ちょっと前にシロクマ先生のこの記事に関係するような話を体験したので共有したい。

「知識を手に入れるための知識」がない人にとって、Google検索はあまりにも難しい。 | Books&Apps

そんな状況下で信頼できる情報をピックアップするためには何が必要でしょうか?

必要となるのは「事前知識」と「高いリテラシー(literacy, 読み書き能力)」と思われます。

僕の友達に、つい最近妊娠・出産を経て初めての子育てに関わることになった女性がいた。

当たり前の話だけど、彼女にとっては初の子育て経験だ。

 

子育てという、様々な困惑の嵐に晒される事になった彼女は、当然の如くわからない事だらけなので仕事と同じ感覚でGoogle検索で色々調べて物事を解決しようと画策したそうなのだけど、これがまあ酷いのだという。

素人が適当に思いついた言葉を用いてGoogle検索でヒットする知識は非常に低レベルなものばかりだったようで、内容が信頼に値するものではなく全く使いものにならなかったそうなのだ。

 

まさに「知識を手に入れるための知識」がない人にとって、Google検索はあまりにも難しい、を地で行くようなエピソードである。

 

彼女は運が悪い事に、友達に子育て経験者が少なく、話を聞こうにも十数年も前に自分を育て上げた母親ぐらいしか知り合いがいない。

鉄火場のように忙しい育児現場で睡眠不足の目を擦って育児書を読むのも難しく、育児開始の当初はかなりまいってしまったようだ。

 

新ママ、まさかの5ちゃんねるに救われる

そんな中で、彼女はあるインターネットサイトで救われた。それがなんと5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)だというのだから驚きだ。

 

2ちゃんねるは1999年に西村博之氏が立ち上げた日本の電子掲示板である。

「ハッキング」から「今晩のおかず」までをスローガンにした場所で、利用者は自分の興味がある板(スレッドという)に出向き、そこで匿名で情報交換を行う。

 

普及当初はインターネット内でもかなりアングラ色が強く、初心者が書き込むと

「厨房が!半年ROMってろ」

と言われるなど、かなり怖い場所であった(先のネットスラングを自分なりに意訳すると、初心者は板のルールがわかるまで、ちゃんと読んで予習してね、位のニュアンスである)

 

2ちゃんねるのアングラ色を特に際立たせたのは、ネオむぎ茶氏による西鉄バスジャック事件や、加藤さんによる秋葉原通り魔事件だろう。

中高生時代の僕にとっては、2ちゃんねるは犯罪の温床みたいなイメージが強く、なんか凄く怖かったイメージがある。

 

しかし実際のところ、2ちゃんねるはどんなマニアックな趣味でも同士を見つける事が可能な、かなり面白いマッチングサイトとしても役割を果たす場所として機能していた。

僕の知り合いに軍事オタクの子がいたのだが、彼は延々と戦車についての話を夜な夜なインターネットでしていたのだという。

 

確かに、そういう話は高校生で好きな奴はあまり多くないし、個人で掘り下げるにしろ、どういう風に知識を身に着けていけばいいかの先人がいれば、より深い場所へと最速で行くことができる。

2ちゃんねるに人が集まってたのは、なにも犯罪者が密談をしていたからではなく、そこにリアルな人と人の触れ合いがあったからに他ならない。

 

そう言われてみれば、確かに5ちゃんねるは、育児の知識をシロウトが手に入れるのには最適な場所である。

なにせ今まで蓄積されてきた知恵が積み重なっているし、先輩ママ達からの最新の育児アドバイスもすぐに手に入れる事ができる。

実際に書かれた事をやってみた他の参加者が「効果あり、なし」の情報共有してくれるから、情報の真偽について、とても判断がしやすい。

まさに、リアルタイム・最新の育児知識の共有ネットワークだったわけだ。

 

なるほど、確かにシロウトがGoogle検索を使って適切な知識を手に入れるのは難しいかもしれない。

けれどインターネットが私達にくれたのは、検索エンジンだけではない。コミュニティという、有益な知識がつまった”場”へのアクセスする権利も、同時に私達に提供してくれていたのである。

 

「知識」と「人脈」はどれだけギブしてもなくならない

ネットワーク理論にハブという概念がある。

ハブとはネットワークの中心の事で、例えば日本の空港なら羽田や成田がハブに相当する。

 

