「秘密の99%は本人の口から漏れる」

これは元外交官である佐藤優さんの本を読んでいた時に知り、僕が非常に衝撃を受けた言葉の1つだ。

 

外交官は大使館という窓口を通じて、様々な国と関わる仕事だ。その仕事の一環として、スパイのような国家機密に関わる諜報活動に従事する事もあるという。

この諜報活動だけど、忍者のように影に徹して屋根裏に潜伏して行うのではなく、むしろ各国の重要人物とコネクションを作り会い、お互いに話し合って「こいつなら信頼できる」という関係を作る事により、執り行われるのだという。

 

スパイ活動に関わる人には常識らしいのだけど、人間は「本当の事を喋ってしまいたいという誘惑」に常に晒されている。

みなさんも、何か秘密ごとを抱えた時に、誰かにゲロって楽になってしまいたいという衝動に襲われた事が一度ぐらいはあるだろう。

だけど、誰彼構わず「本当の事」を喋ってしまうようならば、その人の信頼は即座に地に落ちておしまいだ。だからこそ、その「本当の事」をゲロる相手は慎重に選ばなくてはならない。

 

だから諜報活動に関わる人は、機密情報を手にする為に、まず信頼関係を構築する。

そうして「こいつなら信頼できる」と相手に思わせられるような人間になる事に成功すると、「本当の事を喋ってしまいたいという誘惑」に負けた人達から、ポロりと情報が出てくるのだというのである。

 

これが「秘密の99%は本人の口から漏れる」の真相だ。

人の口に戸は立てられぬとはよくいったものである。

 

インフルエンザの拡散速度よりも早かった、僕の失恋話の拡散速度

僕がこの言葉に妙に感心してしまったのは、自分自身がまさにこれをやってしまった事があったからだ。

前回の記事に書いたとおり、僕は血反吐をはくような努力の果てに医学部にギリギリ入学した。

 

色恋沙汰は受験の妨げになるからと、数年間必死な思いで異性への誘惑を振り切って受験勉強に明け暮れていた僕は、男子校出身という事も相まって全く異性になれておらず、大学入学後にとある人に一目惚れしてしまう。

それまで読んできた恋愛漫画はいずれも男から女に告白して恋がスタートしていたので、よせばいいのに僕は全く信頼関係すら構築する事無いままにど直球に告白し、当然のごとく見事に玉砕。

 

失恋により傷心した僕は、事の経緯を当時信頼していた人間に報告したのだけど、いま考えてもこれが本当に悪手であった。

彼も当然人だから「本当の事を喋ってしまいたいという誘惑」に常に晒されている。

学校なんてのは、ただでさえゴシップネタに飢えた場所だ。閉鎖環境下にある医大社会は特に狭い。

僕がこっぴどく振られたという情報はまたたく間に広がってゆき、次の日にはクラスメート全員が僕が振られたという事実をしっていた。

 

この有様をみた僕の友人の一人がこの光景をみて

「インフルエンザの拡散速度よりも、お前の失恋話の拡散速度の方が早いのではないか?俺はこの世で奇跡をみた思いだよ」

と冗談交じりに慰めて?くれたのだけど、当時の僕はまるで不貞の罪で公衆の面前で公開ムチ打ち磔の刑に晒された未亡人のような気持ちで一杯であった。

ああ、まさに「秘密の99%は本人の口から漏れる」のである。

 

まあ、文字に書き起こすと別にどこにでもよくある話だし、今となっちゃ笑い話の1つで済ませられるような話ではあるのだけど、当時は振られた苦しみに加え、公衆の面前で恥を晒されているような苦しみが重なり、文字通りメンヘラになるのではないかという位には苦しかった。

これが僕の人生で、今まで二番目に苦しかった思い出である。

 

痛い思いをして学んだ様々な事

とはいえまあ、人間というのは痛い思いをしたら1つや2つは学ぶことがあるものである。

いや、4つ学んだ。僕の血で得られた”学び”を是非とも読んでくださいませ。

 

1つ目の学びは「人の噂も七十五日」という言葉をリアルに実感した事だ。

こんな感じでまたたく間にHOTワードとなった僕の失恋話だけど、当然のごとく、何日もたつにつれて、そのうち全く話題になんてならないような話題に成り下がってしまった。

