つい先日、とある編集者の方から
「会社員が、自分の市場価値を上げる方法ってありますか。あるなら記事にしてください」
と依頼された。
曖昧な質問だが、仮に「市場」を転職市場とし、「価値」は給料のことだと置くと、この質問は
「会社員が、転職で、高い給料を出してくれる会社に行く方法って、ありますか」
という質問に翻訳できる。
なるほど。高い給料を出す企業は少ないし、給料は上がらないので、会社員には切実な問題である。
会社員が、高い給料を出してくれる会社に転職するには
正直,そう言う話は、転職サイトでやればいいと思うのだが、Googleで世の中の状況をちょっと調べてみると、いろいろとダメなことがよく分かる。
例えば、「市場価値 上げる」と検索すると、上位の方に出てくるのはこんな記事たち。
市場価値が高い人になるために知っておきたい20代の過ごしかた
20代は地頭の良さ、素直さ、扱いやすさ
30代は実績
40代は経営視点
全世代共通なのは、コミュニケーション力と、会社へのフィット、情熱
人間力
=1.礼儀正しさ 2.謙虚 3.優しさ 4.信頼感 5.自信と活気
1.スキル
2.実績
3.キャリアプランでの希少性。
世の中から求められる人ってどんな人? 「市場価値」を高める3つのステップ
時代や環境に左右されない普遍のスキルが、市場価値を高めるベースとなる。
ステップ1:自分の軸を考える!
ステップ2:理想像を定める!
ステップ3:道筋を立て、行動に移す!
なるほど。
だからどの記事も、結局「実力」がものを言う、という説教になるわけだ。
自分ばかり見ていても、給料は上がらない。
んーーーーー。どれも間違っているわけではない。
だが、微妙。
微妙すぎる。
スキルは大事だし、人間力だって、あったほうが良い。
でも、スキルがあって人間力が高い人であっても、必ずしも高い給料を取っているわけではない。
いや、むしろ、スキルを磨きまくっても、大して給料なんぞ増えない、と思っている人が多いのではないかと思う。
私も同感だ。
正直、上の記事と、私の感覚とは、全くそぐわない。
なぜか。
それは、上の話は全て、「私」=「商品」の話だからだ。
そして、すべての記事がこういっている。
「商品さえ良ければ、市場は高く買ってくれますよ」と。
でも、本当にそうだろうか?
商売をやっている人なら100%わかると思うが、はっきり言うと、商品が良いからといって、売れるわけではない。
もっと言えば、商品の質は普通でも、売り方によって高く売れる。
いや、商品がそれほど良くなくても、高く売ることは可能だ。
もっと言えば、「売れているのが美味しい料理だ。」と言い切っているサイゼリヤの社長のほうが、現実をよく表している。
この百戦錬磨の社長は、「商品よりマーケット」をよく見ている。
これが真実なのだ。
でもなぜ上の記事たちがこんな事になっているのだろう?
簡単だ。
日本の会社員は、マーケットを見るのが、めちゃくちゃ苦手なのだ。
つまり、上は全て、商売をしたことのない人が、「商品さえ良ければ売れますよ!」と言っている、
ウブな記事たちなのである。
現実は「商品(自分)の質を高める」よりも「成長マーケットに飛び込む」ほうが100億倍重要
話を少し変えよう。
20年近く昔のことだが、私がコンサルティング会社にいた頃、ISO9001の認証取得の支援のコンサルティングをしていたことがある。
当時は、ISO9001の取得がブームになっており、「取らないと取引できない」などの条件があるなど、どの会社もISOの認証を取得することに邁進していた。
そして、そこには大きなマーケットができた。
私が在籍していた会社は、そこに目をつけるのが早かった。
いち早くツールを標準化し、支援をコンサルティングメニュー化し、大量のコンサルタントをインスタントに育成した結果、市場を押さえることに成功した。
正直、あのころは「バブル」と言っても良かっただろう。
新卒、第二新卒あたりのペーペーが、とにかくクライアント企業をISOの審査に合格させることさえできれば、1日あたり20万円(月500万)近いコンサルティングフィーがとれたのだ。
ただ、2,3年経つと市場は荒れてきた。
新規参入の会社が乱立し、「合格させますよ」だけでは、仕事が取れなくなってきたのである。
その時、はじめて「商品」の差別化が重要な意味を持ってきた。曰く、業務改善に役立ちます、書類を減らせます、人事評価の役に立ちます……
ただ、それはあくまでも対処療法だった。結局、提案やプレゼンテーションに大きなコストがかかるようになり、単価は下落し、あまり旨味のある商売ではなくなり、ついに私達はこの商売から手を引いたのである。
そこで私が学んだことは一つ。
「マーケットを正確に把握できれば、商品の質は多少低くても、めちゃくちゃ儲かる」である。
要は「商品の質を高める」よりも「成長マーケットに飛び込む」ほうが100億倍重要なのだ。
成長マーケットで商売をしていなければ、どんなに良い商品でも買い叩かれ、利幅は薄くなる。
はたらく人は疲弊し、無駄な競争ばかりが増える。
「スキルアップ」はなんのためか。
良い会社に転職するために、スキルアップしたい、という方がいる。
だが、その「良い会社」とは一体何を指しているのか、明確にしている人は少ない。
一方で、マーケティングの専門家であれば、ターゲットを曖昧にすることは許されない。
セグメントを定め、ターゲットを絞る。そして、そのターゲットに向けて、商品をチューニングしていく。
そこで求められるのは、ひたすらマーケット志向である。
転職も同じだ。
「人間力」とか「素直さ」とか、そういった曖昧な概念ではなく、
「◯◯商事の、◯◯というポジションを狙っているので、◯◯という経験を積んでおく必要がある」と答えられる人のほうが、遥かにマーケットでは強い。
最悪、スキルなどなくとも、誰にでも年収1000万くれる社長と友達だったら、あなたの年収はすぐ、1000万になるのだ。
実際、「転職なんて、人脈で決まる」という方も数多くいる。
「スキルアップしなきゃ」ということで、なんとなく英語を習ったり、サロンに入ったりする人もいるが、はっきり言って、超無駄である。
必要なのは「マーケットの状況を知ること」、つまり狙っている会社と、狙っているポジションを明確にし、それを攻略するのに必要な材料を自分の中に集めていく。
自分がそう言うポジションを取れるように、SNSなどを通じて発言する。
物を書いて、世の中に発信する。
そういった、「マーケター」のような、発想をもつことが、自分の市場価値を高めるのである。
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