新型コロナウイルスにより様々な経済活動に障害が出ている。

こういう社会の仕組みそのものが根底から変わると、いわゆる市場に歪みというものが生じる。

 

歪みはその道に通じていないと見抜くのは難しいが、見抜けるとかなりお得に買い物ができる。

今日はその歪みの一つを紹介しよう。

端的にいうと、鮮魚コーナーに行けという話である。

 

アフターコロナの世はありえないクオリティの魚が普通のスーパーに並ぶ世界だった

最近、僕は一部のスーパーに並んでいる魚が妙にハイクオリティな事に気がついた。

どうも飲食店の営業自粛の影響で、普段だったらスーパーなんかには絶対に流れてこないハイエンドクラスの魚が末端にまで回ってきているようなのだ。

 

日々の激務が終わったあと帰り道で鮮魚コーナーを眺めるのが最近の楽しみなのだが、どんなものが出ているか一例をあげよう。

下の画像は最高級品と言われる千葉県竹岡産の太刀魚で、そのサイズは成人男性の腕ぐらいの太さである。

千葉県竹岡産の太刀魚。惚けるほどに美味しかった

 

お値段も衝撃的で、これ一切れでなんと1200円である。

正直安くはないのだが、その味は格別で、魚嫌いの妻もシンプルに塩焼きにされたそれを一口食べて「なにこれ!?めっちゃフワフワでとろける~」と唸るほどである。

 

魚の味を大きく左右する要因が2つある。

サイズと産地だ。

太刀魚だと、細いモノは淡白でそこまで美味しい食材ではないのだが、サイズがモリモリでかくなると身に脂がのってきてメッチャクチャに美味しくなる。

 

そして重要な産地だが、実は千葉県竹岡は太刀魚が最も美味しくなる漁場だ。

わかりやすい例でいえば松坂牛とか大間のマグロみたいなもので、竹岡でとれた太刀魚は他と比較して別次元に旨くなる。

 

最良のサイズと最良の産地が組み合わさったこの太刀魚は・・・平時だったら一般人はお金を積んでも買えないヤツである。

たぶんこの太刀魚も、本当だったらどこかの数万円はする高級料亭か鮨屋にいってたはずのもので、こんなものが庶民の食卓にまで流れてくるのだから、コロナショックはまことに恐ろしく・・・そして美味しい。

(๑・﹃ ・`๑)ジュルリ

 

ここ数日で見かけた他の食材だと、肝がパンパンに詰まった最上級のホタルイカや鮨屋クオリティの本ミル貝、飴色をした青柳の小柱、そして異常な身質のマナガツオなどがある。

どの食材として、一般のスーパーなんかでは絶対にみかけられない品ばかりであり、かつ値段もコロナショック前で考えたら異常な安価と本当に申し訳ない気持ちになる。

 

なお、魚について色々勉強したい人は日本一の魚屋「根津松本」に選ばれたこの世でいちばん旨い魚という本がオススメである。

 

僕はこの本を読んで、実際に根津松本にて魚をいくつか買った事があるのだが、その中でも特にビビるぐらい旨くて衝撃をうけたのが竹岡産の太刀魚であった。

それと似たような品に、まさか近所の鮮魚コーナーで再会できる日がくるだなんて・・・コロナショック恐るべしである。

 

不安に対処する為には日常をちゃんとやるのが大切だ

Twitterを眺めていると、コロナショック以降どう考えても心を病んでしまったとしか思えない人をいくつかみかけるようになった。

こういう時に私達はどうすればよいのだろうか。

 

僕はちゃんと日々にしっかりと全力で取り組むのが肝心なんじゃないかと思う。

生活をサボるな。とインド人に叱られて二年経ってから分かったこと|はし かよこ|note

 

上の記事の筆者は仕事以外の日常の雑務を丸投げしまくってたところ、 インド人にそれを見抜かれこう怒られたという。

「君は仕事はしているかもしれない。でも、『生活』をしてないね。」

「ちゃんと自分で作った、できたてのご飯を食べなさい。」

「ご飯を作る、服を洗う、住まいを綺麗に保つ。すべて君が君の責任においてやることだよ。一つ一つマインドフルであること。それが大事なことなんだ。」

後に仕事でメンタルをやられた際にこの言葉を思いだし、実際に「生活」をシッカリとやってみてその大切さを痛感したのだという。

 

実際、目の前の事にキチンと集中するとビックリするぐらい心穏やかに時間が流れる。

 

 

僕がこの事に気がついたのは、大学時代にクラスメートに告白して壮大にフラれたときだ。

フラれた事ももちろんショックだったのだが、色恋沙汰の噂話が閉鎖空間で拡散し、いろいろな人に「フラれた人」と認知されていたのが何よりも1番キツかった。

 

こういう状態で何もしないでいるのは本当に心に悪い。

ずっと不安に苛まれ続け、どんどん落ち込みが深くなっていく。

 

