子どもにかこつけて、趣味に走った話を書きます。
早いもので、親になって12年ばかり経ちました。
干支が一周してしまった訳で、冷静に考えると結構な期間です。
しんざき家は5人家族でして、私、妻、長男小学六年生、長女次女は小学二年生の双子というパーティ編成です。
幸いにして、今のところ皆健康に、のびのび育ってくれていると思っておりまして、親子でゲームを遊んだり、一緒に本を読んで感想を言い合ったり、散らかったリビングを片付ける片付けないで熾烈なバトルをしたりしています。
端的に言って、親子生活超楽しいです。
長男は電車好き、謎解き好き、ボルダリング好き少年でして、私から見てもなかなか人生楽しんでいるなーと思っていたのですが、彼はテレビゲームも大好きです。
父親である私をゲーム仲間と見なしているところがありまして、私が遊んでいるゲームは大体自分も遊びたがりますし、「これちょっと難しいかな…」と私が思うゲームでも、思った以上の適応力を発揮して遊び倒します。
彼はスプラトゥーン2が好きですし、ゼルダの伝説BotWが好きですし、ぷよぷよテトリスが好きですし、一方逆転裁判やゴーストトリックも大好きです。
長男とゲーム話で盛り上がるのは、私にとって大きな楽しみでもあります。
関係ないですけどゴーストトリック超名作ですよね。記憶を消してもう一度最初から遊びなおしたいゲーム筆頭です。
それはそうと。
ここ最近長男が、自宅にあったとあるゲームに興味を持って、朝寝坊をする間も惜しんで早起きまでしてハマっています。
そのゲームの名前は、「信長の野望DS」。光栄の「信長の野望」シリーズの内、「烈風伝」をニンテンドーDSに移植したタイトルです。
戦略シミュレーションを遊ばない方でも、恐らく「信長の野望」というタイトル自体はご存じではないかと思います。
戦国時代の大名家の中から一つを選んで、ある時は田畑を耕して国を富ませ、ある時は大軍を率いて敵国に攻め入り、ある時は茶器をひたすら回して武将の忠誠度を稼ぎ、ある時は姉小路で始めてあっさり織田に踏み潰される。
まあ、同じ光栄の「三國志」と並んで、歴史シミュレーションの代名詞に近い傑作シリーズであるといっていいでしょう。
信長の野望シリーズはシリーズタイトルごとに大幅にゲーム内容が変わっておりまして、私自身は「武将風雲録」が一番好きなんですが、シリーズ全体で言うと「烈風伝」「天翔記」「革新」辺りの評価が特に高いんですよ。
DS版は、その「烈風伝」を元にしたタイトルで、「将星録」で生まれた「箱庭のような国造り」というシステムを完成させた名作な訳です。
で、長男は最近、「ねこねこ日本史」やら「漫画日本の歴史」やらで戦国時代への興味を深めておりまして、「戦国時代に一番強かった武将って誰なの?」などという宗教論争になりそうな質問を私に投げつけては、「うーん、強さの定義による」とかいうところから始まる私のややこしい説明を喜んで聞いてくれたりしていた訳なんですが。
そんな長男が、私の部屋のゲーム棚から「信長」の名前を発見しまして、「ねえ、これ遊んでみていい!?」というので、DSごと貸し与えたのが3週間程前。
マニュアルを紛失してしまっていたので、各コマンドの意味と最低限の遊び方だけ教えて、後は放っておきつつ様子をみてみたんです。
しんざき家における子どものゲームに対する方針は、基本「余計な口出しをしない」です。
どうしても詰まってヒントを求められた場合助け船を出すこともあるんですが、基本的には子どもの好きなように遊ばせますし、もしそれで途中挫折してしまってもそれはそれで仕方ないと思っています。
とにかく、ゲームとの出会いを親の作為的なものにしたくないんです。これは私のこだわりです。
信長の野望自体は結構難しいですし遊ぶコツも要るので、もしかすると途中で挫折しちゃうかも知れないなーと思っていたんですが、序盤を乗り切った長男は順調に信長にハマり、仕事で会議中の私にわざわざ電話をかけてきたと思ったら「武田滅ぼしたよ!!!」などと進捗報告をしてくるまでに至りました。良いことだと思います。
DS版烈風伝が比較的初心者向きだったことも幸いしたのか、織田家で始めた長男は、西日本を統一して征夷大将軍にまで上り詰めた本願寺顕如との熾烈な戦いをまさに制しつつあり、天下統一も目前というところまで来ているようです。
もしかするとこれを書いている今日あたり天下統一しているかも知れません。
で、長男のプレイをちょくちょく観察していて、幾つか面白いことに気が付いたのと、また彼自身「信長の野望」を通じて幾つか学んだことがあったようなので、以下、それについて書いてみたいと思います。
完全素人の長男が当初採用していたプレイスタイル
「あーなるほど、セオリーを知らないまっさらな状態からだとそういう遊び方になるのかー」とまず真っ先に感心したのが
「各国に武将をバランスよく配置する」
という遊び方です。
どういう話かというと。
信長の野望の武将には、それぞれステータスがあります。「采配」とか「政治」といったステータスがあって、武将ごとに数値が設定されているんですね。
