家は人生で最も高額な買い物の一つであるにもかかわらず、買い手と売り手の情報格差がひどく、素人がたやすくプロにカモられてしまうことがよくある。
例えば、一昔前は、ちょっとした賃貸ですら不動産のプロしか物件情報を持っていないという状況であり、自分が勧められている物件が良いものなのか悪いものなのか、家賃は割高なのか割安なのか、素人にはほとんど判別ができなかった。
ただ、インターネットの発達によって「物件情報」は広く公開されるようになっており、現在ではたやすく不動産の比較ができ、相場もわかる。
だから最近は一般の人は昔よりも不動産の情報を手に入れやすくなったといえるだろう。
例えば業者しか閲覧することのできなかった「レインズ」(業界向けの案件情報サイト)と同様の質を持った一般向けのサイト「不動産ジャパン」などが出現し、仲介業者は既得権にあずかることが難しくなってきている。
しかし、不動産取引においてほんとうに重要なのはこういった「物件の比較」や「相場情報」ではない。不動産を購入する上で最もトラブルになりやすいのは、ランニングコストだからだ。
例えば、こういった情報がある。
機械式駐車場はなぜ、最悪なのか。
デメリットは、毎月の維持管理費が高いこと、車高の高いRV車などが収納できない可能性があることなど。特にパズル方式などは、車の出仕入れに時間がかかり、使い勝手はすこぶる悪い。
また、機械式駐車場の法定耐用年数は15年。20年もすれば、建て替える必要があるので、将来の建て替えを見込んで、駐車場使用料をも高めに設定しておく必要がある。
財団法人駐車場整備機構の資料によれば、駐車場のタイプ別の建設コスト、維持管理費の目安は、次のとおりとなっている。
- 平面自走式:建設コスト(10万円/台~50万円/台)、月あたり維持管理費(1,000円/台以内)
- 立体自走式:建設コスト(70万円/台~350万円/台)、月あたり維持管理費(1,000円/台以内)
- 機械式(2段・多段):建設コスト(100万円/台~250万円/台)、月あたり維持管理費(2,000円/台~4,000円/台)
機械式駐車場の安い使用料に喜んでいるとすれば、かなりの能天気だろう。20年後の建替え時に泣くことになる。”
こういった話は、自分からかなり勉強しようとしない限り、知り得ない情報だ。
また、こういった話もある。
既に反面教師が存在している。
7年前(平成19年3月)に竣工した、42階建て3棟からなるメガ・タワーマンション、WORLD CITY TOWERS(ワールドシティタワーズ)だ。
ゲストルーム(高層スイート4室、低層スタンダード5室)やシアター兼通信カラオケルーム(1室)、フィットネススタジオやプール(20m×2レーン&キッズプール、温水ジャグジー)など、本日の物件以上に豪華な共用施設が満載。
総戸数2,090戸のトリプル・タワーマンションでさえ、プール運営の赤字に悩まされているのだ。
ワールドシティタワーズの「自治会ニュース2013年2月15日号(Vol.16)_PDF」によれば、年間の赤字は約3,000万円。
まあ、1世帯あたりにすれば、1.4万円(=3,000万円÷2,090戸)だから大した額ではないという見方もできなくはないが。
プールを利用しない人にとっては、文句の言いたくなるところだろう。
豪華な共用施設で販促し、あとのツケは住民に回すというビジネスモデルの復活。”
家は長い人では数十年使うものだ。そして、何十年も先になって、今の家がどのようになっているのかを想像するのは本当に難しい。
「マンションを買う」ということだけを考えても問題は山積みだ。
修繕積立金がきちんと積み立てられているだろうか?
住民の合意が取れるような規模だろうか?
マンションの施設が故障した時の費用はどのように配賦されるのだろうか?
マンションにそんな豪華な設備は必要なのだろうか?30年後もきちんと維持できるのだろうか?
本当に新築にする必要があるのか?(新築に対して、「築0~5年」で15%下落)
家を買うということは、そういったこと一つ一つと対峙しなければならない。
でなければ、「不動産を買う」のはギャンブルにすぎない。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

ティネクト代表の安達裕哉が東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。
ティネクトでは現在、生成AIやマーケティング事業に力を入れていますが、今回はその事業への「投資」という観点でお話しします。
経営に関わる全ての方にお役に立つ内容となっておりますでの、ぜひご参加ください。東京都主催ですが、ウェビナー形式ですので全国どこからでもご参加できます。
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)