かつて、コンサルタントだったとき。
不況は採用のチャンスだ、と私は教わりました。
余裕が少しでもあれば、不況時にこそ、積極的に採用しておくべきだ、と。
「なぜですか?」と聞くと、コンサルタントの先輩は言いました。
「不況になると、余剰人員を抱えていた、古い会社が人員整理をやりだす。」
「はい。」
「すると「良い人」から会社を辞めるから、景気の良いときには市場に出てこなかったような人を、採用することができる。しかもコストをかけずに。」
当時はなんとなく「なるほどー。」と思いました。
たしかに、先輩の言っていたことは正しいと思います。
会社経営というのは「人と同じこと」をやっていたのではうまく行かない。
「不況だ、不況だ」と騒ぐ人が多いほど、自分たちは逆のことを周到に、淡々とやるほうが効果が高いのです。
プロモーションする。
長期的な制度づくりをやる。
そして、人材を取りに行く。
そうなると、景気が上向いたころには、すでに圧倒的に差がついているわけです。
「そんなことは、言われれるまでもなくわかってるよ」
という方も多いかもしれませんが、実際にそれをできる会社はそんなに多くはない。
なぜならそれは「リスクを取りに行く」という行為だからです。
少し前に「リスクをとっている人だけが、見える世界がある。」
という記事を書きましたが、このあたりを踏み越えられるかどうかが、「優れた会社かどうか」の判断材料となると思います。
とはいえ、もちろん「卓越した人材」を採用するのは、好不況関係なく、難しい仕事です。
というのも、採用活動は
「やれば成果がかならず出る仕事」=「ルーティンワーク」ではない、「試行錯誤」が求められる仕事だからです。
したがって「成果を出せる採用責任者」は極めて貴重です。
実際、最近ではマーケティングと同様に、
「経営者」もしくは「事業部門で売上を作ったエース」が、採用を行う会社が増えています。
誤解を恐れず言えば、これから採用領域で活躍できる人材は「人当たりのよい人事」ではありません。
「数字を見て試行錯誤する、データ分析の専門家」です。
中途採用のプロセスとデータ、アウトソースの状況を公開している企業
その情報を開示している会社が、法人向けのデジタルメディア・Webサービス・公式アプリの立ち上げで知られる
「株式会社ゆめみ」(https://www.yumemi.co.jp/)です。
日本マクドナルド、ソニー損保、高島屋やビックカメラなどのサービスを手掛ける彼らは、高技能のエンジニア採用を積極的に行っています。
ゆめみの事例が役に立つ理由は、経営者が自ら「採用プロセスとデータ」web上で開示しているところにあります。
さて、記事の内容については、ゆめみの中途採用の採用プロセスについて、包み隠さず公開しておりますので、一つの参考情報として活用頂ければと思います!
例えば、応募の経路について。
多くの会社が媒体経由、エージェント経由で採用する中、ゆめみは、Twitterの活用や、勉強会の実施など、細かい施策の積み上げを実施しています。
これは結果として、自己応募の比率が増え、採用単価の削減につながっています。
さらに「採用プロセスの有効性」を指標により検証しています。
例えば以下のように通過率が設定され、実績値が乖離すると「プロセスになにか問題がある」と判断されます。
・書類選考……30%、
・コーディングチェック……50%
・一次面接……50%
・最終面接……25%
・内定承諾……90%
代表の片岡俊行さんに実際に話を伺うと、
・2020年は75名(中途50名、新卒25名)を採用する予定
と、今後も積極的な採用姿勢を打ち出しています。
「採用代行サービス」を効果的に利用する
また、ゆめみの採用活動において、特徴的なことの一つが「採用代行」の効果的な利用です。
上の記事では、「採用代行」をどのプロセスで利用しているかが詳細に書かれています。
・候補者、エージェントとのメールのやりとり
・候補者と社内採用担当者との日程調整
・Greenなどの媒体におけるスカウト対象者の抽出、スカウトメール送信
・求人票の作成・更新などの管理
・全体的な採用進捗についての管理・レポーティング
片岡代表は、採用代行を利用する理由を、
・間接部門の人員比率は全体の2〜3%程度に抑えたい。
・社員の時間を「実験」や「業務設計」に使いたい。
としており、特に、採用活動のオペレーションについては
「外部のほうがノウハウがあり、コストもスピードも社員より優れている。」
と述べています。
厚生労働省が「採用代行の普及が進んでいるとの指摘がある」と、平成18年の調査結果を公表していましたが、
近年は、非常に専門性の高い領域である「採用活動」についても企業は外部を活用しているようです。
実際、「ゆめみ」を始め、「note」「HRbrain」「UZABASE」をクライアントにもつ採用代行サービス
「キャスタービズ・リクルーティング」を主宰する株式会社キャスターの取締役COO、石倉秀明さんは、
「多くの会社は、採用活動で「10」やらなければならないところを、「2」くらいしかやりきれていない」
といいます。
一体、なぜそんな事になっているのでしょうか。
石倉さんは、
「多くの採用担当は、リソースが不足している上、多くても数社での経験しか積めないので、実績もデータも足りない。データに基づけないので、かなりのムダな活動もある。」
といいます。
データを見ると「スカウトメールのカスタマイズ」は費用対効果が低い。
例えば、多くの会社では応募者の発掘のために「スカウトメール」を活用しています。
そしてこのスカウトメールは、「候補者一人ひとりに合わせて、かなりカスタマイズが必要」という話が流布しています。
さらに、媒体側も「カスタマイズ」を推奨しています。
そこで、担当者が多くの時間をかけて「スカウトメール」のカスタマイズしている会社が多いでしょう。
しかし「データを見ると文面のカスタマイズの有無は、候補者の返信率にそれほど大きな影響はない」と石倉さんは言います。
逆に、返信率に影響が大きいのは、以下です。
返信の速さは重要
返信まで24時間以上かかると、選考過程の歩留まりにマイナスの影響
「ログインが3日以内かどうか」「プロフィール更新が1週間以内かどうか」は重要
プロフィールの内容よりも、現在、転職活動しているか、
誰からスカウトが来たかは重要
例えばCTOから送信されたスカウトは、採用担当者からのそれより
テンプレート文面の構成は重要
「受け取った人が喜ぶ(あなたは素晴らしい人材です)」はダメ。
「受け取った人が行動する(次のステップに進むにはこうしてください)」としたほうが返信率が高い。
ほかにも「データ」によって判明した有効な施策は、数限りなくあります。
前日のリマインドメールは不要
面接への出席率はリマインドメールを送っても変わらないので、辞めていい。
内定承諾率は8割以上
8割を切っていたら、採用のプロセスのどこかに問題がある。
自社媒体からの応募は内定率5倍
内定率が5倍なので、自社媒体からの応募を出来得る限り増やす施策を打つ。
このように、すでに「数値」を根拠 にして 論理的・効率的に採用活動をすすめる会社が積極的に採用をしています。
不況は採用のチャンスです。
しかし「勘」ではなく「データ」に基づく採用活動が着々と進んでおり、良い人材を獲得する競争は変わらず激しいのかもしれません。
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>>「キャスタービズ・リクルーティング」に、「データ」に基づく効率的な採用活動の実現について無料で話を聞いてみる
【著者プロフィール】
◯Twitterアカウント▶安達裕哉
元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者( tinect.jp)/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。
◯有料noteでメディア運営・ライティングノウハウ発信中( note.mu/yuyadachi)
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Photo by Razvan Chisu on Unsplash