以前、コンサルティング会社に勤めていたとき、何が一番良かったのかといえば、数多くの企業を見ることができた点だ。

様々な会社を横並びで見れば、何が良くて何が悪いのか、理解しやすい。

ベンチャー、中小企業、大企業……すべてが比較対象だった。

 

中でも面白かったのは、ベンチャー・中小企業のコンサルティングだった。

その理由としては主に以下の3点だ。

・経営者と直接話ができる

・意思決定が速い

・施策の結果が見えやすい

 

特に、「経営者と直接話ができること」はまさにこの仕事の醍醐味で、様々な知見を得ることができた。

 

真の金持ちとは、中小企業のオーナー

その知見の一つが、「お金」に関するものだ。

 

変な話だが、例えば世間知らずだった私が、最初に衝撃を受けたのが、オーナー経営者の報酬だ。

オーナー経営者は、ほとんどの上場企業の経営者よりも、はるかに良い報酬を得ていることに、私は驚いた。

 

例えば、以下の記事を見ると、上場企業の役員で、2億円以上を得ている人は201人いる。

「年収1億円超」の上場企業役員ランキング500 1位は24億円超、2億円以上の報酬は201人(東洋経済オンライン)

1億円以上の役員報酬を得ている上場企業の役員は、その事実を有価証券報告書への記載で開示する義務がある。今回の集計対象は、2019年5月~2020年4月に本決算を迎え、1億円を超える役員報酬を得た役員を有価証券報告書で開示した上場企業だ

これだけを見ると、億単位の報酬を得るのは、外国人のプロ経営者か、上場企業で出世した本当に限られた人だけなのだ、と思いがちだ。

私もそう思っていた。

 

ところが、中小企業の経営者においては、「億超え」は全く珍しくなかった。

特に、長く会社を継続し、コンサルティング会社を雇えるような中小企業のオーナーは超裕福で、莫大な資産を蓄積している。

 

しかも、社員はそのことを全く知らない。

わたしだって、こんな仕事をしていなかったら、知らなかっただろう。

 

中小企業の社員の年収は400万、500万くらいが多いが、年商で10億、20億程度の、全く平凡な会社の社長でも、年収にして1億以上を普通に手にしていた。

 

「社長は結構もらってる」と感づいている社員もいたが、せいぜいその想像する金額は3000万くらいで、実際の金額とはかなりの開きがある。

だから、オーナー企業の経営者は、売り上げや利益は開示するが、役員報酬がわかる決算書を社員には見せない。

 

このように、雇われ経営者たちと比べて、中小企業のオーナーたちの得ている報酬は文字通り桁違いだ。

しかも、雇われ経営者たちは「経費」を自由に使えない。株主に監視されているからだ。

 

だが、オーナー経営者は経費を自由に使える。

中には、わざと役員報酬を上場企業の役員並に抑えて、経費をワンサカ使っている経営者もいた。

 

その是非はともかく

「サラリーマンの頂点である上場企業の役員」よりも

「オーナー企業の経営者」

の方が圧倒的に金持ちであるという事実に、新卒の私は「サラリーマンをどんなに極めても、さして裕福になれない」と、愕然としたのを覚えている。

 

平凡なビジネスでも、経営者は儲かる

そしてまた驚いたのは「平凡なビジネスでも、経営者は十分儲かる」という事実だ。

 

平凡なビジネス、というのが具体的に何を示すかといえば、様々な意見があるだろうが、

「スケールしない」

「どこにでもある」

「有名ではない」

「差別化できていない」

などと思っていただければ良いと思う。

読者諸兄のイメージ通りだ。

 

GoogleやAppleのような、唯一無二の企業が儲かるのはよく分かる。

しかし、「経営者が儲けたい」だけであれば、唯一無二である必要も、大企業である必要もまったくない。

 

保険の代理店、フランチャイズ経営、アフィリエイト、あるいは自社製品を持たない、受託ビジネスや下請けビジネスはもちろん、時には「地の利」や「時流」に乗っているだけの企業や、「営業力」のごり押しでも、儲かるときには儲かっていた。

 

実際、商売は「好き」とか「世の中を変えてやる」とかを一切気にせず、その時々に儲かることをやるのが、一番儲かる。

中小企業の経営者はそのあたりをよくわかっていて、

「金儲けは、やったもん勝ち」

というのはそういうことである。

 