正直・・・あの時はそれまでの人生の中では1番シンドかった。

いま振り返ればバカバカしい笑い話として酒の席でのネタにでもできるような話ではあるのだが、当の本人にとっては地獄そのものだった。

 

僕の心は漆黒の底に沈んでいたが、僕の事情と関係なく日常は進む。

だから「なんとか生活は続けないと」と大学の授業に部活と、それまでと変わりない生活を無理くり継続していたのだが、唯一何も考えずに心穏やかになれる瞬間がこの中で一つだけあった。

部活である。

 

当時、僕は武道系の部活に所属していたのだが、不思議な事に基本となる動作の型をやったり全力で試合をしていた時だけ「フラれた自分」の存在を全く心に抱える事なくいられた。

 

これは本当に衝撃的であった。

普通、心の傷は何をやっても急激には癒やすことはできない。

時間だけがそれをゆっくりと緩和してくれる。

 

だが、全力で心を無にして動いている時だけは、一時的ではあるものの、心の傷は僕の事をまったく襲わないのである。

 

部活の試合で全力で相手と戦い終わったあと、何にも心を囚われていないフラットな心の状態から、フラれた自分へとスッと心が戻るのを自覚するのは本当に不思議な現象であった。

まるで洗脳から解き放たれたかのごとく、全然違う自分がそこにはおり、僕は心が何かに囚われたとしても、こうすれば比較的ラクに切り抜けられるのだという一つの技術を手に入れた。

 

「なるほどなぁ。こういう心の癒やし方もあるのか」と随分と勉強になったものである。

フラれた傷自体は癒えるまで一年程度の時間がかかったが、その1年をラクに駆け抜ける為の補佐として、武道が非常に役立ったのだ。

 

一日に一度、心をフラットにし、歪みから自分を開放してあげる。

サピエンス全史で一躍有名となったユヴァル・ノア・ハラリの新刊、21 Lessons 21世紀の人類のための21の思考を読んでいたとき、突然瞑想の話が出てきて随分と驚いた。

 

彼は毎日2時間もの瞑想を行うのに加えて、毎年1~2ヶ月の長い瞑想修行に行くほどに瞑想に熱心だという。

 

これを読んだ時、「確かにハラリほどに頭がよく、かつ脳の中の情報量も多いと、あまりにも色々考えすぎて心を瞑想で強制的にリセットさせないとフラットな状態になれず、歪んでいってしまうのかもな」と先に書いた自分の失恋時のエピソードを思い出しつつ、いろいろと納得した。

 

一部のビジネスパーソンの間でもマインドフルネスが随分と流行っているようだが、夢中に何かにとりくんで心を無の状態に持っていき、雑念から開放される時間を持つことは日常をより良く生きるにあたっては物凄く大切な事である。

 

一日に一度、心をフラットにし、歪みから自分を開放してあげる。

これが新コロのような不安に溢れた世の中を生き抜くにあたっては、本当の本当に肝心なのである。

 

不安に支配され、自我を奪われてしまうのは本当に愚かである。

Twitter上でもコロナに狂わされた人が散見されるが、そういう人こそ、まずは地に足をつけて「生活」をキチンとやり始める事からスタートすべきだろう。

 

生活はちゃんとやるとビックリするほどに無我の境地にいける。

実際、禅の世界では料理も重要な修行とされており、それを行うものは典座という役職を与えられているほどだ。

その叡智を私達もシッカリと活用すべきである。

 

スーパーで美味しそうな魚を買ってみて、ネットでレシピを調べて、料理をし、舌鼓を打つ。

こういう時だからこそ「生活」をいつもよりも全力で楽しむ。こんな風に、真面目に「生活」をやってれば、しょうもないニュースに動かされるヒマなど本当に無くなる。

 

市場の歪みを楽しみつつ、しっかりと「生活」をやる

どんなになげいたところで、フラれた男の恋愛は成就しないし、コロナ前の世界は帰ってこない。

残念ながら現実は私達の思いのままには動かない。

 

私達にできる事はアフターコロナの世界を「そういうもの」として受け入れ、市場の歪みを楽しみつつ、しっかりと「生活」をやるだけである。

 

大丈夫、世界が変わってしまったとしても、ちゃんと人間は適応する生き物だ。

時間だけがそれをなしとげてくれる。

日々を清く正しく淡々と過ごすことこそが、私達にできる1番の事である。

 

料理をしない人も、たまには出汁からキチンと味噌汁でも作ってみてはいかがだろうか?

一日の終わりにかつお節の香りで「ホッ」とするのって、ものすごく気持ちいいですよ。

 

 

 

 

 

【プロフィール】

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高須賀

都内で勤務医としてまったり生活中。

趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。

twitter:takasuka_toki ブログ→ 珈琲をゴクゴク呑むように

noteで食事に関するコラム執筆と人生相談もやってます→ https://note.mu/takasuka_toki

Photo:Sebastien Wiertz