今回の話、諸事情から色々なフェイクが混じりますが勘弁してください。

 

職場に、後輩からの質問をえらい面倒がる部下がいます。

 

後輩や新入社員から何か聞かれると、露骨に顔をしかめる。

同僚や私に話しかけられた時に比べて、異様に口数が少なくなる。

目を合わせない、モニターを見たままいかにも面倒そうに答える。

 

要は、「俺は君に時間を割きたくない」というのが相手にダイレクトに伝わるような態度なのです。

当たり前の話なのですが、新入社員からすると「質問をする」ということ自体がまずハードル高いので、本来可能な限り気軽に質問しやすい環境を作ってあげないといけません。

 

これが例えば、後輩の態度がよろしくないとか、質問が不明瞭過ぎて何を答えればいいか探りだすこと自体が高コストだとか、そういう事情があればまだ話は分かるのです。

勿論不明瞭な質問の一度や二度はあったかも知れませんが、それについては私からも指導していて、きちんとポイントを絞って丁寧な質問をもっていかせても結果は同じなので、そこに根本的な問題がある訳でもなさそうです。

 

納期間際で非常に忙しい時期、

「ちょっと答える時間もないし話しかけられること自体気が散るから勘弁(集中している時のエンジニアにはよくあること)」というようなケースは勿論あって、もっともそういう時も

「今ちょっと無理だからまたあとでね」

とでも言ってあげればいいと思うのですが、彼の場合タスクや仕事の状況に関わらず後輩への態度が一貫している為、それもちょっと違うようなのです。

というか彼、他人に対しては(相手の状況に関わらず)割とざくざく質問しますし、雑談もちょくちょく振ってくれます。

 

彼は技術者としては有能な人であって、立ち位置上後輩や新入社員と関わらない訳にもいかない立場です。

なので私としては、出来れば後輩にもきちんと対応して育ててあげて欲しい。

無論そういうところはちゃんと評価につなげますし給与にも反映させます。

ちょくちょくそういう話もしているのですが、なかなか改善してもらえない訳です。

 

結果、後輩の側も彼に質問しにくくなって、仕方ないので私がフォローする、というようなことが頻繁にあります。

 

うーむ、と思っていた訳です。

 

ところでこれは恐ろしい話かも知れないのですが、私は彼のTwitterアカウントを知っています。

フォローはしていませんが、ツイートを目にすることはあります。

 

いや、別段探り出すようなことをした訳ではないのです。

彼は業務の合間合間にTwitterを参照しているのですが、人が後ろを通りかかった時に画面を切り替えるタイミングが遅い為、イヤでもIDとアイコンが目に入ってしまうのです。

ついでに言うと、職場で何か変わったお土産をもらった時とか、職場の飲み会での料理の画像とか、周囲の同僚に自慢した飼い猫の写真そのまんまとか、そういう画像を全部アップしているので、それでなくても特定されやすい状態ではあります。

 

アレ、同じようなことをやってる人多いけど、気をつけた方がいいです。

うっかりバズったりするとアカウント即バレします。というか、この前も職場で自慢していた猫動画がプチbuzzしてました。

 

いやまあ、例えば職場のPCでエロゲーでもやっているというのならまだしも、SNSで気分転換くらいなら別段うるさく言うつもりもありません。

それくらいのことなら私だってやっています。

業務上の機密情報をツイートしたりするのは流石に控えて欲しいけど、彼の場合そういうところもありません。

そこには別に問題はないのです。

 

ただ、一点疑問に思っていることとして、彼は「Twitterの匿名質問サービス」が大好きなのです。

たとえばインタビューズとか。Ask.fmとか。Peingとか。なんか定期的に流行るじゃないですか、ああいうの。

 

いや申し訳ない、個人的にはああいうサービスnot for meというか、別になんか聞きたいなら直接リプライで聞けばいいんじゃねえの、そもそも誰も俺に聞きたいことなんかねえだろうよと思ってるので利用も観測もしてないのですが、「匿名の質問を寄せられる」というものにはどうも何か特別の気持ち良さがあるようです。

 

そして、しょーもない質問だろうが不明瞭な質問だろうが、なんなら何聴いてるのかよく分からないような質問であっても、彼は嬉々として回答します。

質量ともに充実した回答っぷりです。

つまり彼は、「聞かれること」自体は嫌いではない、というか大好きであるように見受けられるのです。

 

で、彼がそういう匿名の質問サービスに喜々として答えているところを観ると、「めっちゃ答えてるやん」とか「これと職場の後輩からの質問には、どういう違いがあるのだろう?」とはどうしても考えてしまうのです。

 

もしかすると、そのギャップを埋めることが出来れば、彼の後輩の態度への改善にもつながるかも知れない。

では、職場の後輩からの質問と、匿名質問サービスの間には、どんな違いがあるでしょうか?