「采配」や「戦闘」が高い武将は戦争向き、「政治」や「智謀」の高い武将は内政向きで、またそれぞれスキルがあったりして武将それぞれが個性づけされているんです。
で、戦略シミュレーションに慣れたプレイヤーは、「戦力の集中運用」ということを真っ先に行います。
基本的に戦争向きでない武将に兵を持たせておくのは無駄ですし、政治向きの武将を戦闘に連れていく意味もあまりありません。
なので、「戦争が得意な武将を集中的に前線において使い倒す」というプレイスタイルが、セオリーとして一般的な訳です。
特に大名は戦力として非常に有用なので、大名家によって程度の差はあるんですが、基本的に「ロマサガ2のアバロン皇帝かよ」ってくらいに戦闘に内政に縦横無尽の働きをすることになるんです。
ところが、長男にはその前提がありません。
彼は「大名はやられると負けちゃう」と理解した為に、織田家最強の武将と言ってよいチート性能の信長を一切戦闘に出さなかったりしましたし、「頑張った武将は出世させてあげないと」と考えて、勝家やら秀吉やら、戦争で活躍した武将を後方各国の城主にしたりしていたんです。
無論、純粋に戦略的なことを考えれば不効率なプレイなんですが、これはこれでロールプレイとして考えれば十分アリだなーと。
セオリーに凝り固まった自分からはなかなか思いつかないスタンスだったので、感心して見守っていた訳です。
そんな長男も、ある遭遇戦で信長が戦闘に巻き込まれて、鉄砲隊で応戦したら敵があっという間に半壊したところから、「パパ、信長強いよ!!!!超強い!!!!」と大興奮。
そこから「三段撃ち」のチート性能や、采配・戦闘のステータスの重要性に気が付いて、大名や戦闘向き武将を使い倒すことになる訳です。
戦略ゲーム初心者が、自分の力で「セオリー」を見出した瞬間です。
私自身経験があるんですが、「自分で考えて、自分で見出した攻略法」って、物凄く特別なものなんですよ。
色々考えて、色々試して、で「これがいい!」っていうやり方にたどり着く。
これ、そのゲームに対するとても大きな思い入れにもなりますし、試行錯誤の成功体験にもなると思います。
子どもに成功体験を用意してあげるの、大事だと思います。
この後、「戦争向きの人材の集中運用」だとか、「敵国を攻める時にはまず他の国との同盟とか、根回しが重要」といったことも自分で気付いて彼なりのセオリーに消化していたので、それもまた良い遊び方だと思う次第です。
投資の仕組みとリスク・リターンに気づいた長男
それはそうと、信長の野望には「米相場」というシステムがあります。
商人と取引をすることで、重要な兵糧である米を買ったり、逆に売却して金銭に変えたりすることが出来る訳です。
ある時長男が気付きました。
「あのさ、これ、米の値段ってその月ごとに変わるよね」
「変わるよ。現実でもキャベツが高くなったり安くなったりするだろ?」
「どうして?」
「需要と供給っていうんだけど、品物が少なくって欲しい人が多いと、みんながどんどん買ってくれるけど在庫が足りないから値段が高くなる。逆だと安くなる。お米だと、豊作になってたくさん取れたら値段が安くなったりする」
「これ、値段が安い時に買って、高い時に売ったら、それだけでお金儲かるよね」
「儲かるね」
「ああ、けど、安いと思って買ったらもっと安くなっちゃって損するとかもあるのか…」
「超ある」
この話の後、長男各月の米相場をメモし始めまして、「平均これくらいだから今なら買っていい!」とかいったその翌月に豊作になったりしてました。よくあることです。
以前も書きましたが、私「モチベーションは成功体験が、テクニックは失敗体験が育てる」と思っているので、失敗した経験から何かを見出す、というのも成功体験と同じくらい大事だと思います。
そういうことが簡単に経験出来るのもゲームのいいところだなーと。
で、現実の株の説明もあれこれしてみたんですが。
こういう風に、「ゲームの中から現実に紐づく知識を見つけてくる」というのはよくできたゲームの一つの醍醐味だと思っていまして、その点はとてもいい経験をさせてあげられたなーと思ったわけです。
ということで、長男にかこつけて信長の話をしてきました。
これを書いている丁度たった今、長男から電話があって開口一番「天下統一したよ!!!!!」ということだったので、無事本願寺との対決には打ち勝ったようです。めでたいことだと思います。
次は姉小路で全国制覇に挑戦だ!
まあ、ゲームを通じて貴重な知見を得られることもある、という話でして、皆さんも良かったら信長の野望DSやってみてください。超面白いです。
今日書きたいことはそれくらいです。
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【著者プロフィール】
著者名:しんざき
SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。
レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。
ブログ:不倒城
(Photo:haru__q)