ただしそういうビジネスは、継続性や利益率、様々な諸問題から、人を安く雇って、しかも、できるだけ昇給を低く抑えることが重要になる。

総合商社のように「平均給与1500万」、あるいはGoogleのように、「平均給与3000万」というわけにはいかない。

 

したがって、これで富むのは、ほぼオーナー社長のみ。

社員やアルバイトの生活は、特に豊かというわけではなく、これが中小企業の悲しいところである。

 

もちろん「社員の給与をできるだけ上げたい」と考える経営者もいないわけではない。

中には立派な方もいる。

 

だがむしろ「平凡な会社」においては、小賢しい社員は必要ではない、と考えている経営者のほうが、実は多い。

そういう経営者は、「いわれたことをやる人が欲しい」「マニュアルを反復できる兵隊がいればよい」と思っており、会社の離職率は高めだ。

 

さぞかしダメな会社だろう、と思う人も多いだろうが、別にダメな会社ではない。

給料は安いが安定して出るし、日本人はまじめな人が多いので、会社は普通に回る。

そして、社長がメルセデスのSクラスを乗り回して、数億の家を買えるくらいには儲かる。

 

社長は個人補償のリスクをとっているから……と考える人もいるかもしれないが、いったん儲かる仕組みを作ってしまえば、実は、大したリスクはない。

儲からないときは社員のボーナスをカットしたり、アルバイトをクビにする。

実際にそうしている会社は山ほどあるし、リスクを転嫁するのは、そう難しいことではない。

 

伸びない会社、伸びない給与。でも経営者は気にしない。

とはいえ、もちろん、上のような会社はあまり伸びない。

人にも事業にも大きく投資しないからだ。

彼らはとにかく「手堅い」が、時には、何十年も売り上げ規模が大して変わらない、いわゆる「万年中小企業」も多い。

 

しかし、経営者は多くの場合、現状にそれほど不満を持っていない。

むしろ、経費や報酬にうるさいことを言われたくないので、「成長しよう」と言いつつ、現状維持を望んでいることも多い。

 

なにせ、現状ですでに「億単位の報酬」と「儲かる仕組みの所有権」を得ているのだから、さらに上場、なんて苦しい道を目指し、業績を上げ続けなければならない十字架を背負おうなんて、彼らにとっては不合理なのだ。

 

だから、彼らは銀行から金を借りることはあっても、外部から出資を受けることもない。

そうすれば、金の卵を生む鶏を、自分ですべてをコントロールできる。

 

安定して稼げる状態から、さらにリスクをとって「自ら崩す」のは大変なことだ。

 

イメージがつきにくい場合、大企業に勤めている年収1000万の人物を想像すればよい。

彼らが、あえてリスクをとって起業するか?と言われたら、ほとんどの人はそんなことはしないだろう。

それと同じである。

 

なお、「上場をめざすぞ!」などと声高に叫ぶ経営者も稀にいるが、それは外部の出資者に強制されているか、もしくは真の誇大妄想者だ。

もっとも、後者は別の意味で、普通の人々とは一線を画す、厄介な人物なのだが。

 

「商売を」「自分で」「始める」

なお、誤解を招かないように言っておきたいのだが、私は上のような「手堅い経営者」を悪く言うつもりは全くない。

 

社長の立場になってみればわかるが、社員の給与を上げて、「いい人」を採用しても、ビジネスの根本はそう簡単には変わらないし、また、社長が自分の器を知っているのは、会社を崩壊させないために重要なことだ。

 

そんなことよりも、私が中小企業を見渡して得た最も重要な知見は

「これだけ平凡なビジネス、平凡な能力でも、経営者は儲かるのだから、自分の商売を持つべき」

だった。

 

実際、頭の良さだけでいえば、コンサルティング会社の同僚のほうが、はるかに優秀だったと思う。

でも、彼らは金持ちではなかった。

なぜなら、儲かる、儲からないは、究極的には能力やスキルではなく、「商売を」「自分で」「始める」かどうかで決まるからだ。

 

副業でもアフィリエイトでも何でもいい。

とにかく、繰り返すが、「金儲けは、やったもん勝ち」。

そして、いったん始めて見ると、意外に簡単なことがすぐにわかる。

 

「経営者の能力は高い」なんてのは、嘘だ。

能力的には、彼らは普通の人と、ほとんど変わらない。

 

違うのはただ一点。

「儲けようと思って、何かを始める」ということだけだ。

 

 

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(2021/9/15更新)

 

 

【著者プロフィール】

安達裕哉

元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。

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