あいかわらずニュースはコロナの話題一色。

まぁ当然だよね、いまは非常時だから。

 

でもみんなで一丸になれば、「絆」のちからできっと乗り越えられる。

俺たちはいつもそうしてきただろ?

……というジャンプの主人公みたいなセリフを目にするけれど、本当にそうかなぁ。

 

具体策のなさや自己犠牲の強制を「絆」でうやむやにしているような気がして、「絆」という言葉に不信感をもってるのはわたしだけ?

 

「絆があれば乗り越えられる理論」って実際どうなのよ

4月7日の総理大臣記者会見のなかでも、みんな大好き「絆」が出てきた。

9年前、私たちはあの東日本大震災を経験しました。たくさんの人たちがかけがえのない命を失い、傷つき、愛する人を失いました。

つらく、困難な日々の中で、私たちに希望をもたらしたもの、それは人と人の絆、日本中から寄せられた助け合いの心でありました。

今、また私たちは大きな困難に直面しています。

しかし、私たちはみんなで共に力を合わせれば、再び希望を持って前に進んでいくことができる。

出典:https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2020/0407kaiken.html

 

強く念を押しておくけれど、わたしは政治的主張をする気はまったくない。

安倍首相に対してどうこう言うつもりはないから、そこに絡まないでくれよ!

わたしが言いたいのは、「絆があれば乗り越えられる理論ってどうなのよ」というところだけだから。

 

こういう言い方は悪いのかもしれないけれど、わたしはあの震災で、なにも失ってない。

計画停電で何回か停電したし、旅行は中止になったけど、それだけ。

東北のためになにかしたとも、できたとも思ってない。ちょっと募金はしたけれど。

 

東北出身で就職先を失った友人、両親が福島の公務員で大変な思いをした友人、そんな人たちの前で「がんばろう東北」なんて、「みんな応援してるからね」なんて、そんなこと。

どんな顔をして言えばいいんだ。

そう思ってた。

 

その気持ちは、いまも変わっていない。

外出は制限されているけれど、暖かいご飯が食べられて、仕事への影響も少なくて、夫と仲良く家にいる。

そんなわたしが、仕事を失って腹をすかせた子どもを抱える人、感染リスクが高いなか治療に当たる人、外出できないぶん増えたであろうamazonの品物を届ける人、そんな人たちと「一丸」になれるんだろうか。

なってもいいんだろうか。

 

感謝や賞賛、声援で飯は食えない

環境のちがいによる温度差を感じたのが、『ホタルノヒカリ』を描いた漫画家ひうらさとる氏が提案した#GratefulForTheHeros絵というタグをめぐる、さまざまな意見を見たときだ。

ひうら氏はこのツイートの8日後に謝罪、募集をやめることを発表した。

というのも、エッセンシャルワーカーをおしゃれな格好でにこにこ職務を全うしている「ヒーロー」として担ぎ上げることに、違和感を抱いた人がいたからだ。

 

それって千羽鶴を被災地に送って「みんな応援してるからがんばってね!」っていう自己満足と同じじゃない?

感謝はすべきだけど英雄にする必要ある?

励まされる人もいるだろうけれど、それで状況はよくならないよね?という……。

 

「同情するなら金をくれ」って、本当に名言だよなぁ。

ハッシュタグの意図は理解できるけど、賞賛で飯は食えないからなぁ。

 

「絆」を拠り所にしなきゃいけないのは具体策がないとき

首相のスピーチにあったように、たしかにわたしたちはいま、困難に直面している。

でもそれは、「高級フレンチに行けない」「ヒマ」という平和なものから、「もう所持金が尽きる」「家賃が払えない」という切羽詰ったものまで、さまざまな段階がある。

それを全部ひっくるめて「困難」とし、「みんな大変だからいっしょにがんばろうね」といっしょくたにまとめるのは、個々の不安や問題から目を逸らすのに便利な美辞麗句にすぎない。

 

もちろん、経済的補償や教育的支援など、「絆」を実利として約束してくれれば大歓迎だけど。

でもそれができるなら、そもそも「絆」なんてあいまいな言葉使う必要はなくなる。

「わたしたちはこういう対処をするので安心してください」って言えば、それで済むんだから。

 