 

***

 

1.匿名質問サービスは娯楽であって、職場の後輩からの質問は仕事(の付属物)である

これはまあ仕方がありません。厳然たる事実であり真実であり、越えられない壁でもあります。

ただ「それが仕事である」というだけで、娯楽に向けるようなモチベーションが無くなってしまうということは、まあ職場の上司の立場としてはそういうのもなんですが、理解出来るところではあります。

 

2.匿名質問サービスは主に自分についての質問である(多分)が、後輩からの質問は技術的な質問である

やはり、「自分について教えてあげる」という点で、承認欲求が満たされる部分というのは勿論あるのでしょう。

「教えてあげる」という立ち位置をとることで、マウントというと大袈裟ですが、知的優越感を得られる部分もあるのかも知れませんが、それは後輩からの質問でも同じである気もします。

ちなみに、「最初個人的な質問から入って、その後技術的な質問をする」というのは失敗しました。

 

3.匿名質問サービスは時間的な拘束が発生しにくい

つまり、面と向かって質問されると、基本的にはその場で答えないといけない。

当然その分、相手の都合に合わせて時間を拘束されてしまうのですが、匿名質問サービスは好きな時に答えれば良い。

これは結構大きそうな気がします。

 

ただ、「じゃあ質問も全部redmineのチケットにして好きな時に答えられるようにすればいいじゃん」と思って実施してみても、彼の回答ペースは極めて低空飛行のままだったので、ここも根本的な改善ポイントではないようです。

 

もっとも、回答の履歴が残って評価にも繋げやすいし、面と向かって質問した時の嫌な顔が可視化されないというメリットもあるので、これはこれで継続しようと思ってはいるのですが。

 

***

 

と、ここまで考えたところで、ふと思いつきました。

「いや、匿名質問サービスで技術的な質問をすればいいんじゃねえの?」と。

そもそも仕事と娯楽の障壁が問題なのであれば、娯楽の皮をかぶせて仕事の質問をする、ということも可能なのではないか?と。

 

どうせ匿名質問サービスは質問者側も匿名なのですから、誰が質問をしているか回答者には分かりゃしません。であればそれが後輩であっても同じなのではないだろうか?

 

勿論、ソースをそのまま見せて問題を指摘してもらうとか、機密に関わる個別情報とか、そういうものを投げるわけには当然いきませんが、匿名で投げても違和感がない一般的な技術質問なら、聞き方次第で違和感を覚えずに受け取ってもらえそうな気がします。

うまくいけば、娯楽というコーティングのまま、質問に対する彼のモチベーションを高められるのではないか?

 

わざわざTwitterのアカウントを作って実験してみました。

というか、実際にそのアカウントで彼に質問を投げてみました。

もろもろの事情の為、質問内容についてはキツめにマスキングしますがご勘弁ください。

 

「ちょっと技術的な質問なのですが、〇〇さんはとても××(言語の名前)に詳しそうなので聞かせて下さい。△△で記述するとこうなるのに、同じような処理を××で書くとこうなるのは何故でしょう?」

 

さり気なく相手を持ち上げながら質問する、というテクニックを弄してみました。

すると、暫時の後、このような回答が返ってきました。

 

「質問ありがとうございます。その処理は、××の処理系では〜〜という順序で処理されているのですが…(以下、かなり詳しい内容を記述してあるが略)」

 

いけるやん!!

 

案外、自分のことについての質問でなくても、聞かれたことにはちゃんと答えてくれるようです。

これはやはり、娯楽の皮をかぶってさえいれば、「教える」ということそれ自体に相応の気持ち良さがあるのだ、と解釈しても問題なさそうです。

 

社内redmineのチケットよりよっぽど反応が速いのはちょっとどうなんですか、と若干思わないでもないですが、まあそこはこの際目をつぶりましょう。

 

これ上手くいけば彼の回答モチベを上げるのに超有用やん!!

気分が盛り上がります。

 

もう一つ行ってみました。

 

「××でこういう処理を書きたいと思っているのですが、〜〜という形で書いてみても想定通りの結果が出ませんでした。この理由は何か、ご意見を伺ってもいいでしょうか?」

 

「なんか妙に詳しい質問ですね(笑) ××が〜〜だと思うのですが(それなりに詳しい説明)、仕事を思い出す質問は控え目にお願い出来ると…」

 

やや回避気味です。

何かを察知されたのかとも思ったのですが、その後も特にTwitterでの彼の動向は変わっていないので、自分の垢バレを疑っているわけではなさそうです。

 

質問が連射されするとまずい可能性はありますが、この「匿名質問の陰に隠れて技術的な質問をする」というのは、実は案外運用可能なのではないかという気もするので、今後も実現可能性を探っていきたいと考える次第なのです。

 

***

 

さて、この記事で皆さんにお伝えしたかったことを、最後に簡単にまとめてみます。

 

・「質問に答えるのが面倒」という思いは、質問者どころか周囲にも割とダイレクトで伝わる

・匿名質問サービスに丁寧に答えるのに面と向かって質問されるといきなり面倒になる、という人はそれなりの数いそうな気がする

・twitterアカウントを職場バレさせたくなかったら、職場で自慢した猫動画をtwitterにアップするべきではない

・質問箱で突如技術的な質問がくるようになったら上司の陰謀を疑うべきである

 

そんな感じです。

まあ、勿論評価につながらない後輩育成を、不明瞭な質問へのフォローもないままに延々押し付けられるというのは地獄案件ではありますが、そうでなければ空いている時間にでもなるべく丁寧に対応してあげて欲しいなあ、と感じる次第なのです。

 

今日書きたいことはそれくらいです。

(※このお話はフィクションです。実在の職場・部下・新入社員・質問箱とは一切関係ありません)

 

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【プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

ブログ:不倒城

(Photo:Anton Strogonoff)