ネットワーク内において、ハブになると繋がりのレベルが凄いレベルで変わる。

例えば、日本の航空の利用者数は1位の羽田空港が8709万人なのに対して、10位の仙台空港はなんと357万人だ。

 

なんでこんな事が起きてしまうのかというと、ハブに全てが集まるような仕組みが産まれてしまうからだ。

例えば、以下の図は複雑系ネットワークのバラバシ・アルバートモデルというものだけど、ネットワークの中心部と端っこはこんな風に圧倒的なつながり格差が産まれてしまう。

(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A4%87%E9%9B%91%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AFから引用 )

 

さて、先の育児話で、僕はコミュニティによる集合知の凄さを書いた。

Google検索を使いこなせないシロウトでも、コミュニティへアクセスさえできれば、一気に知の高速道路に乗ることができる。

 

この強みが最も強く出てくるのは、当然だけど現実社会だ。

例えば、筋の良い知り合いが多かったら、転職サイトを経由するよりも良い転職先を紹介してもらえる確率は圧倒的に高いだろうし、面白い情報の共有スピードも桁違いに上がる。

僕なんかだと、良いグルメの情報は所属コミュニティ内で瞬で広まる。コミュニティはGoogle検索とは別ベクトルで、凄い威力を発揮しているのである。

 

それならば、現実社会で私達が目指すべきは筋のよいコミュニティと交流を持つことで、かつその中でも”ハブ”にどれだけ近づけるかがポイントとなる。

では、どうやったら”ハブ”を目指せるのだろうか?

 

作家の橘玲さんは、著書・働き方2.0vs4.0の中で、そのヒントを書かれている。以下に引用しよう。

一般論としては、「奪う(テイク)」よりも「与える(ギブ)」方が道徳的にすぐれていると誰もが同意するでしょう。

しかし、手元にあるお金をすべてギブしてしまえば無一文になってしまうし、食べ物をギブすれば餓死してしまいます。

 

このことから、「有限のものを無制限にギブすることはできない」という第一の原則が導き出せます。

これは極めて冷酷な原理ですが、それでも例外はあります。無限にあるものならいくらでもギブできるのです。

 

それほどギブしても減らないものなどあるのでしょうか?じつは、そんな特別なものがこの世に2つだけあります。

それが「知識」と「人脈」です。「ギバー」は、自分が持っている知識や人脈を惜しげもなくいろんなひとたちと共有するのです。

(中略)

ギブすることがなぜ重要なのか?このことはネットワーク理論からも説明できます。

まわりのひとたちにギブする知識や人脈をたくさん持っているひとは、それを利用してネットワークのハブになることができます。

そして、情報と同時に富もハブに集まってきます。なぜなら情報(知識)社会において、情報と富は同じものだから。

高度知的社会において、全ての分野において「知識を手に入れるための知識」を習得するのは物凄く難しいし、そんな能力も時間も私達にはない。

 

なら、私達がなすべきことはたった1つだ。

有益な情報の提供を通じて、良き人とネットワークを構築し、そこの中で評判を高めるのである。

 

幸いにして、SNSを始めとする発信型ツールはこの流れを加速し、かつ個人の参加を非常に容易にしている。

例えば個人でも、ツイッターやインスタグラムのフォロワー数でネット社会への貢献度は簡単に推し量れてしまう。

どこにいようが、インターネットに接続さえしていれば、誰でも有益な情報を”無限”にギブできるのが、今のソーシャルネットワーク時代なのである。

 

人気Youtuberが億万長者になったり、人気インスタグラマーにモデルの仕事が舞い込んできたりと、ソーシャル社会へ良き貢献をした人に対する社会の恩返しはすざまじい。

そのレベルでなくとも、例えば僕の周りでもツイッターを通じて仕事だったり配偶者を獲得したりといった話は頻繁に耳にする。

 

僕自身もこうしてライターの仕事を頂けているし、生涯の友といえるような食べ歩き仲間をインターネットを通じて沢山つくる事ができた。

これは運が良かったというものあるとは思うけど、それ以上に、僕自身がキチンと発信を続けていた事に対する、インターネットからの恩返しみたいなものなのかな、とも思う。意外とネットって奴は、義理堅いのだ。

 

というわけで、これを読んだみなさんも、ソーシャルネットへのギブを今日からやってみてはいかがでしょうか?

これが現代というSNS社会における、1つの良い人生戦略なのかな、と僕は思います。

 

 

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【プロフィール】

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高須賀

都内で勤務医としてまったり生活中。

趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。

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