仕事を成功させるためには、シンプルで確実な法則がある。

この法則を使えば、恐らく多くの仕事で良い結果が得られ、さらにはコンペやコンテストでも勝ち抜ける可能性が上がるという法則だ。

 

しかもこの法則は、3000円を出して分厚いハードカバーの本を購入し、意味のよくわからない自己啓発本を読み進める必要もないので、とてもお手軽である。

我ながら怪しい書き出しだと思うが、きっとデタラメではない(と思う)ので、書いてみたい。

 

「もしドラ」は何がおもしろいのか

先日、Books&Apps運営者の安達さんから、「桃野さん、一度ドラッカーの『マネジメント』の書評を書いてもらえませんか?」と依頼され、10年ぶりに同書を読み返すことがあったが、正直10ページほどで頭が痛くなった。

そして即日、丁重にお断りした。

なんというか、簡単なことを良くここまで難しく書けるなあ、というのが、同書を久しぶりに読み始めた感想だった。

 

ところで先日からBooks&Appsには、「もしドラ」こと、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」の著者、岩崎夏海さんが著者として参加されている。

 

こちらの記事で筆を執られているが、岩崎氏はまさに、このドラッカーのマネジメントで大ブレイクした放送作家さんである。

そんなタイミングであったこともあり、ドラッカーのマネジメントよりも「もしドラ」の事が気になり、こちらも久しぶりに手にとって読み返してみた。

 

まず、ドラッカーの「マネジメント」についてだ。

この本には、会社経営に関する原理原則が詰まっている。

経営者であれば、その内容に共感しない者はまずいないだろう。それほどに、原理原則が述べられていて示唆に溢れる内容だが、しかし本当につまらない。

 

それはきっと、聖書やお経を読むようなものだからだ。

その内容は正しいかも知れないが、次のページをめくる前に、

「この段落、あと何ページあるんだよ・・・」

と、思わずパラパラめくってしまうほどの嫌気が差してくる。

 

そこに、岩崎氏の成功の秘密がある。

そして、この稿でお話したい、「成功法則」もある。

ドラッカーのマネジメントは、普遍的に正しいと言えるマネジメントの法則が詰まっているのに、読み進めるのは苦痛なほどに、ぜい肉も遊びもない。

それに対し岩崎氏は、そのエッセンスの中からさらにエッセンスを抽出し、その真髄をわかり易く、誰にでもわかる読み物にした。

 

この功績は非常に大きい。

わかりやすく言えば、岩崎氏は学研の「漫画日本の歴史」シリーズなどに代表されるような、学習することが苦痛な知識や真理を、誰にでもわかる内容に置き換えて、日本人の「知に貢献」したということだ。

だからこそ、「もしドラ」はブレイクした。

 

ちなみに「もしドラ」は、ドラッカーのマネジメントを読んだ女子高生が、そのエッセンスを理解して自分がマネージャーを務める部活を成功に導くお話である。

ミニスカートのかわいい女子高生が表紙であるというあざとさとも併せ、オッサンどもに売れまくった。

ここにも、私が考える「成功法則」がある。

 

料理コンテストで入賞した話

その法則とはなにか。結論を話す前にもう一つ、具体的な事例を挙げたい。

それは、ある料理コンテストに息子が参加したいと言い出した時の話だ。

 

余り知名度はないかも知れないが、「全国親子クッキングコンテスト」という大会が毎年、開催されているのをご存知だろうか。

日本ガス協会が主催する大会で、都市ガスやプロパンガスなどの事業者が毎年夏休みに、全国の小学生を対象に参加者を募集するクッキングコンテストである。

 

地区大会、ブロック大会(近畿、関東など)、全国大会と、段階を踏んだ予選まであり、ちょっとした料理の小学生甲子園として、有名なイベントだ。

小学校の夏休みの宿題で提出が奨励されていたので、おそらく全国の教育委員会も協賛しているのではないだろうか。ちなみに2017年度の開催では、6万組の親子の参加を数えている。

 

このコンテストにかつて、小学生の息子が出たいと言いだした。

しかし、

「何を作りたいの?」

と聞いても、

「卵焼き!」「焼き肉!」

などというばかりで、参加賞ももらえるかどうか、怪しいプランしか思いつかない。

仕方なく、少しインチキだと思わなくもなかったが、やるからにはなんとか勝たせてやりたいと思い、アイデアを出すことにした。

「親子クッキングコンテスト」なのだから、ここでカミングアウトしてもおそらく問題はないだろう。

 

そこでまず実行したのは、過去の入賞作品の分析だ。

どうやら過去、全国大会で入賞以上に選ばれた料理は、「ご当地食材」を取り入れた、地産地消のコンセプトで占められていることがわかった。

このコンテストの審査員は恐らく、当時(今もだが)流行りの地産地消というコンセプトを評価するということなのだろう。

 

次に考えたことは、主催がガス協会と言うことである。

つまり、ガス調理器具でしかできない料理、言い換えればIH調理器では難しいか、少なくとも美味しく仕上がらない料理を取り入れたら、きっと喜ばれるはずだ。

公表されていないが、隠された評価ポイントだろう。

常識的な分析はこんなところだ。

 

しかしその上で大きな問題があった。

それは、私の住んでいる都道府県が奈良県ということだった。

 