……なんて書いてる途中で、「小泉進次郎環境省が『ごみ収集作業員のためにごみ袋に絵を描こう』と提案」というニュースが飛び込んできた。

こんなニュースを見ると、「絆」にすがるのはやっぱり具体策がないときなんだなーと強く思ってしまう。

提示できるものがないから、説得する根拠がないから、「一致団結」でお茶を濁すしかないんだろうなーと。

 

しかも「絆」を掲げるのって、経済的余裕がたっぷりあって、家でのんびりテレビを見ながら暖かい飯を食える人と相場が決まってる。

だからこそ、のんきに精神論を唱えられるのだ。

その感謝を、金や待遇改善のようなかたちにしてこその「絆」だろうに。

 

「みんなで」を掲げると不満が生まれる

「わたしたちはこうやってあなたを助けます。大丈夫、みんなでがんばりましょう」

ではなく、

「感謝するからみんなのためにがんばってね!」

というのは、「絆」の悪用だ。

 

前者なら「余裕ある人がそうじゃない人を手助けする」という美談だが、後者は「抜けがけや裏切りを許さない」という同調圧力による自己犠牲の強制でしかない。

 

「絆」のために一生懸命働いてくれるよね?

「みんな」のために我慢してくれるよね?

「一致団結」してるのに自分のことだけ考えるなんてひどいことしないよね?

 

こんなふうに。

 

いま、世の中が「感謝はするからがんばってくれよ」という、絆の悪用に傾いているような気がしてならない。

 

「みんなのために我慢してがんばるべき」という圧力が強まれば、

抜けがけして得しているやつはいないか?

自分だけ楽をしようとしてるやつはいないか?

みんなに迷惑をかけるようなやつはいないか?

あいつは危険だからちょっとシメといたほうがいいんじゃないか?

 

という相互監視社会になるだけなのに。

「みんなでがんばる」を拠り所にすればするほど、「なんで自分だけ」「なんであいつだけ」という不満がうまれるんだよなぁ。

 

「絆」はあくまで具体的な行動をしたあとに使うもの

いやね、感謝を言葉にするとか、だれかの役に立ちたいとか、そういうのはわかるんだよ。

うちの母親は食品関係だし、小さい子どもがいる義兄はICUの重症コロナ患者を受け持ってる看護師だしね。

 

でも、だからといって「みんな感謝してるからがんばって!」とキラキラした目で自己犠牲を強いるのはちがうと思う。

この状況を改善するのは、しっかりと機能する医療体制やオンライン授業の迅速な普及、金銭的支援、感染予防策の周知、テレワークの環境設備などであって、食えもしなければカネにもならない「絆」ではない。

 

もちろん、人々が協力することで成し遂げられることは多いし、一丸となって乗り越えられることもある。

でも「絆」っていうのは、あくまで具体的な行動をしたうえで「みんなでがんばりましょう」というときに使う言葉であって、「絆があるからきっと大丈夫!」と使うべきではないと思うんだ。

 

「絆」で全部片付けられればそりゃ楽だけど、足並みなんてそろいっこない非常時で、それはただ温度差を生んで不満につながるだけだから。

「だれかのためになにかをしたい」と思うなら、不要不急の外出を控えて、旅行はキャンセルして、親にはたまに電話して、手洗いうがいを徹底して、ゴミをきちんと分別して、ムダにamazonポチらないで、トイレットペーパー買い占めないで、朝から酒を飲まないで、気晴らしに家でラジオ体操でもしてればいい。

 

そういう理性的な行動がきっと、だれかのためになる。

ゴミ袋に絵を描くより、ずっと。

 

政権批判をするつもりもなければ、ひうら氏アンチなわけでもない。

人とのつながりを軽んじる気もまったくない。

でも、「絆」を盾に実際起きているさまざまな問題をうやむやにしたり、自己犠牲を過剰に美化したりは、やっぱりちょっとちがうと思うのだ。

 

だから「じゃあ具体的になにするんだ?」と問いかけていきたいし、「自分はどんな行動ができるのか?」と現実的に考えていきたい。

 

とまぁ、わたしはこんな感じで考えてます。

 

 

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【著者プロフィール】

名前:雨宮紫苑

91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&写真撮影もやってます。

ハロプロとアニメが好きだけど、オタクっぽい呟きをするとフォロワーが減るのが最近の悩みです。

著書:『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)

ブログ:『雨宮の迷走ニュース』

Twitter:amamiya9901

Photo by Filip Filkovic Philatz on Unsplash