誰でも会社員を真面目に続ければ、豊かになり続けられる、という時代はすでに終わった。

 

社会学者の山田昌弘氏は著書「希望格差社会」の中で、「安定して生活の向上が見込めるサラリーマン」という身分の終焉について述べた。

旧来型の安定し、かつ、収入が増加していく正社員、正規公務員は徐々に減少し、その一方で、高給が望める中核的・専門的労働者と、マニュアル通りに働く低賃金で地位が不安定な単純労働者が増える。

その中間に、安定した収入は見込めるが、増大は見込めないサービス労働者が生き残る。

その割合と移行スピードに関しては議論があろうが、この傾向は間違いなく進展すると考えられる。

もちろんこれは、日本だけではない。世界的な傾向である。

 

例えば、トーマス・フリードマンは著書の中で、世界中の労働者が過酷な競争に飲まれつつあることを示唆する。

グローバルな産業で働いていると、自分が生み出している価値や、貢献している独自の能力を示して、その仕事にふさわしいことを、毎日のように示さなければならない。

それができないと、あっというまに仕事はどこかへ飛び去ってしまう。

そもそも、どんなときでも、平凡な仕事をしていてはだめだ。

かつて、壁に囲まれた世界では、平凡でもまずまずの賃金がもらえた。なんとかしのいで、すこしは贅沢ができるくらいには。

フラットな世界では、平凡でいいと思ってはいけないし、仕事に対する情熱を欠いてもだめだ。

これは絵空事ではない。

事実、ロンドンビジネススクールのリンダ・グラットンは著書「ライフ・シフト」にて、「低スキルと高スキルの職は増えたが、中スキルの職は減った」ことをデータで示した。

図を見れば明らかなように、1979年以降、低スキルの職と高スキルの職は増えているが、中スキルの職は減っている。スキルのレベルで見ると、労働市場の中央に大きな穴が空いているのだ。中程度の雇用が空洞化しているのである。

いま、我々は一人残らず問われている。

「お前は、自らが豊かになるのに値するだけのことを、世の中に対してしているか?」と。

 

もちろんこれは、皆が望んだ世界の姿である。

「もっと安く、もっといいものがほしい」

「皆が求めるものを作る人が豊かになるべき」

「国は個人に干渉するべきではない」

と皆が考えたから、このような世界になったのだ。

 

もちろん、

「高スキルではなくても、生活の向上は保障されるべき」という方もいる。

全くそのとおりだ。

 

そう言う方は、頑張って選挙に行くべきだ。

また、リストラせず、年功制を保っている企業の製品やサービスを、積極的に買ってほしい。

民主主義、市場経済の世界では、政治家と起業家を動かすのは、あなたが持つ一票と一円だ。ぜひ有効に使うべきだ。

 

この時代に「豊かに過ごす」ためになにをすべきか

だが、誰か他の人がこの状況を解決してくれることを期待して、指を加えて待っているのが嫌な人もいるだろう。

「いま、個人レベルでできること」はあるのだろうか。

「豊かに過ごせるだけのお金」を、将来に渡って入手するにはどうしたら良いだろうか?

 

実は簡単だ。

市場経済の国では、お金は市場に流通しているのだから、市場に直接参加すればよいのである。

 

昔と異なり、現在は個人が市場と接続できる手段はいくらでもある。

個人向けEC、クラウドソーシング、副業……

現在、web、リアル問わず個人向けの市場は、そこかしこに存在し、誰でも簡単に参加ができる。

 

例えば、私は熱帯魚を買っているので、レイアウト用の素材として、流木を買うことがある。

「木なんかわざわざ買うの?」という人もいるだろうが、メルカリを見ると、レイアウト用の流木が2000円から、時には5000円を超える値付けがされている。

これは市場があり、そこに参加している人がいるからだ。

 

時代はすでに「個人」が直接市場に参加できるステージに突入している。

これを利用しない手はない。

 

市場に出て成功するためには「マーケティング能力」が必要

ただし、個人が徒手空拳で市場に参加しても、かなり苦労することだろう。

会社員は通常、会社を通じて、間接的に市場に参加しているため、会社のマーケティング能力に依存している。

だから、個人レベルで「マーケティング能力」のある人はほとんどいない。

 

医師や弁護士などであっても、所属する病院や事務所のマーケティング能力とは無縁ではない。

また彼らは「制度による独占」があるから、マーケティング能力が不足していても、商売ができるのである。

会社も制度の保護もない状況では、マーケティング能力は必須であり、それが不足していれば、市場に参加しても不利な条件で取引せざるをえない。

 

では「マーケティング能力」を身につけるにはどうしたら良いだろう。

 

マーケティングとは、ピーター・ドラッカーの定義によれば「顧客の欲求からスタートする」ことである。

顧客を見つけ、それを満たす製品やサービスを提供することが、マーケティングだ。

 

