とても難しい気持ちになる人生相談を読んだ。

66歳男性が風呂場で涙… 友人もいない老後を憂う相談者に鴻上尚史が指摘した、人間関係で絶対に言ってはいけない言葉 (1/6) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

【相談27】隠居後、孤独で、寂しくてたまりません(66歳 男性 有閑人)

(中略)いざ弟たちに連絡しても忙しいからと何度も断られました。

ちょっとおかしいと思い、妹に連絡したら「お兄さん、気づいてないの? みんなお兄さんが煙たくて、距離とっているんだよ」と。寝耳に水でした。

妹によれば、私が長男で母から優遇されすぎたし、弟たちの学歴や会社をバカにしてたのが態度に出すぎてた、というのです。

記事の要旨をいえばこういう事だ。

 

66歳になるまでガムシャラに仕事を頑張ってきて

「さて老後を楽しむか」

とウキウキしだしたところ、一緒に楽しむ予定だった家族からは

「お前と一緒にいると楽しくないからこっちくんな」

と煙たがられ、家で孤立。

 

それなら他の人と会おうかと思いきや、振り返ってみると仕事一筋だった事もあって1人も腹を割って話せるような友人といえるような人もいない。

結果、ぼっちとなりどこにも居場所がない。

「これから長い老後を1人で過ごさなくちゃならないのかと絶望した」という心温まるハートフルストーリーである。

 

相談者はあまりの孤独の苦しさから風呂に入ると1人で泣いているとの事で、ここからどうしたらいいか見当もつかず、途方に暮れて人生相談をしたという。

いやはや、他人事ではない。

 

回答者はこういうけれど・・・

この問題に対して、回答者である鴻上尚史さんはこう返している。

「今からすぐに家族との関係を改善するのは難しいから、対等な人間関係を学びにカルチャースクールなどにでかけましょう」

「そこで対等な人間関係を築く事ができるようになれば、家族もあなたが変わったと評価してくれて、対等な関係を結べるように歩み寄ってくれるはずだ」

 

これは実に実直で真摯で素晴らしい回答だと思う。

 

ただ、難点をいえば実行難易度があまりにも高すぎるし、成功確率もかなり低く、現実的ではない。

こんな絶望的な話で終わるのは後味が悪いので、今回は僕なりにこの相談者に現実的な回答を書いてみようかと思う。

 

顔出しのコミュは難易度が高いから、ネットでトライしよう

まずこの相談者は身近なリベラルな人間関係を築けないという点で、ある種のコミュ障といって差し支えない。

そんな人に、いきなり対面で良好な人間関係を作れというのはハードルがあまりにも高いだろう。

 

じゃあどうすればいいだろか?

そこで顔が見えないネットの登場だ。

 

ネットの最大の利点は、自分も相手も顔がみえないところだ。

文字ベースで会話できるから、相手の属性などを全く気にせずに話せるし、テンポもある程度は自由がきくから、ゆっくり考えてモノを話すことができる。

 

そしてインターネットには練習場所がたくさんある。

オンラインゲームでもいいし、Twitterでもいい。なんなら5ch(旧2ちゃんねる)でもいいだろう。

 

古今東西、人は繋がりを求めている。リアルだと失敗すると取り返しが効かないけど、ネットなら最悪アカウントを転生すれば何度でもやり直しは可能だ。

幸いにして、この相談者さんはインターネットには接続できているようだし、金銭的な意味でそこまで困っているわけではないだろう。

もう年金生活に突入しているのなら、引きこもりになったとしても何も困ることなどないのだから、積極的に引きこもって、ネットでコミュニケーションの修練をつめばいい。

 

家族だって、下手にコミュニケーションをとられるよりも、ネットに夢中になってくれた方が気が楽になる。

まさにWin-Winの関係だ。

 

どんなにマニアックな趣味であれ、愛好家を見つけ出せるのがネットのいいところだ。

あとはネットで何らかのコミュニティに入り、リベラルな人間関係の形成方法を学んでゆきつつ、ひとまず家族とはマイルドに区画を作って共存するのが現実的だろう。

 

日常生活の多くはネットでリベラルなコミュニケーションを楽しみつつ、少しづつだけど家族には謝罪を続け、禊(みそぎ)が果たされる日が来る事を願うしか無いだろう。

相談者が家族から許しを得る為には、かなりの長い時間が必要だろうが、まあそこは雪解けを待つしか無い。

 

家族に許される日がいつ来るかどうかは誰にもわからない。

けどまあ、熱心にやってればいつかは報われる日もくるだろう。そういう希望をもって、やっていくしかない。

 

現実的には取りうる手段はこんなところじゃないだろうか。

あまりカッコいい方法ではないのは事実だが、期待値がこれよりも高そうな方法は少なくとも僕にはあまり想像がつかない。

 

アイデンティティがなにも無い人はネトウヨになる

と、ここまで書いていて僕は物凄くマズい問題に気がついた。ネトウヨ問題である。

 

上で、コミュ障はインターネットでなんらかのコミュニティに所属しろと書いたけど、これができるのは自分に何らかの趣味だとかがある人だけである。

将棋ができない人が将棋コミュニティに入るのは難しいのを考えてもらえれば、わかりやすいだろうか。

 

では、何もアイデンティがない人は、最終的には一体どこのコミュニティに所属する事になるのだろうか?

