の男子
1925年
(大正14)
1928年
(昭和3)
1241万人
(20.0%)
25歳以上の男子(戦前の普通選挙)
1945年
(昭和20)
1946年
(昭和21)
3688万人
(48.7%)
20歳以上の男女(戦後の普通選挙)

出典:静岡県総合教育センター

普通選挙制が採用されてきた理由は、安定した社会を作るためには、「税をたくさん払う人」が「税の使い途」を決めてはいけない、という智慧が歴史から得られたからだ。古代ローマでも、絶対王政のフランスでも、内乱の火種は税金の使い途、ということは多い。

富裕層が自分たちを塀で囲えばかこうほど社会が不安定になり、結局は自分たちの子孫が困るということに気づいていないのであろうか。それとも気づいていても、気づいていないふりをしているのだろうか。

【安達が東京都主催のイベントに登壇します】

ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。


ウェビナーバナー

▶ お申し込みはこちら(東京都サイト)


こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい

<2025年7月14日実施予定>

投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは

借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。

【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである

2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる

3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう

【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください

(2025/6/2更新)