私は、最近自炊を始めた。これは自分にとってものすごく大きな変化だ。
これまで自分にも他人にも、たくさんの「自炊しない言い訳」をしてきた。
・料理は外注する時代。今どき自炊なんてしなくたって生きていける。
・節約と言うけれど、1人分だとたいしてコスパは良くない。
・仕事を頑張っているのだから、仕方ない。
・少し高いお金を出すだけで時間が節約できる上に自分では作れないような美味しい料理が食べられるのだからむしろ外食はお得である。
などなど……自炊しない理由はいくらでも出てきた。
私にも、自炊していたときはあった。大学生になって一人暮らしを始めた頃は張り切っていた。
カレーや肉じゃが、炒め物など、簡単なものだったけど、ちゃんと作っていた。でもだんだん面倒になり、外食や惣菜を買って帰ることが増え、卒業する頃には全く作らない生活になっていた。
「私には自炊する生活が合わなかったのだ」と自分を納得させていた。
今の家を借りるときは「掃除がラクにできるように、一人暮らしできるギリギリの大きさにしよう」と小さめの部屋を選んだ。
食器や調味料、調理器具を置くスペースがあまりなかったので、シンプルイズベストと割り切り、最低限のものだけ残した。まな板を置いて野菜を切るスペースすらなかったけれど、気にならなかった。どうせ料理なんてしないのだから。
料理好きな先輩に「料理は一度やり始めたら楽しくなる」と言われても「やったことあるけど楽しくならなかった」としか思わなかった。
「そのうち料理したいと思うときがくる」と言われても「そんな日は絶対こない」と思っていたし、「自分のためだとやる気にならなくても、食べさせてあげたい人ができたら作りたくなるかも」と言われても「自分のためですら作る気にならないのに、まして人のためなんて」と思っていた。
そんな私が、自炊である。ありえない。
なぜ自炊することになったのか。「恋人のために♡」なんて甘い理由があるわけでもなければ、「健康のため」「節約のために」と意識が高くなったわけでもない。
ただ、日々の食事に飽きたのである。
代わり映えのしないメニューと味。美味しいと思っていた食事も、数年で飽きた。
かつて読書家の先生が「漫画が好きなら気が済むまで読むといい。無制限に読みたいだけ読んでいると、いつか飽きてきて本を読みたいと思うときがくる」と言っていたことを思い出す。
きっと、そういうことなのだ。
調味料を買い揃えたり、作り置きおかずの本を買ったりと、1ヶ月前の自分からは想像できないような自炊ライフである。別人に生まれ変わったようだ。
普段から料理をしている人にとってはどうってことない話だろう。
でも、誰にでも「どうしてもやる気になれないこと」「頑張ってみたけど続かないこと」ってあると思う。
そういうものから逃げず、苦労しながら続けていくことで得られるものはたしかにある。
でも、無理に続けようとしなくても、必要なときがきたら自然とやる気が出てくることもあるのではないかと思う。
自分で無理していると感じているということは、モチベーションを保つだけの理由が自分の中にないということだ
。必要なときがきたら、そのときにやればいい。全てがそうとは言えないけれど、「今それを無理してやる必要あるのか」と一度自分に問いかけてみるのはいかがだろうか。
英語コンプレックスだった人が海外転勤をきっかけに現地で楽しく会話しているかもしれないし、運動が苦手で体育の授業を苦痛に感じていた人が大人になってジョギングを楽しんでいるかもしれない。
数学の授業が嫌いだった人が、会計の勉強にはまって資格を取り、公認会計士として働いているかもしれない。
苦しみながら取り組んでいたことも、きっかけさえあれば楽しく取り組めるようになる可能性は充分ある。
必要性を感じていないときに苦しみながら続けるより、何かのきっかけでやる気になったときに楽しくやれればそれでいい。
必要性を感じていないということは、少なくともその時の自分にとっては必要のないことなのだ。無理に続けるくらいなら、その時間を他のことに充てたほうが有意義な時間が過ごせるだろう。
ちょっと自炊をするようになったからといって偉そうに語るのもおかしな話だけど(というか自炊って自分にとってはすごいことだけど大半の人にとってはたいしたことではないのだろう)、「自分が○○するなんて絶対ありえない」と思っているようなことを、案外イキイキと楽しんで取り組んでいる未来の自分がいるかもしれない。
だから無理やり取り組んでいることはさっさとやめて、やりたいことを存分にやるのもアリだと思う。
そうしているうちに「一生やるもんか」と思っていた苦手なことを「やりたい」と思うときがくるかもしれない。まあこないかもしれないけど、それはそれで「本当にやりたくないことだった」ということなので、やめて正解だったと言えるだろう。
ストレスはほどほどに。皆さんが楽しい生活をおくれますように。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
【著者プロフィール】
名前: きゅうり(矢野 友理)
2015年に東京大学を卒業後、不動産系ベンチャー企業に勤める。バイセクシュアルで性別問わず人を好きになる。
【著書】
「[STUDY HACKER]数学嫌いの東大生が実践していた「読むだけ数学勉強法」」(マイナビ、2015)
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(Photo:Leo-setä)