実はそれがネトウヨなのである。

 

作家の橘玲さんによれば、ネトウヨとは右翼ではなく”日本人アイデンティティ主義者”なのだという。

冷笑系、DD論者… ネットで「現実主義者」が揶揄される理由|NEWSポストセブン

私の理解だと、ネトウヨは右翼ではなく“日本人アイデンティティ主義者”ということになります。

彼らは「自分が日本人であるということ以外に誇るもののないひとたち」で、「反日」「売国」を攻撃することでしか自分たちのアイデンティティ(社会的な自己)を確認できない。

在日米軍は反日でも売国でもないから、日本の上空を好き勝手に飛行していてもどうでもいいんでしょう。

彼らは「自分が日本人であるということ以外に誇るもののないひとたち」で、「反日」を攻撃することでしか自分たちのアイデンティティ(社会的な自己)を確認できない。

自分自身の属性が”日本人”しかない事にある日気がついた彼らは、自然とインターネット上で集まり、ヘイトスピーチを繰り返すだけの存在へと成り下がるというのだ。

 

アイデンティティが獲得できなかったのは運が悪かったから

僕は以前から、一体何でネトウヨなんて非生産的な事をする人がいるのかサッパリわからなかった。

人生は限られている。そんな事をする暇があったら、いくらでもやるべきことがあるんじゃないかと思っていた。

 

けど今回の問題とセットで考えて、恐ろしいまでに問題の本質が理解できた。

現代社会では「自分が何者であるか誇るものがある人間」になる為には、ある種の運と才能がいる。

 

例えば、あなたがいま何も誇るものがない66歳だったとして、今から自分のアイデンティティとなりうるものを形成するだけのガッツがあるだろうか?

 

若い頃だと、例えば学校でクラブ活動に励んだりとか、新卒で働いて職業的技能を身に着けたりだとかがスルッとできる人が幾ばくかはいる。

このように「自分が何者であるか誇るものがある人間」になれた人の成因要素を突き詰めると、はっきり言って運がたまたま良かった以上でも以下でもないだろう。

 

つまり、多くのアイデンティディを持ってる人達というのは、たまたま運がよかっただけの話なのだ。

逆に言えば、運が悪かった人はアイデンティディを一つも獲得する機会が与えられず、かといって最低限の衣食住はあったりするので、まるで動く屍かのごとくゾンビーな人生が続いてしまう。

そういう運が悪かった人が「日本人」という最後のアイデンティティを頼って「ネトウヨ」になるのだ。

 

「尊敬される家長」になりたかった66歳

先の66歳の人生相談の人に関して言えば、恐らく彼の思う自分のアイデンティティというのは「尊敬される家長」だったのだろう。

そしてそれが老後も続くと思っていたのが、ある時突然足元からそれが崩れ去り、絶望しているのが今なのだ。

 

もちろん、彼のやった事が悪かったというのは事実だ。

ただ66年間、誰からもそれが悪い事であるというのを指摘してもらえず、関係を健全な方向に持っていく機会が与えられなかったのは……運が悪かったとしかいいようがない。

 

彼だって、尊敬される家長になれる可能性はたぶんあったのだ。

そうなれなかったのは、たまたま運が悪かったからに他ならない。

 

自分が思う「尊敬される家長」というロールモデルへ人生のかなりの情熱を降り注いでしまった彼が、果たして今からアイデンティティ形成という腰の重い作業にもう一度とりかかれるかを考えると、僕は凄く気分が暗くなる。

 

アイデンティティがない人の居場所が必要とされているけど……

今回の相談者の方が「日本人」しかアイデンティティがないかどうかは僕にはわからない。

実は何か一つぐらい趣味があったりして、そこをキッカケにしていい感じにインターネットライフを楽しんでくれたらいいなとは思う。

 

だけど、もし仮に全くといっていいほど、どこのコミュニティにも所属する事ができず、最終的に「アベ政治を許さない」だとか「反日・嫌韓」のコミュニティにのみ所属し、日々過激な事をいう所にしか自分の居場所がなかったとしたら……

 

総合的に考えれば、ネトウヨになるのは1人で風呂で毎日泣く生活よりかは多少はマシな生活だとは思う。

少なくとも、寂しさはだいぶ和らぐだろう。

できたらもう少し健全な方向に最終的には行けたらいいなとは思うけど、それは本当の意味での”運”次第だろう。

 

そして忘れてはならないのは、今回の66歳のケースは日本全国で静かに起こってる一事例であるという事だ。

この人と同じような境遇にある人が、団塊の世代に潜在的に何人いるのかを考えると……

あと数年で、大量のネトウヨ民がこの世に爆誕するのかもしれないのである。

 

いやはや、トランプ旋風は実のところ他人事ではないのである。

ジャパニーズ・ラストベルトは一体何を引き起こすのか。

 

私達はこれから数年後、地獄の釜の蓋が開くのをみる事になるのかもしれない。

 

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(2019/8/8更新)

 

 

【プロフィール】

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高須賀

都内で勤務医としてまったり生活中。

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(Photo:Nicolas Alejandro