 

人の噂も七十五日とは本当によくいったものである。

実際、体感的にも2ヶ月するかしないかぐらいで、あんなにも血肉がわき踊るかのように嬉々として語り継がれていた僕のゴシップネタは、誰もが食思不振に思うようになった。

まったく、人間というのは実に勝手なものである。

 

2つ目の学びは、どんなに傷ついたとしても人間というのはいつかは心が癒やされてしまう生き物なのだという事だった。

振られて七転八倒した後、公衆の面前で恥を晒されてうつ病一歩手前に突っ込んだ僕のメンタルだったけど、その後時間が経つにつれて、徐々に回復してゆく事となった。

その時に本当にありがたかったのが、武道をやっていたことだった。

 

何もしないでいると、色々な事が自然と心に響いてきて「ギャアァ」と頭を抱えてしまいたくなってしまうのだけど、武道の型を無心に徹底していた時だけは、本当に何も考える事無く無心でいられたのである。

「ああ、何も考えずに無心でいられるという事がこんなにも素晴らしいとは!」

この時以上に、武道の素晴らしさを実感した事はない。

 

似たような話は他にもある。僕の友人で、医者になった後に、とある患者の不幸に立ち会ってしまい心が崩壊しかけた人がいるのだけど、彼はひたすら淡々とプレイステーション2の桃太郎電鉄というゲームを無心でやり続ける事で、メンタルが底から這い上がってくるのを待ち続けたのだという。

「辛い時、時間だけが人を癒やしてくれるんだよ」

どういうシチュエーションだったかは忘れたけど、かつて僕の母親がこう語ってくれた事がある。今でも実に至言だなと思う。

 

3つ目の学びだが、他人の秘密をどうしても話したくてしかたがないときは、その人と全く関わることがない人にのみ話せという事だ。

かつて女優である西川史子さんが「人の悪口を家庭の食卓であえて話している」と仰っていた。

西川史子、食卓で家族順番に悪口ルール「外で悪口言わないために…」/芸能/デイリースポーツ online

西川は「母が隣の奥さんが嫌だというようなことを言ったり、私が可愛い子が隣のクラスに入ったとか、そういうことを言う」と説明。

家族がその「可愛い子」の写真を見て「父親が『鼻から口までが長い、サルみたいだ』って悪口を言ってくれるんです」と、当時を振り返った。

これは「外で他人に悪口を言わないため」に考案されたルールだという。

なるほど、確かに悪口を絶対に言わないというのは難しい。けど、相手に絶対に拡散しないような形でそれを発散するのなら、家族がぶちまけない限りは絶対にそれが表沙汰になる事はない。

「こいつなら信頼できる」と家族を思えるからこその振る舞いである。

 

ちなみに、冒頭にあげた佐藤優さんは、他人に秘密を暴露するという誘惑に負けないために、あえて不必要な事は知ろうとしないのだという。

知らないことは話せないし話しようもない。だから、相手がヤバイ案件を持ち込もうとしていると察したら、あえてそれを遮って聞かないようにする。

これも1つの秘密を喋りたくなるという誘惑から逃れる為の、魅力的な手段だろう。

 

そして4つ目の学びだけど、たとえどんなに女の子の事が好きになったとしても、いきなり告白するのは下策中の下策であり、女の子と付き合いたかったらまずは食事にでも誘う事からでも始めましょうという事である。

 

恋愛漫画は嘘である。告白から始まる恋などない。秘密だって信頼できる相手にだからこそ話したくなるわけであり、いきなり好意をぶつけるなんてTPOを無視したただの暴走である。

 

何回か食事にでもいけば、そのうち付き合えそうか駄目そうかは冷静に判断ができるようになってくる。

っていうか、下手したら告ってこいという圧力を感じる第六感が働く位には、あなたもきっと成長できるはずである。

 

とまあ、これが僕が散々な思いをして痛い目にあって学んだ事で書かれた、血塗られた知見である。参考にしていただければ、幸いだ。

 

俺の屍を越えてゆけ(´;ω;`)

 

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高須賀

都内で勤務医としてまったり生活中。

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(Photo:Ripton Scott