奈良県は「奈良に美味いものなし」と言われるほどに、ご当地食材に恵まれない県である。

日本で数少ない海無し県であり、最初に思いつく食材といえば「奈良漬」くらいだ。

そして奈良漬と言えば、柴漬けや沢庵のようなスーパースター漬物と違い、「嫌いな漬物」ランキングで必ずワーストを争うような、残念ながら不遇の食材である。

 

そんなイメージのある奈良県の食材で、地産地消のご当地食材で戦うのは無茶かも知れない。

しかし勝つためには、このコンセプトは外せない上に、不人気食材だからこそインパクトがある。

「奈良漬を使って、何かメインになる一品を考えて欲しい。」

と妻に伝え、アイデアを待った。

 

そんなある日、仕事から帰ってきていつも通り食事を始めた。

妻が作ってくれたご飯、少し甘い香りがして、和風でありながらフルーティーな香りがする初めて見る炊き込みご飯だ。

「何が入っているの?」

と聞いても妻は、

「なんでしょ~」

というばかりで教えてくれない。

 

少し頂いてみると、ご飯の甘味が口いっぱいに広がり、謎の食材もご飯にとても合う控えめの甘さで、食べたことがないとても美味しいものだった。

「まさかこれ・・・奈良漬!?」

「正解!」

と言われてもなお、それが奈良漬とはにわかには信じられないほどに、本当に美味い。

奈良漬は加熱すると、ここまで旨くなるのか。しかもご飯との相性が抜群に凄い。

 

結局、この炊き込みご飯をメインに、それに合うおかずを組み立てて大会に出場した妻と息子は奈良県大会を勝ち、近畿大会でも主催者賞を2つ頂いた。

とりわけ、「炎の調理賞」という加熱調理の巧みな料理に与えられる賞を頂いたのは、親子ともに大きな自信になったようだ。
(写真:http://www.gas.or.jp/shokuiku/cooking/contest7/result_kinki.html

 

成功する仕事は「王道」と「意外性」の共存する場所にある

では、この体験談のどこに「法則」があるのか。

それは、この料理には、「王道」と「意外性」の2つがあるということだ。

 

主催者が求める価値観に沿った形で王道を追求し、その上で、誰も思いつかなかったような意外性を演出している。

「新しい価値の再発見」と言って良いかも知れない。そこには感動がある。

 

このコンテストの審査委員には、プロの料理家の方もいたが、「この奈良漬のレシピを使わせてもらっていいか」と、大会終了後に聞きに来て頂いた程だった。

 

「もしドラ」の岩崎氏の大きな功績と比べるべくもない話だが、それでも原則は同じだ。

「もしドラ」には、ドラッカーのマネジメントという王道と、それを経営者ではなく女子高生が使いこなすという意外性がある。

 

そしてどんな商売でも、「顧客が求める商品やサービスの追求」という王道に加え、「顧客を感動させるほどのサービス」が加われば、必ずロイヤリティの高い顧客になってくれる。

顧客が感動するほどのサービスや商品は、顧客の期待値を超えたところにしかない。

 

ディズニーランドが成功した理由にも、この「感動」が与えた影響は大きい。

例えば、パーク内のアトラクション上ではもちろん飲食は禁止だが、ある日小さな女の子がアイスを食べながら列に並んでいると、食べきれないうちに自分の番になってしまったそうだ。

当然そのままでは、アトラクションに乗れない。

係員は女の子の目線に腰を落とすと、「お姉さんが持っといてあげる!」と言って、アイスを預かった。

女の子は、アイスが溶けるのを心配し不満げだが、それでもアトラクションに乗り込み夢の時間を楽しんで、出口から外に出た。
するとそこには先程のキャストが立っており、

「お疲れ様!はい、アイス!」

と言って、溶け切った不味そうなアイス・・・ではない、新品の同じアイスを女の子に差し出した。

 

当然女の子は大喜びだ。しかしそれ以上にこのサービスに感動するのは、言うまでもなく両親だろう。

僅か数分の間に同じものを買いに走り、娘のために用意してくれたとなれば、ロイヤリティの高い顧客にならないわけがない。

 

このキャストは、僅か数百円の投資でこの先大きなお金を落としてくれる、一生ディズニーを愛してくれるであろう顧客の心を掴んだことになる。

とても優秀な、素晴らしい社員だ。

荷物を預かるという当たり前のサービスに留まらず、顧客自身が「まさかそこまで」と思ってくれる意外性を提供することは、ここまで感動的であり効果がある。

 

しかし、この「王道」と「意外性」。

どちらかだけが突出しても大外しするから本当に難しい。

王道だけで突き詰めると退屈でつまらない。

意外性だけを追求するとそれはただの奇抜だ。

意外性は、基本になる王道があってこそ、活きてくる。

 

コラムを書く際にも、この「普通におもしろい」という要素と「そう来たか」「へ~、知らなかった」という要素を2つ入れながら書くことを意識しているが、正直なかなか上手くいかない。

理屈はわかっていても、実践するのはやはり、本当に難しい。

 

 

【著者】

氏名:桃野泰徳

大学卒業後、大和證券に勤務。中堅メーカーなどでCFOを歴任し、独立。会社経営時々フリーライター。

複数のペンネームでメディアに寄稿し、経営者層を中心に10数万人の読者を、運営するブログでは月間90万PVの読者を持つ。

(Photo:when i was a bird)