すなわち、個人レベルで見れば、マーケティング能力を得るためには、

1.顧客を見つける……個人の持つネットワークの質と規模を高める

2.顧客の欲求を満たす製品とサービスを提供する……個人の持つスキル(商品)の質を高める

の2点を満たす必要がある。

 

このうち、多くの会社員や専門家が苦手なのが1.だ。

ネットワークの開拓は、意識的にやらなければ拡大できない。

 

個人のネットワークを広げるために必要なことは

では「ネットワークの質と規模を高める」にはどうしたら良いだろう。

 

様々な方法があるが、第一に、住む場所に注意を払うべきだ。

カリフォルニア大学バークレー校のエンリコ・モレッティは「知的で、教育レベルの高い住民が数多くいる地域に住むことが、収入にとって重要だ」という。

教育レベルの高い住民が多いと、地域経済のあり方が根本から変わる。

住民が就くことのできる仕事の種類が増え、労働者全体の生産性も向上する。

その結果、高学歴の働き手だけでなく、学歴の低い人の給料も高くなる。

エンリコ・モレッティの分析によれば、本人の資質や能力、学歴、職業と関係なく、優秀な人と働くと、自分の収入も上がる。

第一は、高技能労働者と低技能労働者が相互補完的な関係にあることだ。高技能の働き手の数が増えると、それ以外の労働者の生産性も高まる。

優れた機械を使って働くと労働者の生産性が向上するのと同じように、教育レベルの高い同僚と一緒に働くと、高い技能をもたない人たちの生産性も向上するのだ。

第二の理由は、教育レベルの高い働き手がいると、企業が新しい高度なテクノロジーを導入しやすくなることだ。

そして第三の理由は、都市の人的資本のレベルが全般的に高まると、経済学者で言う「人的資本の外部性」が生まれることである。(中略)

人と人が交流すると、その人たちはお互いから学び合う。その結果、教育レベルが高い仲間と交流する人ほど生産的で創造的になる。教育レベルの高い人に囲まれているだけで、経済的な恩恵を受けられるのだ。これが人的資本の外部性である。

たとえスラムであっても、都会に住むことを選択する人がいるのは、それが人がいない田舎に住むよりも合理的な選択だからだ。

 

第二に「できるだけ多様で、優秀な人と、意識的に交流すること」である。

元マッキンゼーのコンサルタントだった、トム・ピーターズは次のように述べている。

あなたがこれから手にする成功の大きさは、あなたがつくる世界の大きさに比例する。アドレス帳や名刺ホルダーの間口と奥行きを真剣に考えてみよう。

そう言う意味で、会社員時代に、多数の人と交流できる立ち場にいると、独立しやすい。

 

例えば、ダニエル・ピンクの指摘では米国のマイクロソフト、マッキンゼー、ゴールドマン・サックス、リンクトインなどには同窓会組織がある。

これによって、各人が退職したあとも、ネットワークが維持されており、これらを通じて市場にアクセスすることが用意になる。

日本においても、リクルートやヤフー、三井物産には同窓会組織があり、ネットワークを築いているという。(参考:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32166240T20C18A6EA4000/

 

第三に、販売してみることである。

何が売れるかは、売ってみるまでわからないし、販売してみることで、人と新しい繋がりができる。

「会社を辞めるので、仕事をくださいと宣言した瞬間、依頼が来た」という体験をした人は決して珍しくない。

 

もちろん、自分が誠実に仕事をしていて、それを知っているネットワークがある、という前提のもとではあるが、「自分のスキルがこんなに歓迎されるなんて、知らなかった」と、フリーエージェントの方はよく言う。

また、

「趣味で作っているプラモデルを売った」

「自分たちが趣味で作っていた家を民泊で貸している」

「ブログを通じて、ライティングの依頼が来た」

なんていう話は、個人が市場に参入している時代には、特に珍しい話でもないのである。

 

 

ハーバード大のニコラス・クリスタキスは「どのネットワークに所属するかが、将来が規定される」という。

所属している社会的ネットワークによって自分の将来が規定されることになる。誰と出会うかを決め、パートナーの好みを左右し、最終的に、他人からどのように見られ、どんな競争上の強みと弱みを持っているかを明確にするのが、社会的ネットワークなのだ。

つまり「「過去1年で、何人の優れた人と交流したか」こそ、我々の日々の生活の充実度を測定する良いKPIの一つとなることは間違いない。

 

もし「去年1年間で、ほとんど新しく優秀な人に出会えてない」とすれば、あなたの持つネットワークは間違いなく弱体化している。

仮にこれが5年、10年と続けば、将来的な豊かさを手に入れるのは難しくなる。

 

逆に、「去年1年間で、毎日のように、新しく優秀な人と交流できた」とすれば、徐々にあなたの世界は強力なネットワークの一部として機能するだろう。

それは、会社員としての身分を失ったとしても、あなたの生活を保証してくれる基盤となるかもしれないのだ。

 

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(2019/6/20更新)

 

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