前回書いた依存症の話が契機というわけではないのだが、つい最近自分も節酒をはじめる事にした。

 

具体的にいうと、毎晩の家での晩酌を完全にやめた。

晩酌をやめた理由は端的にいえば酔っ払うのに飽きたからなのだが、その前から”お酒との程よい付き合い方”については色々画策してはいた。

 

が、結論からいうと、僕のような意思薄弱な人間には節度を保った家飲みは無理だった。

その理由は自制心のメルトダウンが原因だった。

 

アルコールは飲めば飲むほど自制心が溶ける

かつて作家の佐藤優さんが「自宅にはアルコール類は一切置かない。飲みたくなったら外で飲む」と書かれていた。

それを初めて読んだ時は「外で飲んだら高くつくじゃん。家飲み、安いのに」ぐらいにしか思わなかったのだが、最近、これは結構金言だったなと思うようになってきた。

 

ここ5年ほど、僕は毎日自宅でワインを嗜むのが趣味だった。

最初はワインの味がわかりたいという一心のみで初めたこの趣味だったのだけど、非常に難しい問題が一つだけあった。

どうしても飲みすぎてしまうのである。

 

自分は一日あたり250ml程度(1/3本)のワインなら特に後日特に問題なく生活が過ごせるのだが、この250mlに毎日飲酒量を抑えるというのが本当に難しい。

ついどうしても、もうちょっと飲みたくなってしまい、キッチリ規定量で酒を止めるのが無理なのだ。

 

アルコールが怖いのは、飲み始めるまではあったはずの鉄の意思が酔いが進むにつれて、どんどんメルトダウンしていく部分にある。

最初の一ヶ月ぐらいは250mlに守れていたはずの飲酒も、どんどんナァナァになっていき、そのうち〆にハードリカーを煽ったり、規定量の倍以上を連日飲み続けたりしてしまうようになる。

 

幸いにして自分は飲酒で大きな痛手をやらかした事はまだ一度もない。

だが、さすがに残りの人生における平日夜の時間が全てアルコールによる酔いだけで終わるのは勿体ないな、と思うようになり、今回の晩酌廃止に至ったわけである。

 

ありがたいことに、ワインの味はこの5年間で十分すぎるほどよくわかったし、ここから先、家一人飲みで得られるものもそう多くはなさそうだと自分なりに納得したこともあって、スパッと家での飲酒は辞めることにした。

自分なりに納得した上での家飲みをやめたという事もあるからなのか、幸いにして現時点で酒を激しく渇望するような感情はせり上がってはこない。

 

アルコールをやめて最初の二日間ぐらいはちょっとダルい気持ちが抜けなかったが、その後はそういうものも特に感じず、それまでアルコールに耽っていた時間が目の前にボーンと現れたので、それを読書や睡眠時間等にあてて、別のモノを摂取する時間を楽しめている。

 

いろいろ頑張ってはみたのだけど、根が不真面目な自分には節酒して酒を家で程よく楽しむのはちょっと無理だった。

散々酔いを経験し飽きたという事もあるのだろうが、お酒をほどほどに楽しむ為にも、これから先、家では断酒する他なさそうである。

 

飲酒に際して、ルールを設けた

とはいえ、酒を完全にやめたわけではない。

ある限定された条件下では、酒を飲んでもいいようにはした。

 

以前、借金玉さんの発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術という本を読み、ドラッグを始めとする依存症のある薬物を楽しむのに、セッティングという概念があるというのを知った。

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セッティングとは簡単にいうと、薬物を使う前に使用時に取り巻く環境的状況を一定に整える技術である。

ある状況では薬物を使ってもいいが、それが整っていない状況では薬物を使わない。

薬物愛好家はこうすることで、日常生活が薬物に飲み込まれないような防波堤を作るのだという。

 

と、いうわけで自分も遅まきながらセッティングを設けることとした。

酔いを楽しむ事やアルコールの味自体を楽しむ事に飽きた今の自分にとっては、アルコールの効用は2つしか無い。

 

それは

①食事をより美味しくする。

②人との会話をより楽しくする。

この2つだけである。

 

この2つの目的に合致しない飲酒はしない。

そういうルールを自分の中に設け、酒以外の人生の残り時間をちょっと多めに作るようにする。

これが自分にとってのアルコールとの適切な距離感なのだと思う。

 

事ある毎に思い出す、夢の島の話

自分は幸いにして、人生をぶっ壊す前にアルコール依存の沼から抜けだすための第一歩を踏み出せたと思う。

もちろん、これからいろいろと右往左往するとは思うのだが、まあ何事も初めの第一歩を踏み出すのが肝心である。

 

出典は忘れてしまったのだが、僕がなにか事ある毎に思い出す夢の島のエピソードがある。

 

ある時、船が夢の島にたどり着いた。

ここで乗員は4つの行動パターンを示した。

 

1.怖くて夢の島に全く上陸しなかった人達

せっかく夢の島にたどり着けたのに、全く楽しんでいない。

いったい何のために航海をしたのだろうか……この人達はリスクがとれず、チャンスを全く活かせない人といえよう。

 

2.夢の島にちょっとだけ上陸して、すぐに船に帰ってきた人達

いちおう、夢の島を楽しんだは楽しんだが、その真髄を体験できたわけではない。

この人達は少しのリスクはとれるが、そこから先は踏み込めないちょっとビビりな人である。

 

3.夢の島の奥深くまで立ち入って、船が島を離れるギリギリになってやっとこさ帰ってこれた人達

この人達は夢の島のいいとこ取りができたかもしれないが、一歩間違ってたら元の世界には帰ってこれなかった人である。

 

4.夢の島に心を奪われて船に帰ってこなかった人達

彼らはリスクを取れる勇敢な人達だったかもしれないが、リスクをとりすぎて島に飲み込まれてしまった人でもある。

 

「上陸しない戦略」も悪くない

世の中はとても楽しい。

それこそ様々な夢の島に溢れている。

そして、夢中になって楽しんでいる時は忘れてしまうのだが、私達は誰もが帰らねばならない定点を持っている。

 

若い頃、僕は夢の島の寓話を聞いて

「3の寸前戦略が1番コスパいい。そうあり続けたいものだ」

と思っていた。

が、最近は1の上陸しない戦略も悪くないなと思うようになってきた。

 

人生は長い。

最初にたどり着いた夢の島が最初で最後というわけではないし、ショボイ夢の島に中途半端にコミットするよりも、次にやってくるビッグウェーブに乗る方が全然いいかもしれない。

チャンスを掴めなかったからといって焦る必要はないし、人が掴んだチャンスを羨んだり妬んだりする必要はない。

 

「お酒を飲まないだなんて、人生の3割は損している」

こういう類の事を言う人もいるかもしれない。

それはある意味では正しいのかもしれない。

が、それなら別の島に上陸すればいいだけの話ではないだろうか?

 

人生は残念ながら短い。

全てを手に入れるのは不可能だろう。

だから自分にとって、いちばん大切なものは何か。

それをきっちり認識し、過度に色々なものを欲しがらないのが大切なのだと思う。

 

そして本当に欲しい物を手に入れたら、他人がなんと言おうがスタコラサッサと勝ち逃げをキメる。

そんな感じで人生を上手に走り抜けたいものである。

 

 

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安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

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(2025/6/2更新)

 

 

 

【プロフィール】

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高須賀

都内で勤務医としてまったり生活中。

趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。

twitter:takasuka_toki ブログ→ 珈琲をゴクゴク呑むように

noteで食事に関するコラム執筆と人生相談もやってます→ https://note.mu/takasuka_toki

 

Photo by Jake Bradley on Unsplash