皆さんは、スマホやパソコンの周辺機器を繋ぐ端子が合わなくて、困った経験はありませんか。

まだ携帯電話がガラケーにすらなっていない、ウインドウズ95や98が現役選手だった時代には、情報端末と周辺機器を繋ぐための端子もさまざまで、四苦八苦したものです。

いっぽう最近は、USB端子やHDMI端子をはじめ、周辺機器を繋ぐ規格がだいたい統一され、充電や接続にも苦労しなくなってきました。それだけに、繋がりそうな端子が微妙に合わなかった時の苛立ちや悲しみもひとしおなのですが。

 

さて、ここからは人間の話。

私には、最近の社会人のほとんどが「USB端子を備えている」ようにみえます。

どういうことが言いたいのかというと、人と人とを繋ぐコミュニケーションの規格がだんだん統一されてきていて、それさえ出来ていればコミュニケーションに困らなくなった反面、規格をはみ出した人間が繋がりにくい状況になってきているように思われるのです。

テキパキしてない人、愛想も要領も悪い人はどこへ行ったの?

コンビニやホームセンターの店員だけじゃない。市役所の窓口の人も、福祉課の皆さんも、たいしたものだ。職業柄、若い警察官の方と話す機会も多いけれど、彼らの対応にもソツがない。えらくスムーズで、しっかりしている。

似たような傾向は、建設業や製造業に従事している人にも、ある程度見受けられる。病院の内外で(特に勤続5年ぐらいの)若い人と話す限り、ネットスラングでいうコミュ障の兆候を読み取れる人にはなかなか出会わない。

みんな、なかなかコミュニケーションも達者で、「ぎこちなく頑張って喋ってます」的な人や「真面目に働いているけれども超スロー」な人は稀になった。

上掲のブログ記事を書いてから3年以上経ちましたが、こうした印象はその後も変わっていません。日本じゅうのどこへ行っても、どこでどういう職種の人と出会っても、コミュニケーションのプロトコルや作法の違いが似ているというか、まさにUSBのごとく共通規格化が進んでいるなぁと感じます。

 

むろん、細かな部分では「ローカルルール」は残存していますし、高齢者には適用しにくい話ではあるのですが、前世紀に比べると、コミュニケーションの共通規格化・フラット化が進んでいるように思われます。

コミュニケーションが共通規格化したことにより、共通規格どおりにコミュニケーションできる人は意思疎通に困らなくなり、その汎用性を最大限に活かせるようになりました。ちょうど、USB端子のついた端末がその汎用性を最大限に活かせるのと同じように。

 

そのかわり、コミュニケーションの共通規格に適合できない人には辛い世の中になったとも言えます。

いくらコミュニケーションのプロトコルや作法が共通規格化したとはいっても、人間そのものまでもが共通規格化したわけではありません。共通規格化したコミュニケーションに易々とついていける人がいる一方で、自分自身を強引に折り曲げて、ヘドモドしながら規格をあわせている人、消耗している人がいるのもまた事実でしょう。

コミュニケーションの「ローカルルール」が減っていったということは、地方のどこか、あるいは余所の企業のどこかに行けば自分が易々と適合できるようなローカルルールに出会えると期待しにくくなった、ということでもあります。

海外に行けばさすがに話が変わってくるでしょうけど、こと、国内にいる限り、現今のコミュニケーションの共通規格を意識せざるを得ません。

 

「USBが刺さらなくても生きていける人生」は修羅の道

他方、きわめて稀にですが、コミュニケーションの共通規格にあまりついていけなくても困らない環境を手に入れる人もいます。

世の中には、若い頃から研究者として大きな業績を積み上げ、変人ではあっても大切にされている人がいます。コミュニケーションがあまりに型破りで「とうていUSBが刺さるとは言えない」けれども、あまりにも貴重な人材ゆえに大切に取り扱われている人がいないわけではありません。

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この『3月のライオン』をはじめ、棋界を舞台にした作品にも、コミュニケーションに一癖二癖ある登場人物が数多く登場しますが、棋界のような実力だけがカリカリに問われる世界では、コミュニケーションの共通規格がこなせなくても大きな問題にはならないのかもしれません。

また、そこまで極端ではないにせよ、芸能やメディアの領域などにも、実力を買われ、コミュニケーションのプロトコルの不出来を大目に見てもらえている人が点在しています。さしずめ、「あいつはUSBがキチンと刺さらないけれど、実力はホンモノだから使わないわけにはいかない」といったところでしょうか。

 

そのかわり、USBがキチンと刺さらなくても不問に付してもらえるような人生も、それはそれで厳しいものがあります。

それこそ棋界が象徴しているように、実力主義の世界でトップグループに居続けられる人間はほんの一握りです。

研究者の世界でも、コミュニケーションを不問に付してもらえるほどの実力者は滅多にいません。芸能やメディアの領域の人々にしたって、コミュニケーションのUSBがスンナリ刺さる人となかなか刺さらない人では、「使ってもらえる」チャンスを掴む確率がかなり異なるでしょう。

結局、コミュニケーションの共通規格を不問に付そうとすればするほど高い実力が必要になり、そのような「社会の特等席」を獲得するための競争率も高くなってしまうのです。

 

どちらにせよ、生きるとは大変なことだ

USBのような、コミュニケーションの共通規格をしっかり身に付けて汎用性のある生き方をするのか。それとも尖った実力を身に付け、コミュニケーションの共通規格が多少不出来でも大目に見てもらえるポジションを捕りに行くのか。

どちらが向いているのかは人それぞれで、どちらが人生の正解ということもありません。また、両者の間に無数の中間形態があることは言うまでもありません。

 

ただ、間違いなく言えるのは、コミュニケーションの共通規格に自分自身を適合させていくのも、そういった規格を実力で度外視できるようにするのも、相応に大変だということです。どちらも不断のつとめによって成り立つものであって、無為に過ごしているだけで成立するものではありません。

 

世の中には、いろいろな仕事があって、いろいろな人生が存在しています。コミュニケーションの共通規格をこなせる度合いも、人それぞれです。

しかし、どのような仕事や人生であれ、「ラクにこなせる」とか「何もしなくても大丈夫」ってのはたぶん無いのです。水面の水鳥のように優雅に生きているように見えるあの人だって、本当は水面下で不断のつとめをやっているに違いありません。

 

それだけに、人が生きているということ・生き続けているということは、改めて考えると大層なことではないでしょうか。コミュニケーションの共通規格に適合していく人も、そこから離れて生きている人も、みんな社会のなかでしのぎを削って、終わりのないレースのような生を生きているのです!

それは苦しいことかもしれないし、それが楽しいことかもしれない。どちらにせよ、人間がつとめ続ける営為自体は、尊いことだと私は思います。

 

なんだか曖昧な文末になってしまいましたが、コミュニケーションの共通規格が得意な人も、苦手な人も、今年度も頑張っていきましょうね。

 

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【プロフィール】

著者:熊代亨

精神科専門医。「診察室の内側の風景」とインターネットやオフ会で出会う「診察室の外側の風景」の整合性にこだわりながら、現代人の社会適応やサブカルチャーについて発信中。

通称“シロクマ先生”。近著は『融解するオタク・サブカル・ヤンキー』(花伝社)『「若作りうつ」社会』(講談社)『認められたい』(ヴィレッジブックス)『「若者」をやめて、「大人」を始める 「成熟困難時代」をどう生きるか?』(イースト・プレス)など。

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