「知的な人かどうかは、五つの態度でわかる」という記事を読んだ。

 知的であるかどうかは、五つの態度でわかる。

この記事は「Books&Apps」のサイト内で最もアクセスの多い記事であり、同時に最も評価の高かった記事でもある。つまり、この記事に書かれていることに賛同する人はとても多いのだ。

 

それは分かる。分かるのだが、一方でぼくには物足りないところもあった。

それは、ぼくが以前お世話になっていたあるコミュニティの先輩から、こんな話しを聞いたことがあったからだ。

 

「飛び抜けて優秀な人は、一周回って『できない人』に見える」

 

これは一体、どういうことなのか?

先輩は、コマを例に話してくれた。

 

「高速で回転しているコマは、止まって見える。その意味で、止まっているコマとそっくりだ。それに比べると、ゆっくり回転しているコマの方が、大きく動いて見える。

すると、実際は高速で回転しているコマの方が優秀なのにもかかわらず、端から見ると、ゆっくり回転しているコマの方がむしろ一生懸命何かをしているように見え、優秀に見える。

高速で回転しているコマは、止まっているように見える分、一周回って止まっているコマ——つまりできない人のように見えてしまう」

 

それから先輩は、折に触れて「飛び抜けて優秀な人」の話しをしてくれたのが、上記の「知的な人かどうかは、五つの態度でわかる」の記事を読んだときに、そのことを思い出した。

 

なぜかといえば、この記事で紹介されていた「知的な人」というのは、先輩の話に出てきた「ゆっくり回転しているコマ」にそっくりだったからだ。

彼らは、高速で回っているコマほどには優秀ではない。しかし、端から見ると動きが大きい分、一番優秀に見えるのである。

 だから、上の記事で紹介されているのは、「普通に知的な人の態度」だ。けっして「飛び抜けて知的な人」の態度ではない。

 

もちろん、それはそれでいいのだが、しかし一つ引っかかることがあった。

それは、これまでの時代は「普通に知的な人」が重宝されていたものの、競争が激化した現代においては、「普通に知的な人」の価値がどんどん下がっている。

その一方で、飛び抜けて知的な人の需要は急速に高まっている。

 

だから、この記事を読んで「普通に知的な人」を目指しても、実社会に出てみたら通用せず、困ってしまった——という人が出てくるのではないかと懸念したのだ。

 

そこでこの記事では、「普通に知的な人」と「飛び抜けて知的な人」との違いをつまびらかにしてみたい。

その上で、これからの時代に必要な「飛び抜けて知的な人」になることの、少しでも参考にしていただければと思う。

 

では、「普通の知的な人」と「飛び抜けて知的な人」の具体的な違いとは何なのか?

それは、以下の「五つの態度」によって分かる。

 

一つ目は、異なる意見に対する態度。

 普通に知的な人は、異なる意見を尊重する。

しかし飛び抜けて知的な人は、たとえ異なる意見であっても、そこに客観的な価値がないと判断すれば、親しい人の場合には相手に「その意見は価値がない」と指摘し、親しくない人の場合にはまるっきり無視する。

だから、一周回って知的には見えない。

 

二つ目は、自分の知らないことに対する態度。

普通に知的な人は、分からないことがあることを喜び、怖れないが、飛び抜けて知的な人は、分からないことがあったとしても、普段から勉強をしている分、たいていの場合で「自分が知らないと言うことは、きっと自分には必要ない知識だ」と判断し、スルーする。

だから「分からない」ということについての謙虚さが欠けているように見え、知的には見えない。

 

「シャーロック・ホームズ」シリーズの第一作『緋色の研究』に、地動説を教えてくれたワトソンに対して、ホームズが「そんな知識は必要ない」とばっさり切り捨てる有名なシーンがある。

ホームズのように飛び抜けて知的な人は、自分に必要な知識が何かということがあらかじめ分かっているから、たとえ分からないことに出くわしたとしても、おいそれと喜んだりはしないのだ。

 

三つ目は、人に物を教えるときの態度。

普通に知的な人は、教えるためには自分に「教える力」がなくてはいけない、と思っている。

飛び抜けて知的な人は、能力のない人に教えるよりも、能力のある人を見つけてくる方が早いと知っているから、そもそも他人に何かを教えない。

また、真に能力のある人は、他人から教わらなくとも自分で学ぶから、やっぱり教えない。

 

おかげで、飛び抜けて知的な人の教え方は下手なままだし、教わり方が下手な人間と接すると、すぐに「こいつは能力がない」と切り捨ててしまう。

これもやっぱり、周囲からはただのワガママにしか見えず、知的とは思われない。

 

四つ目は、知識に関する態度。

普通に知的な人は、損得抜きに知識を尊重する。飛び抜けて知的な人は、自分の記憶のリソースが有限だと知っているから、たとえ知識であっても無闇に尊重したりはしない。

価値のない知識だと判断すれば、即座に切り捨てる。

これも、一周回って知的ではない人とそっくりなので、知的だとは認められない。

 

五つ目は、人を批判するときの態度。

知的な人は、「相手の持っている知恵を高めるための批判」をする。飛び抜けて知的な人は、「相手の持っている知恵を貶めるための批判」をする。

なぜなら、飛び抜けて知的な人は「ポジティブ・シンキング」の限界を知っているからだ。

「相手を高める」という一見Win-Winな関係よりも、相手を貶めた方が最終的にはより大きな成果を上げられる場合が少ないことを、経験的に知っている。

ただしこれも、もちろん周囲からは知的に思われない。

 

このように、飛び抜けて知的な人は、一周回って知的ではない人とそっくりになる。

つまり、先輩が言っていた「飛び抜けて優秀な人は、一周回って『できない人』に見える」という状態になるのだ。そのため、周囲から「知的ではない」と見なされてしまう。

 

しかし、実はこういう人こそ飛び抜けて知的なのである。「天才とバカは紙一重」というが、飛び抜けて知的な人は、知的ではない人と紙一重になる。

 

そしてくり返しになるが、これからの時代は普通に知的な人の価値がどんどんと下落し、飛び抜けて知的な人の必要な場面が増えていく。

だから、良い悪いは別にして、これをお読みのみなさんにも、周囲からは知的ではないと見られるリスクはあるものの、ぜひ飛び抜けて知的な人の実相を知り、そこを目指していただければと思う。

 

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(2019/6/20更新)

 

【著者プロフィール】

岩崎夏海

作家。

1968年生まれ。東京都日野市出身。東京芸術大学建築科卒。 大学卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。

放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』等、テレビ番組の制作に参加。 その後、アイドルグループAKB48のプロデュースにも携わる。

2009年、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』を著す。

2015年、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら』 。

2018年、『ぼくは泣かないー甲子園だけが高校野球ではない』他、著作多数。

現在は、有料メルマガ「ハックルベリーに会いに行く」(http://ch.nicovideo.jp/channel/huckleberry)にてコラムを連載中。

(Photo:The Naked Ape